〜 side 智 〜




「懐かしいなぁ」


「ふふ。変わってない」





あの時と同じジュースを買った。




ガゴン…





ごくごく…


ああ、この味。





そう思うと笑みがこぼれた。

笑みがこぼれた後、すぐ涙がつたった。






おいらにとって一生の思い出のこの場所。

翔くんがおいらの命を救ってくれたこの場所。

もうこの場所に翔くんと来ることはきっと2度とない。

サッカーが出来なくなった翔くんをヴェルディユースのグランド近くのこの場所に来させるのは酷だから。




「1人でもいい。1人でまた来ればいい。
ここがおいらにとって大切な場所には変わりないんだから」



翔くんが座ったほうのベンチを手で撫でる。

翔くんの優しい声が
聞こえてくるような気がした。




「そういえばあの日夢中で描いた絵……翔くんに見せそびれちゃったな。」



サッカーしてる翔くんなんて
今ではもう、見せられない。





涙は静かに流れてた。

見上げるとあの時と変わらない電線越しの満点の星空。

星座同士を結ぶ線みたいなその電線は
あの時の記憶を鮮明にして
胸に温かさを宿した。





キラキラ……キラキラ……





星は

微笑むようにしておいらに輝きを向けてくる。






「なぁ?翔くん……あのままで、いいわけないよな?」





キラキラ……キラキラ……





涙で滲む星がぼやけて見えれば見えるほど
翔くんとあの時の思い出が胸を刺す。






「翔くんを助けたい……」





どうしたらいい?





あの時と同じベンチの質感や
あの時と同じジュースの味。

今も思い出される翔くんの汗と柔軟剤の匂い。

そして
あの時と同じ星空。





でも
あの時には想像しなかったこんな未来。





悔しくて
悲しくて
怖くて
辛くて……






だけど
星空を見てたら

電線越しの星空を

見てたら






思ったんだ。







翔くんが救ってくれたこの命。

翔くんが救ってくれたあの時の心。

今おいらがここにいるのは紛れもなく翔くんのおかげ。

強引に連れて来て
強引に夕食から拉致され
強引に山奥を歩かされた。

おいらはダメって言ったけど
翔くんは聞かなかった。





「今度は……そうか。」





「今度はおいらの番じゃん…」





強引に
屍と化した翔くんを連れ出すしかない。

あの時してもらったみたいに
強引にでも
翔くんを生きる道へと手を引っ張るしかないじゃん!




「星空!ありがとう!」




気付かせてくれたのはあの時の星空だと思った。

おいらは星空にお礼を言うと
カバンからノートとペンを取り出した。





翔くんが少しでも夢中になれるもの。
サッカーの代わりとはいかなくても、その数分の1でもいい、『やってみよう』と思える何かを見つけること!

そのためならおいらは
どんなことでもする!




決意しながらノートに書き込んでいった。




そしてたくさんの候補の中から
計画を立てた。




「よし。ダメだったとしても第二候補、第三候補もある!大丈夫!きっとやりとげる!いや、絶対やりとげる!」




やり遂げて翔くんを救うんだ。



おいらが翔くんを救うんだ!





計画にはこう書いた。



1、今〜1月まで受験
2、1〜3月、性に目覚めさせる
3、4月〜大学でサークル



結果的に1と2はうまくいった。



他にもいろんな候補を考えてた。

地下アイドル推し
カメラなどの趣味
足の裏がそこまで関係なさそうな水泳
恋愛



どれが翔くんにハマるのか
色々試してみるつもりだった。





おいらはどんなことでもする!

どんなことでも付き合う!




そう星空に誓った。





だから受験勉強も死ぬほど頑張った。

勉強苦手だったけど
死ぬ物狂いで頑張った。

そして翔くんとセックスもした。
性に溺れるように性の研究もした。

どうやれば気持ちよくなるかも調べまくった。







なぜそこまで出来たのか?
そう問われるとすぐに答えられる。



だって…
おいらにとって翔くんは

家族にも
兄弟にも
幼馴染みにも
恋人にも
結婚相手にも
性対象にも
友だちにも



何にでもなれる唯一の存在だから。




裏を返せば





家族でも
兄弟でも
幼馴染みでも
恋人でも
結婚相手でも
性対象でも
友だちでもない


他の何でもない


今までに無かった『枠』ができた感じの特別な


宝物の


存在


だから。






「星空に誓う」




「いつかじいさんになって、2人でこの場所に来る」




翔くんがサッカーを過去の思い出にできるようになるであろうじいさんの頃……




絶対に、2人で
またここに来るんだ。

2度と来れない…なんて
そのままにはしない。





強い気持ちを胸に抱けたことが

おいらはすごく嬉しかった。







智side、endーーーー








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長かった智side、終わりました。
読んでくださりありがとうございましたおねがい


受験したのも
セックスしたのも
すべては翔くんの命を助けるためだったんです。

えっと……
もうちょっと解説させてもらいたいので

明日11:00に本編を休んで
智sideの解説をアップしますね。照れ