注意:櫻葉小説です。



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「雅紀……
ちょっと話がある。」

「……なに?」

「お前……
朝早くから夜遅くまで……何処へ行ってるんだよ?……もしかしてやっぱり俺と距離を取るつもりで……」

「違うよ。
父さんとこれまで話してこなかったぶん、これからはたくさん関わろうと思ってるよ。」

「だったらどうして……」

「ごめん。
だけど今は……どうしても行かなきゃいけないところがあって。」

「どういうことだよ」

「父さん。
………俺にとっての大事な人の事、ちゃんと話すから聞いてほしい。」






俺は
翔の事を父にゆっくり時間をかけて話した。

男同士で反対されるだろう事も……
今の状況が他の人から見てどう写るかって事も……

そういうリスクも考えたうえで……
それでもちゃんと伝えたかった。

どれだけ俺にとって大事な人なのかを。







「じゃあ……
お前が悪いことから手を引いたのも……
俺と話し合いをしてくれたのも……
ぜんぶ翔って子のおかげだ……と?」


「そう。」






父さんは
しばらく黙ってた。





そして……
そのあと絞り出すようにこう言った。







「……だからって……
カフェの前で待つことに意味なんてあるのか…?」




頭ごなしに反対されなかった事に正直驚いた。
きっとそれは父なりの
俺に対しての、『歩み寄り』としての気遣いなんだと思う。

ありがたいな、と感じた。
それもこれも翔のおかげ。

だけど
父さんを迷わせてる事もわかってる。

それでも
自分の意見を貫き通す俺を………今は許してほしい。

家族に迷惑をかけてでも………それでも譲れない翔への想いが、俺にはあるから。

今はどうしても………
自由にさせてほしいんだ。





「父さん………」

「なんだ?」

「カフェの前で待つことに意味があるのか?って聞いたよね?」

「ああ」

「意味のない事をしちゃ、だめなの?」





「………雅紀」





「意味がないと、しちゃダメ?」





「………」





「今できることはそれしかない。
意味があるとかないとか考えても仕方ない。だってそれしか方法ないんだから。
俺は………翔を信じてる。
そして………翔への想いはこの先もずっと変わらない。」



「雅紀……」



「カフェの外で待つ事を取り上げられたら……俺はたぶん……
心が壊れると思う。
……そんな事を言葉にすると脅してるみたいで卑怯だと言われるかもだけど……
脅しでもなんでもなく……それが今の俺の真実なんだ。」



「脅しなんて思わねぇよ。雅紀の表情でわかる。これでも父親だからな。」


「うん…」


「意味がないとしちゃダメなのか、なんて……聞かれるとは思ってなかったよ。」


「…………」


「子どもに教わるってホントだな…」



「迷惑も心配も掛けてごめん。」





そういうと父さんは
俺の頭をポンポンとした。





「迷惑も心配もかけるのが
………子どもの仕事だ。」





それだけ言うと他の部屋に去っていった。

あんなに厳しかった父さんは……
まるで今後は母親の役割も自分がしなきゃと思っているように優しくなってた。






それからは

時々………

父さんは
カフェの外で待つ俺のところに仕事帰りにやってきて……

コンビニおにぎりや缶コーヒーを差し入れしてくれるようになった。