以下の英文は"Essential Words for the GRE", Barrons,NewYork, 2010, p4-5に掲載されているGeorge Santayana(1906)による英文です。


Barron’s Essential Words for the GRE/Philip Geer
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"To chop a stick, to catch a fly, to pile a heap of sand, is a satisfying action; for the sand stays for a while in its novel arrangement, proclaming to the surrounding level that we have made it our instrument, while the fly will never stir nor the stick grow together again in all eternity. If the impulse that has thus left its indelible mark on things is constant in our own bosom, the world will have been permanently improved and humanized by our action. Nature cannot but be more favorable to those ideas which have once found an efficacious champion.

Plastic impulses find in this way an immdiate sanction in the sense of victory and domination which they carry with them; it is so evident a proof of power in our selves to see things and animals bent out of their habitual form and obedient instead to our idea. But a far weightier sanction immdiately follows. Man depends on this for his experience, yet by automatic action he changes these very things so that it becomes possible that by his action he should promote his welfare. He may, of course, no less readily precipitate his ruin. The animal is more subject to vicissitudes than plant, which makes no effort to escape them or to give chase to what it feeds upon. The greater perils of action, however, are in animals covered partly by fertility, partly by adaptability, partly by success." -George Santayana(1906)


アメリカの哲学者ジョージ・サンタヤーナの書いた文章の抄出ですが、難解な印象は否めません。アメリカの学生が受験するGREテスト対策教材に掲載されている英文ですから、恐らく英語を母国語とする人間が読んでも随分骨の折れる英文ではないでしょうか。日本の高校生あたりが国立大二次試験の難解な評論文を読んで容易に内容を理解するのが困難である事情と同様でしょう。


授業で生徒に初見の単語と出会ってすぐに辞書に当たるようではダメですよ、と言っているので私も辞書を引かずに頑張ってみたのですが、う~ん、今一つ著者の言いたいことが掴めません。。。


以下、上掲の英文をザックリ読んだ後少し考えて見た本文の概要です。間違っている可能性が高いのでその場合ご教授ください。


一つ重要なキーワードとしてimpulseが挙げられると思います。「衝動」という訳が有名です。「衝動」というのは「衝動買い」などの用語からも分かる通り永続的・恒久的とは正反対の一時的なエネルギーの表出です。この英文は一時的対恒久的という二項対立を座標軸に据えて、人間と自然の違いを浮き彫りにしようと試みたテキストと考えて見ました。


後半に「栄枯盛衰」を表す単語が登場します。人間の営みは我々の歴史を振り返れば明らかな通り、隆盛と凋落の繰り返しです。衝動と欲望の共起が何らかのアクションを起こさしめるが、その矛先は権力や力を行使し得る対象へと向かいやすい。人間にとって最も身近な対象として自然が存在している。自然は不変であるが、その理由は抗う事の出来ぬうねりを受け入れ「悪あがき」をしないから。外的な事物を自らの支配下に収めようとする試みは、確かにそれが奏功した場合、大きな成功を産みだすが、そうした成功体験が人間衝動を正当化する根拠となることは往々にしてあり、それが故に正当化された支配欲や衝動は同時に必ずしも人間に都合がよく働くとは限らないものでもある。だからこそ「栄枯盛衰」ということが起こってくる。「自然淘汰」とは別言すれば「優勝劣敗(優れた者が勝利し劣等な者は敗れ去る)」である。「自然淘汰」は「自然」という言葉が含まれているからあたかも「自然の摂理」のような印象を与えるが、自然淘汰の原理を人間の自然を征服するための原理として見た時、そこに人間の「エゴイズム」が透けて見える。それはこの英文冒頭の一行にある御し難き砂粒で人が山を作り悦に入る姿(自然という繊細なものを支配して人間の思うように変容させ優越感に浸ることへのあてつけとしてのたとえだろうか)を想起した時よりはっきりと伝わってくる。


このように考えてくるとplastic impulseとは可塑性のある衝動と訳せるのだとすれば、その可塑性は人間のご都合主義を具現化する「チャンネル」として欲望に任せて如何様にも形を曲げられる衝動のことだろうか。


結局、この英文は人間の衝動というまことに当てにならぬ感情と自然の決して移ろわぬ姿を対比的なモチーフとして描きだしたものと思われる。が、「衝動」や「感情」という情動的なものではない部分も人間は持ち合わせている。それは言うまでもなく「理性」である。人間にまるで原罪のように宿る通俗的な衝動を自然との対比で批判的にあぶり出した上で、人間の持つもう一つの行動原理である「理性」に呼びかけて理性的な判断の下に行為しうる人間存在復興を期待する書き手のある意味人間に寄せる捨てきれぬ信頼をも匂わせる英文なのではないか。


と思いつくままに書いて見ましたが、一番恥ずかしいのは、鯱ばって堅苦しい文章を書いたくせに、スットンキョウなほどに「誤読」してること。。。。


まあ、わだぐすによくあるthe カンチガイ ってやつだったらそっと読みながし、「もっとがんばってね」とエールを送ってください!(/ω\)