二度はゆけぬ町の地図/西村 賢太
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角川書店 2007年10月刊




21世紀の私小説作家、西村賢太くんの3冊目の作品集です。

ちなみに「二度はゆけぬ町の地図」は作品集のタイトルで、同題の作品はありません。

本書には「貧窶の沼」「春は青いバスに乗って」「潰走」「腋臭風呂」の4編が収められています。


本書には、めずらしく著者が歿後弟子を自認する藤澤淸造が出てきません。

と言うか、中学を出てから17,8才ころまで、つまり藤澤淸造を識る前の西村賢太くんが描かれています。


読後感。

しっかし、むちゃするなぁ兄ちゃん、そらあかんやろ。


家賃を払いません。

日雇いで稼いだ金は、その日のうちに使ってしまいます。

江戸っ子です。

酒を飲んで、女を買っても家賃は払いません。


なんとか、日払いではなく、週払い、そして月給取りへとステップアップしようとしますが、金があると使ってしまい、上手くいきません。


けんかして留置場に入れられます。

貴重な体験です。

こういう体験をした人はたくさんいらっしゃるのでしょうが、それをちゃんと文章化した、という意味において貴重な体験と成り得ています。

安部譲二です。


罰金10万円が課せられ、何とかそれを払います。


そして、家賃は払えません。

挙句追い出されます。

当然ですね。


その結果、二度と行けなくなった町がたくさん出来ました、というのが「貧窶の沼」「春は青いバスに乗って」「潰走」の概要です。


「腋臭風呂」だけはちょっと異なって、中身は腋臭の話なのですが、後半、二十年後の現在の場面で、「どうで死ぬ身の一踊り」のことでしょうか、処女創作集が刊行になり印税が云々、という記述がありました。

西村賢太くんは、この印税を藤澤淸造全集の刊行費に充てようとするのですが、結局生活費に使ってしまいます。

再版の印税も、文芸誌の原稿料も同様に酒色(腋臭女)に費やされてしまいます。


二十年たっても変わらないぞ西村賢太! 


て、そりゃダメだろう、進歩なさすぎるよぉ。

まぁ、そのダメなところが魅力なんだけどね。


でも、西村賢太くんもそろそろ代表作がほしいところだよね。




評価 ☆☆☆


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