西村賢太くんの『苦役列車』を読みました。
 
苦役列車/西村 賢太
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第144回芥川賞を受賞した表題作他1編。
 
表題作の「苦役列車」については以前、
芥川賞を受賞した折に雑誌で読んで感想を書きました。
 
以下、再掲。
 
 再掲ここから………………
 

中学を卒業して日雇い労働に身をやつし、

女に暴力を振るい、買淫し

借金(家賃等)を踏み倒すなどろくでもない人生を送り、

いつしか藤澤淸造なる昭和初期に野垂れ死にした

作家の歿後弟子を自認するようになり、

藤澤淸造全集の編集に身を捧げる日々。

 

言ってしまえば、西村賢太くんの書くものはどれも

これだけの言葉で説明できてしまうものばかりです。

 

受賞作となった「苦役列車」も、

 

中学を卒業した作者本人とおぼしき主人公北町貫多が、

家賃を踏み倒して転居し

港湾労働で日銭を稼ぐなかで知り合った

専門学校に通う日下部なる同い年の青年との

交流とその挫折を描いた作品

 
となっています。

 

これまでの作品と代わり映えしないと言えば

そのとおりですが、

芥川賞に十分値する作品であると思います。

 

ですが、これをもって代表作としてはいけません。

 

これまでにも何度も指摘してきましたが、

西村賢太くんにはぜひ長編を、

それも敬愛する藤澤淸造を書いてほしいと思います。

 

それこそが西村賢太くんの代表作であり、

21世紀を代表する日本文学たる作品になるものと

確信します。

 
 ………………再掲ここまで
 
そして、本書に収録されているもう一編の作品、
前年に発表された最も優れた短編小説に与えられる
川端康成文学賞をほしいほしいと願う
腰痛の中年作家を描いた「落ちぶれて袖に涙のふりかかる」、
これもなかなかの味わいです。
 
 
評価 ☆☆☆
 
 
これまでに読んだその他の西村賢太の本 
 

人もいない春  ☆☆

瘡瘢旅行  ☆☆☆

二度はゆけぬ町の地図  ☆☆☆

小銭をかぞえる  ☆☆☆

 
 
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