さて、告知ばかりだとつまらんので、今朝見た夢の話をネタとしてアップ
ちょっとホラーですので、ホラーが苦手な方はスルーしてくださいね~
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バンッ!
ベットの上に座り、背をベットヘッドに着けて小説を読んでいると、ベッドヘッドが接する壁の右側で何かがぶつかる激しい音がした
「ん?」
小説から顔を上げ見たが、何もない。視ても何もない。
ベットから立ちあがり、壁をそっと撫でてみるが特に何も感じられない。
「早く寝ろってことか?」
時計を見ると午前2時前。小説に夢中になってあっという間に時間が経ったらしい
誕生日旅行2日目朝に喉が痛み、それから3週間近くも風邪をひいたままだ それでも一時期の激しい咳も高熱もなく、軽い鼻水程度ではあったが、この日の前日の夜は軽くぶり返し、寝る前には激しく咳き込んでいた
念の為、浄化に菊水純米大吟醸を御猪口一杯呑み、小説をベット横の床に置いて電気を消し、布団にくるまった
(一人はやっぱり寒いな…。)
O氏は忙しい時期に入り、夜に帰って来ない日もあった 今夜もまた帰れないのだろう。これが神在祭が終わる12月上旬までは続く。
その間は山水や清流が添い寝をすることもあるが、基本は一人寝で、部屋の外で待機していることが多かった
(ま、山水も清流くんも特に何も言わないし、さっきのバンッて音はただの家鳴りなんだろうなぁ…。)
そんなことを思っている内に温まって、スーッと眠りに落ちた
幾度か夢を見て、軽く目覚める
目覚めると先ほどまで何の夢を見ていたかも忘れるのだが、妙な胸騒ぎがした。
胸騒ぎがしたから目が冴えるのかと思ったが、覚めてしばらくすると気を失うように意識が途切れる 無理やり眠りに引きずり込まれているようだが、それは寝た方がいいという山水や清流の判断からだろうと特に気にもしなかった。
気を失うように眠って見た夢は、深い霧の中を手探りで歩き、たどり着いたのは今まで見たことのない風景が広がっていた
(…ここは、どこ?)
周囲は厚い霧が立ち込めており、かろうじて進む先に大きくて立派な時代を経た白木造りの門と、その向こうに川の流れる音、川の向こうには大きく聳え立つ岩山が連なっているのが見えた
足元は川原のような砂利道。そんな砂利道でもやっぱり私は黒のハイヒールを履いている 服装は白のカシュクールブラウスにベージュのひざ下タイトスカート、そしてトレンチコートを前を止めずに羽織っていた
(夢でも秘書ファッションって…。)
夢の中でもO氏の好みなんかいっと自分で自分にツッコんで苦笑し、トレンチコートのポケットに両手を突っ込んで門に向かって歩いた
近づくと、その門は思っている以上に大きかった。
例えるなら、鹿島神宮や三島大社の神門の大きさで、様式は神社というよりは寺院に近い
でも、少し日本の寺院とは違った造りで、細やかな獏や龍、白虎や鳳凰、玄武と言った想像上の聖獣が彫刻されており、海松茶(みるちゃ)や千歳茶(せんさいちゃ)に染まった彫刻に、どれほど昔のものなんだろうかと門に触れながら思いを馳せた。門の入り口も一つではなく四つあり、それぞれが均等な大きさで、大勢の人が詣でても混むことなくスムーズに通り抜けられそうだなと思いながら、入り口をジグザグに入ったり出たりしながら門の中へと入って岩山を見上げた
風が吹き、霧が少しだけ晴れた
門は川に沿うような高台の道にあり、川の大きさは江の川くらいといったところ 深い藍媚茶(あいこびちゃ)の水は、ゆったりと音もなく流れており、かなりの深さがあるのだろう。
その川に急傾斜で流れ落ちるように岩壁があり、所々苔むすその様子は、道返大神の様だなと思った
途端、その岩壁がブォーンブォーンと低い音を立てて大きくなったり縮んだりした気がした。
よくよく目を凝らして見ると、またブォーンブォーンと低い音を立てて大きくなったり縮んだ。
音だけでなく、その瞬間には音波のような振動も伝わり、頭がクラクラとする まるで、御神氣酔いをしたような感じで、少し身体が熱って、その場で数歩たたらを踏んだ。
(なんか、この場にいちゃいけない気がする…。)
その低い音が、威嚇というよりも早く戻れという警告音のように感じ、足早に門をくぐって出た。
出ると、霧は先ほどよりもさらに晴れ、門の向かい側には詰め合い所のような建物があり、料金所もある。
(ああ、有料なのか。知らずに入って悪かったな。)
料金所に向かって歩き、ちょっと離れて料金を見ると、各国の文字で入場料が書いてある。
(日本円だと1800円ね。って、私、お金持ってないわ。残念。)
もっと先まで行ってみたい好奇心もあったが、お金もないのに入るのはためらう 先ほどは濃霧で気づかずに入ってしまったけど。
料金所にはおばちゃんパーマをかけたどこにでも居そうな50代後半から60代後半の女性が、黒のベストに白いブラウスと事務員みたいなスタイルで3人おり、私には気にも留めず世間話をしていた。
私が先ほど通って来た砂利道の方からは、大勢の老若男女がガイドと思われるこれまたどこにでも居そうな初老の黒いスーツを着た男性に案内されて門の前へと行き、門を見上げている。それ以外にも、数人のグループや、一人でキョロキョロしながら歩いてくる人もいた。
(有名な観光名所なのかしら?)
ぽや~っと門を見上げる人たちを見ていると、料金所の女性たちの話し声が聞こえた。
「あの岩山、鬼が浮かび上がるって知ってるかね?」
「ああ、知ってる知ってる。でも、ここからだといつも濃霧で見えんけどね。」
「鬼かぁ、怖いねぇ。取って喰われんといいねぇ。」
「悪い事してなきゃ何も起こらんでしょう。」
「私らはただ、この門を通って川を渡る人から料金を受け取るだけ。料金を払わないで門をくぐると鬼が岩から浮かび上がって喰われるんだから、私らには関係ない。」
ニヤリと意地悪く笑い合い、またたわいのない世間話に戻った。
(え?鬼が浮かび上がる?川を渡るのに料金がいる…?)
びっくりして岩壁を見ると、そこには先ほどまでは浮かび上がっていなかった牛頭と馬頭が浮かび上がり、牙をむき出して口を何度も開けたり閉めたりしている
(って、浮かび上がってんじゃん!おばちゃんたちなんであれが見えんの!?)
びっくり顔のまま料金所の女性たちを見たが、まったく気づいている様子はない
そしてまた岩壁を見ると、今度は岩山の頂上が赤く盛り上がり、金色の眼の狂暴そうな大きな龍になった
(龍!龍まで浮かび上がるんかい!でもって、それでもおばちゃんたちは気づかんのか~!どんだけ話に夢中なんじゃ、おばちゃんたち!)
龍と女性たちを何度も見比べたが、そんな不審な行動をする私を、門の前へと次々と集まる群衆も気にはしていない
…いや、見えていないのかもしれない。
(もしかして、私はまた来てはいけない場所に来ちゃったなんじゃないだろうか?この門はあの世の入り口で、川は三途の川…。
ってことは、料金所のおばちゃんたちは三途の川の渡し賃を取る奪衣婆(だつえば)!?)
そうなると、ガイドの初老の男性は、奪衣婆と一緒にいる懸衣翁(けんえおう)なのかもしれない。
(なんでそんなに近代化してんのよ、三途の川~!)
そう思った瞬間、頬に何か柔らかいものが触れて目が覚めた
「にゃっ。」
目を開けると、空太郎がベットに手をかけて立ち上がり、私の顔を右足で軽く叩いている
「…ああ、外に出たいのね。待ってね。」
のっそりと起き上がり、カーテンを開けると、東の空が赤く染まっていた
(もう夜明けか…。)
窓を開けると、ピョンっと窓辺に飛び上がり、スルリと器用に身体をくねらせて、屋根に設置された室外機に飛び乗る空太郎を見送った
(なんか、またO氏に怒られそうな場所にうっかり言っちゃってたけど…ま、いっか。寝よう。)
これから朝日が昇るのだ、そんな怒られそうな場所へ行くような夢も見ないだろうと布団にくるまった
だが、本当に怖い夢は、この美しく赤い朝焼けの中で見ることとなったのだ………
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続く
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