おはようございます、沙久良です桜

 

今日から2日間米子・安来へと出張しております。メールへの返信等は10・11日は休みを取りますので、12日に行いますメール お待ちくださいませ。

 

今日も呪詛解きネタの続きです神社 

 

 

 

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ゆっくりと上っていく本宮への道は静かだった。いつもの事ながら、神の世界へと続く道は音がない。正確には、自然界の音がない。遠くで岡山空港に離発着すると思われる飛行機の音は轟轟とするが、どこかくぐもって聴こえる。

 

(雨もまだ降っていないし、冬眠するような時期でもないし、多少なりとも鳥の囀る声や虫の音、葉がこすれ合う風の音でもすればいいのにね。)

 

登る橘さんが時折話しかけるので、それに相槌しながら進むが、彼女は音がしていない事に気が付いていないようだった。

 

(薬の副作用で耳も聞こえづらくなってるって言ってたしね、気付かなくて良かったのか。)

 

もし気付いても口にしてはいけない。すれば自分が人の世界ではない所に居ると宣言するのと同じだから。終わるまでは言ってはいけない。

 

 

立ち止まり、現在地を確認する。聴こえる飛行機の音は、10キロ程度先のようだ飛行機 重なり合う山々を観て、ずいぶん山の中なのだなと実感した。田舎育ちなので、今一つそこが分かっていなかった。

 

(今でさえ山の中だと思うのだから、神代なんてとんでもなく秘境だったんじゃないのかしら、ここ。すごい場所まで人は向かい、そして御神体を納め祀ったのねぇ…。)

 

そして、神代の過去世の私も逃げ隠れて暮らしていたから、こんな山の中にいたのかもしれない。全く実感はないが。

 

(あれだな、辛すぎる記憶って過去世も思い出せないんだよ。記憶に分厚い蓋がしてあるというか、霞がかかっているとでもいうのか。微かにしか覚えてないか、本当に覚えてないのかもしれないけどね。それに、山の中はどこも一緒に思えるし、何より、連れられて逃げていたから幼い自分はどこを進んだかなんて思い出せないんだろうなぁ…。)

 

それも今は関係ないからいっかと思いつつ、ふと遠い目で山々を視ている山水は何かを思い出していたのかもしれない。

 

 

もっと悪路だと思っていたが、意外と登りやすかった山道にちょっと拍子抜けもしたが、無事に本宮の鳥居に到着した神社  一歩進むとグワンと頭が揺れて、間から神の世界へと入ったのを感じる。

 

「あれ?空気かわりました?」

 

「そうだね、変わったね。」

 

橘さんも感じたらしく、そう振り返って尋ねた。神の世界へと入ったのなら、別に振り返ってもらっても構わない。

 

 

「迫龍の段段って言うんだね、ここ。登ったら振り返ってみよう。」

 

「そうしましょう!」

 

 

龍の背を歩くようにスイスイと登り、振り返る。

 

 

「ほんとだ、龍がうねっているみたいですね。」

 

「白蛇の通った跡にも見えるねぇ。」

 

龍も蛇もうねって長いので、どちらにも見えてしまう龍ヘビ

 

 

到着した本宮もまた、音もなく静かだった。

 

 

社の向こうに大きな磐座がある。

 

「立派ね。」

 

「そうですね、すごく力強い。」

 

湧き上がる御神氣も静かで、強力に周囲に放たれるというより、じんわり染み渡るように広がっていた。

 

 

嘗ての境内図があったのでそれを2人で見る。

 

「ここに拝殿があって、ここに幣殿。ああ、神楽殿まであったんだ、すごい!」

 

目を輝かせる橘さん、その身体から薄っすらと蜃気楼が立ち上るように黄色から橙色の炎が揺れていたメラメラ

 

(剣を迎え入れる準備はもう出来ているのか。では、その剣はどこだろう?)

 

 

磐座は変わらず穏やかで静かなままだし、他に強い御神氣も感じない。

 

(あれ?ここじゃなかったのかしら?)

 

私、間違えたのかしらと思いながらもそれを顔に出さないようにしつつ、炎のようなオーラの事も伝えないまま、橘さんに参拝を促した。

 

「はい、参拝させていただきます。」

 

しずしずと本殿に近づき二礼二拍手、丁寧に参拝する姿はとても美しかった。

 

(纏う氣がやはり違う。強制潔斎ではあったけれど、こんなにも清らかな氣に人は成れるんだ…。)

 

元々潔斎しなくてもそこそこ出来てしまうので、必要があればすればいいし、なければしなくてもいいと思っていたが、こうして橘さんを視ると、潔斎の大事さが解る。

 

 

(あれだな、肉体が潔斎で清められると魂が肉体から離れやすいんだ。そうすると神々が降りやすい。そして清められているから、神々が降りたとしても、その清らかすぎる光に耐えれるんだ。そうじゃないと耐えれず人の魂や精神が壊れてしまう。潔斎はある意味死者に近づくからこそ、人でもなく神でもない間(はざま)の存在になるには必要なのか…。)

 

 

そんな私も昔は強制潔斎させられたし、食べれない時もある。後ろの守護者が勝手に調整するのでまた始まったなくらいにしか思わないが、それも格段に減った。慣れてしまえば、器が出来てしまえば何を食べてもいいのだろう。敢えて人の世界に留まるのに、上がり過ぎた氣を下げるのに身体に悪い飲食も摂る時もある。高い氣が人に全て良いかといえば、そうでもないのだ。

 

 

そんな事を考えながら橘さんに倣って参拝をし、目を閉じてじっとしている彼女を眺めていたが、ふと上空に何かが来た気がした。

 

(…え?)

 

顔を上げる。そこは曇り空が広がっているだけだが、その雲の遥か上に何かがある。

 

(来る……。)

 

 

 

そう思った瞬間、雲の隙間から眩い光が瞬いた。

瞬いたと思った瞬間、それは彗星のように尾を棚引かせて降りて来る。

 

 

(剣…!)

 

 

近づく光をよく視れば、それは菖蒲の葉のような剣だった。

耳には聴こえない、けれど脳には直接聴こえる高音を響かせながら勢いよく天降る。

 

 

(まさか…っ!)

 

 

ハッとして橘さんを視ると、炎のオーラは女性の腕のようにしなやかに広がり、剣を迎え入れる形に変化していた。まるで、両手を広げて愛しい者を迎え入れる様に。

 

スコン……ッと、剣が一点のぶれもなく橘さんの頭頂部から体内へと入る。

一瞬、橘さんの身体が揺れた。

 

 

 

『ああ、一つに成れた……。』

 

 

 

男女の声でそう吐息と共に漏れた言葉を耳にした瞬間、パンっと空間が広がって弾けた。

 

 

 

続く~神社

 

 

 

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