おはようございます、沙久良です
6月29日より5日間休みを取っておりました。メールへの返信等は今日より行います もう少しお待ちくださいませ。
今日も鹿の王の末裔の続きです 終わりまで後少し!なので、もうしばらくネタとしてまとめた話にお付き合いただけると嬉しいです
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拝殿の前まで進む
祀られた神々の御名を読んだ後、鈴紐を振って高らかな音を響かせた。
お賽銭を入れようとした時、箱の前に勾玉が置いてあったのに気付く。誰かが供えたのだろうか?それとも誰かが落としたものをここに、見つけた誰かが置いたのだろうか?分からないのでそのまま置いておく。
2人並んで二礼二拍一礼、心の中で各々ここへと参拝に来た目的、そして謝罪する事を伝えた。
風が吹く。
下から上に向けて。
何かが大きく膨らんで羽ばたく音がするので、本殿へと向かう
そこには雌雄一体の鸞が待っていた
「綺麗…。」
そう思わず呟く。そんな私に何かを促すように首を動かし、じっと視てくる鸞
(ああ、そうだった、あの羽根を渡せばいいのね。)
胸の中央に左手を添えてぐっと力を籠めると、内に在る羽根がふわりと出て来た。授かった時はカラスの羽根程度の大きさだったが、水の御神氣を吸い込んで大きく成ったのか、クジャクの羽根位になっていた。
(これをお渡しします。鷲峯神社の大己貴神より授かりました。そして羽根に吸い込まれたのは、因幡の瀬織津姫神の水の御神氣。麒麟は前日に宇部神社の双履石より天に昇られました。どうぞお受け取りください。)
そう伝えて恭しく両手に乗せて差し出すと、クルルと喉を鳴らすような声が聴こえ、雌雄の鸞たちがお互いの顔を視合せ、目と目で会話をしている。しばらく瞬きしたり、首を傾げたりしながらお互いに意思の疎通をし、こちらを真っすぐ視つめると、片方の頭が伸びて来てその嘴で羽根を受け取った。
(どうするのだろう…?)
じっと視ていると、羽根を銜(くわ)えていない鸞が顔を近づけ確認する。そして頷く様に首を下げると、その羽根を首を後ろに向けて尾の辺りに差し込んだ。
眩い光が広がる
差し込んだ羽根はさらに大きく成って、五色の輝きになった
そして高らかに響き渡る鈴の音のような鳴き声。
空気を震わせ、一気に空間を浄化し、次元を高く変えていく……。
『和の羽根をありがとう。あの時、和の羽根が燃えてしまって天上へと還れなくなってしまった。再び時を経て羽根は蘇り、還れる。やっと、やっとだ…。』
羽根を差し込んだ鸞は一体の和に首を擦り付ける。和もまた嬉しそうに鸞に首を擦り付けた。
(ああそうか、鸞は雌雄一体で雄を鸞、雌を和と呼ぶんだ。だから雌の和の神和ぎは巫なのか。それで一緒に祀られ、鹿野の地を護っていた麒麟を祀る血脈の女性が呪詛を解く者なんだ。
麒麟の巫、それは各地にいる。その各地にいる血を血は引き寄せ、さらに濃い血となり、その能力を高める。
麒麟を祀り、麒麟に護られた亀井茲矩は、まるで鹿の王ね。麒麟も鹿の王の様だと思ったけど、それよりもそちらの方がぴったりなのかも。亀井の血筋は、麒麟の巫と成れる女性を娶っていたのかもしれない。いつか麒麟と鸞を還す為に…。)
それもまた私の想像でしかないけど、そこは解決すれば問題ではないので置いておこう。
鸞と和がこちらを視る
『我らが飛び去った後、嵐が来る。瀬織津姫の力も放たれた。大きな水が天より降る。
嘗て戦火に焼け、まだ傷癒えぬ獣たちの魂がある、精霊の魂がある。それらを全て癒し、再び天へと昇る為、浄化の雨が降る。それは人にとっては大きな災いになるやもしれぬ。けれど、この地を我らは護ろう。麒麟と共にこの地の民も護ろう。大きな天災を、小事にしよう。
大己貴神の巫よ、嵐来る前に去るとよい。そして大己貴神に礼を伝えてほしい。いつかその礼を返すと……。』
バサッと羽ばたく音がし、鸞と和が飛び立つ
その時雨が降り、一瞬だけ虹が観えた
そして再び雲の切れ間から太陽の光が境内に差し込み、境内は元の人の世界に戻った
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「…終わった、多分。」
1人呟いて本殿を左回りで歩いた
(嵐が来るって事は、台風は進路を日本海側に向けて変えるのか。だとすると、鳥取県東部に直撃の可能性大なのかしら?)
後で天気図を確認しようと思いながら、ぽにょちゃんに終わった事を伝えた。
振り返れば神社の上には縹色の空が見える。雨は今は降りそうもない。
(台風は、被害が大きくならない事を祈るしかないか。人の力でどうにか出来るものでもないしね。早めの備え、早めの避難、過ぎ去るのを待つしかないし。)
そう考えながら進んだ先、私には台風よりも遥かに大きい現実問題があった。
「階段…、高い!怖いっ」
ひぃと慄く情けない私
「大丈夫だよゆうほりん、ゆっくり下りればいいんだよ!」
「そうね、そうする…。先に降りてて!」
ぽにょちゃんに先に下りてもらった後、おっかなびっくりへっぴり腰で後に続いた。
(ムッ、ムリ―!高いのムリ―!山水!山水、inでお願い!!)
後ろの守護者・山水に助けを求めて代わりに身体を動かして下りてもらう お陰で早くぽにょちゃんに追いついた。
「あれ、意外と早いね。」
「う、うん、頑張ったから!」
頑張ったのは山水で私ではない そして、高所恐怖症ではない山水にとって、この下りはなんてこともないので、頑張ってもいない
そんな私を山水は横で呆れたように視ていた。
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再び歩く坂道の参道からは、雨雲の晴れた鷲峰山が観えた。参道にはまたクロアゲハが舞っている。
「アオスジアゲハも飛んできた。」
駐車場付近の茂みには、アオスジアゲハが2羽仲良く飛んでいる。
「鸞はあの鷲峰山に戻ったのかな?」
「うん、そこを経由してさらに天へと昇ったよ。」
「そっか、それは良かった。」
足取りも軽く車へと向かう
「台風、こっちへ来るって鸞が言ってた。」
「そっか、被害が出ないといいね。」
「うん、そうならない様に次の神社では参拝してお願いしておこうと思う。」
台風なら龍神が祀られた神社がいいだろう
「お腹も空いてきたな。西へ向かいながら何か適当に食べようか。」
「うん、そうしよう。」
車へ乗り込み、鹿野町中心部へ向けて走る
(ああそうだ、大己貴神へとお礼も伝えないとなんだわ。)
鷲峯神社横を通過しながらそれを思い出したが、寄らず、別の神社でお礼を伝える事にした。
(大己貴神なら、やっぱりあの神社だよね。だから西へこのまま向かおう。)
鹿野の城下町に車内からお別れ告げ、山陰道に乗って西へと向かう
(さて、龍神の神社はどこがいいかな?このまま行くとあの神社かな。)
1つ頭に浮かぶ神社がある 途中で山陰道を下りようと決め、さらに西へと進んだ
続く~
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