ユダヤ人が親パレスチナ派デモに参加するなか、米国で最も結束してシオニスト国家を支持するのはキリスト教福音派である
反シオニストのユダヤ人が反対するガザでの大量虐殺
2023-24年米国下院議員には26人（5%）のユダヤ人議員がいる。
彼らは皆、足並みを揃えて歩いているわけではない。先月、数人のユダヤ人議員が、イスラエル国家に対する正当な批判を犯罪とする法案に反対票を投じ、団結を崩した。
しかし、反ユダヤ主義啓発法案は、有力なキリスト教原理主義者から全会一致で支持された。この法案は、極右キリスト教運動とつながりのある下院議長マイク・ジョンソンによって推進された。
イスラエルのためのキリスト教徒連合（CUFI）のジョン・ヘイギー氏と信仰と自由連合のラルフ・リード氏はこの法案を擁護した。
CUFIは、会員数1000万人を誇る米国最大のシオニスト組織である。テキサス州サンアントニオに拠点を置くCUFIは共和党にとって非常に重要な組織であり、フロリダ州知事のロン・デサンティス、元国連大使のニッキ・ヘイリー、元副大統領のマイク・ペンスらが2023年の年次総会に出席した。トランプ前大統領もCUFIの支援を求めている。
調査によると、アメリカの福音主義者の 51% が、ユダヤ人は神に選ばれた民であると信じている。彼らの信仰によれば、イスラエル国家の建国はイエス・キリストの再臨の前提条件であり、イスラエルはいかなる犠牲を払ってでも守らなければならない。
キリスト教シオニストの大多数は、米国南東部と中南部の「バイブル・ベルト」福音派教会に属している。彼らは、性別、教育、移民、中絶に関するリベラルな価値観に反対している。
昨年5月のナショナルラジオのポッドキャストで、宗教学者で公共宗教研究所所長のロバート・ジョーンズ氏は、白人キリスト教シオニストの人口統計がいかにしてイスラエル支持に傾いているかを説明した。
「白人福音派は人口の14％を占めています。それでもこの国には4,700万人以上がいます。もう一度言いますが、参考までに言うと、アメリカの人口のわずか2％がユダヤ人で、1％がイスラム教徒です。彼ら[白人福音派]はみな親イスラエル派の候補者に投票しています。彼らは本当に投票所に足を運び、圧倒的に一つの政党に集まっています…人口の14％に過ぎませんが、共和党支持層の約3分の1を占めています。」
アメリカ・イスラエル政治委員会（AIPAC）は、 下院議員の4分の3がイスラエルのガザに対する大量虐殺戦争を支持しているという驚くべきリストを掲載している。
2023年7月17日、バージニア州アーリントンのクリスタル・ゲートウェイ・マリオットで開催されたイスラエルのためのキリスト教徒連合（CUFI）サミット中の「イスラエルを称える夜」で、米国とイスラエルの国旗を掲げた福音派キリスト教徒の群衆が祈りを捧げている。（AP通信撮影/ジャクリーン・マーティン）
慈善活動、入植者への援助、ツアー
クリスチャニティー・トゥデイによると、
「聖地で活動する非営利団体への寄付は長年にわたり増加している。中には米国最大のキリスト教慈善団体に数えられる団体もある。」
2023年10月7日にイスラエルのガザ戦争が勃発したとき、「私たちが持つパートナーシップのおかげで、すぐに動員することができました」と国際キリスト教徒・ユダヤ人協会のヤエル・エクスタイン会長兼最高経営責任者は語った。
キリスト教シオニスト組織のハヨベルは、ヨルダン川西岸のユダヤ人入植地コミュニティの防衛装備に充てるため、5月8日時点で目標額2,900万ドルのうち約370万ドルを集めるイッタイ作戦を開始した。
元アーカンソー州知事のマイク・ハッカビーはイスラエルで福音主義者のツアーを率いている。彼はこう言う。
「私が使いたくない言葉がいくつかあります。ヨルダン川西岸地区などというものは存在しません。それはユダヤとサマリアです。入植地などというものは存在しません。そこはコミュニティであり、近隣であり、都市です。占領地などというものは存在しません。」
2021年7月1日、ヨルダン川西岸でアサルトライフルを持ったイスラエル人入植者 [MENAHEM KAHANA/AFP/Getty Images]イスラエル人入植者がヨルダン川西岸でパレスチナ人への攻撃を激化 – ミドル・イースト・モニター
しかし、親イスラエル運動は、以下を含む多くの方面からの強固な反対に直面している。
1) 民主党内のパレスチナ人連帯は、
アレクサンドリア・オカシオ＝コルテス下院議員（ニューヨーク州）、イルハン・オマル下院議員（ミネソタ州）、アヤンナ・プレスリー下院議員（マサチューセッツ州）、コリ・ブッシュ下院議員（ミズーリ州）、ラシダ・トレイブ下院議員（ミシガン州）ら「スクワッド」が主導している。
トレイブ下院議員は、パレスチナ系アメリカ人議員としては唯一の存在である。AIPAC は、親パレスチナ派の議員候補者を標的に何百万ドルも費やしてきた。
2) 米国のイスラエル支援に抗議するユダヤ人団体。
ユダヤ人の反シオニストとイスラエル批判者
AIPAC と強力な名誉毀損防止同盟 (ADL) は、イスラエルに対するほぼ全会一致のユダヤ人の支持を代表していると主張している。しかし、ADL やその他の団体には、ユダヤ人の意見が実際どのようなものであるかを示す証拠がない。
ユダヤ人の親イスラエル団体は民主的な投票によって運営されているわけではない。また、ユダヤ人がイスラエルを無条件に支持していると主張する、いわゆる独立系世論調査は、誤解を招くものだ。彼らは決して「あなたは反シオニストですか？」や「イスラエルは大量虐殺を行っていますか？」と直接尋ねない。彼らは「あなたはイスラエルに親近感を感じますか？」といった質問をする。もしあなたの親戚がイスラエルに住んでいるなら、あなたは「はい」と答えるかもしれない。
ユダヤ人の反シオニズムには長い歴史がある。今日、AIPACなどに対抗して、何千人ものユダヤ人、特に若者が、かつてないほど大勢で街頭に出てイスラエルに反対している。
国際ユダヤ人反シオニストネットワークの憲章には、「私たちは、パレスチナの人々と土地の解放が不可欠な要素である人類解放のための闘争に妥協なく取り組んでいるユダヤ人の国際ネットワークです。
私たちの使命は、イスラエルのアパルトヘイトの解体、パレスチナ難民の帰還、そして歴史的パレスチナのイスラエル植民地化の終結です。」と記されています。国際ユダヤ人反シオニストネットワークの憲章 – IJAN
反シオニストのユダヤ人運動の目標は、イスラエルを解体し、歴史的なパレスチナの土地を世界中のパレスチナ人に返還することです。
その目的は、パレスチナの土地に「ユダヤ人の国家」を建設するというイギリスの支持をうけた1917年のバルフォア宣言以前から数世紀にわたって存在していた、平和的なイスラムとユダヤの関係を再活性化することです。
それはシオニズムとユダヤ教の融合を否定する目標です。
2023年10月28日、数百人のユダヤ人がニューヨークのグランド・セントラル駅を占拠し、ガザでの停戦を要求した。
「我々は、自らの痛みやトラウマを、他民族への攻撃を正当化するために利用されることを拒否する」と、ユダヤ人平和の声の会（JVP）のジェイ・セイパー氏は述べた。
「我々は、我々の名においてではないと言いたいためにここにいる」。
JVPはウェブサイトで、「パレスチナの自由を求める運動における我々の役割は、イスラエルのアパルトヘイトとシオニズムに対するユダヤ人の支援の経済的、文化的、政治的計算を根本的に変え、米国とイスラエルの同盟を揺るがすことである」と述べている。
ユダヤ人擁護団体である名誉毀損防止連盟は、JVP を「イスラエルのボイコットとシオニズムの根絶を主張する過激な反イスラエル、反シオニスト活動家グループ」と非難している。ガザにおけるイスラエルの行動に対する抗議を主導しているパレスチナ人とユダヤ人が率いるグループとは誰なのか? | PBS NewsHour コロンビア大学はデトロイトの JVP を停止した。
ユダヤ教のネトゥレイ・カルタ（「都市の守護者」）はパレスチナ人を支援してきた長い歴史があり、すべてのパレスチナ難民が「彼らの正当な土地」に戻るよう求めている。写真は、超正統派の反シオニスト組織が、パレスチナ人および国際活動家とともに、ガザ地区とイスラエルの間のエレツ検問所近くのベイト・ハヌーンで、ガザ封鎖の終了を求めてデモを行っている様子。2009年12月31日。（AP通信撮影/カリル・ハムラ）
英国の主流メディアは、10月7日以降にイスラエルに対する反ジェノサイド抗議が始まって以来、ロンドンは「ユダヤ人の立ち入り禁止区域」になっ たと虚偽の主張をし、反ユダヤ主義への恐怖を煽っている。ユダヤ人ブロックはパレスチナ人を支援するために行進を続けている。この写真は2024年3月24日に撮影された。
名誉毀損防止連盟は、 「シオニズムを否定する」ことや「イスラエルを歪曲したり非合法化する」ことは反ユダヤ主義に該当すると主張している。ADL のような組織は、シオニズムやイスラエルに批判的なユダヤ人の難問を、「自己嫌悪」や「非ユダヤ人」などの言葉を使って、特定の歪んだ論理で解決している。
2000年から2007年にかけて、SHIT（Self Hating Israel Threatening）には、イスラエルに批判的な著作を持つとみなされた7000人以上のユダヤ人学者（筆者を含む）とその地理的位置がリストアップされた。右翼のカハニストグループであるMasada2000によって作成されたこのリストは、その名前が示すように暗殺リストだった。一部の学者は殺害の脅迫を受けた。
昨年12月、マサチューセッツ工科大学の学生が米国議会の公聴会で次のように証言した。「MITのイスラエルを支持するユダヤ人たちは、私を反ユダヤ主義者、ハマス、自己嫌悪のユダヤ人と呼び、私は『本当のユダヤ人ではない』、『あなたがユダヤ人として生まれたのは神の間違いだ』と言いました。最後の発言は、私の面と向かって直接言われました。これらのレッテルやコメントは、言葉のいかなる定義においても反ユダヤ主義です。」
イスラエルを公然と批判したために標的となった著名なユダヤ人には以下の人々が含まれる。
· グレイゾーンのマックス・ブルーメンソール氏とアーロン・メイト氏は、ロシアとのつながりの疑いでワシントン・ポスト紙に中傷された。
· ホロコースト生存者の息子であり、優れた研究者（『ホロコースト産業』）であるノーマン・フィンケルシュタイン教授が大学の職から追放された。
· 歴史家のイラン・パペ氏は最近、 米国の空港で国境警備隊に拘束され、パレスチナ支持デモでよく使われたスローガンについて尋問を受けた。
· 祖父がナチスに殺害されたジャーナリスト、ハンナ・ゲッセンは、ガザに関するエッセイを書いたことで権威ある文学賞を取り消された。
イスラエルの警察官は、2024年4月26日、ガザへの援助物資の配送を阻止するため、エレツ検問所へ向かう行進中に「停戦を求めるラビ」グループのメンバーを逮捕した。（ジャック・ゲズ/AFP）エルサレム・ポスト紙は、ガザへの援助物資の配送がハマスとパレスチナのテロリストを強化していると報じた。
2021年7月、労働党の本部前でユダヤ人労働運動の支持者が抗議活動を行った。1920年から労働党に所属しているはるかに規模の大きいユダヤ人労働運動は、その見解を「極端な異端」と呼んでいる。英国ユダヤ人代議員会議のマリー・ファン・デル・ジール会長は、ユダヤ人労働運動を「自分たちのみを代表しているだけの、忌まわしい見解を持つ小さな組織」と非難した。ジョン・マクドネル：ユダヤ人団体に対する労働党の扱いは残酷 - BBCニュース
驚くべきことに、イスラエルに批判的な労働党のユダヤ人は、非ユダヤ人党員に比べて、労働党から反ユダヤ主義の容疑で訴えられる可能性がほぼ5倍高い。労働党は、反ユダヤ主義が蔓延していると描写する継続的なキャンペーンの標的となっており、その頂点に達したのが党首ジェレミー・コービンの追放である。
西側メディアは無視しているものの、反シオニズムは反ユダヤ主義ではないというメッセージは、ユダヤ人コミュニティだけでなくイスラム教徒の間でも明確に伝わっている。
結論
戦線は既に構築されている。一方には、米国のキリスト教右派とイスラエルの右翼ナショナリズムとその同盟者である米国のネオコンがいる。もう一方には、イスラエルへの米国の武器輸出停止を要求する進歩的な白人、黒人、アラブ系、ヒスパニック系、ユダヤ系アメリカ人がいる。戦場は、2024年11月の選挙に向けて展開される米国大統領選挙と議会選挙である。
危機に瀕しているのは、ガザ地区で爆撃、飢餓、家を失う危機に瀕しているパレスチナ人170万人の命だ。パレスチナ・クロニクル紙の最新統計によると、猛攻撃が始まって以来、37,232人が死亡、85,037人が負傷、11,000人が行方不明となっている。