注意:櫻葉小説です。



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日曜日……


朝からずっとラインしてるけど一度も既読は付かない。

電話してみても出ない。

夕方5時には青ちゃんの見送りだから
その時は確実に会えるだろうけど

それでもその前に話をしたいと思ってた。

というか
今まで一度もこんなふうに既読が付かない事は無かったから
連絡がつくまで心配で……

何かあったのではないかと悪いことが頭をよぎる。

俺は昼すぎからカフェに行ってみることにした。





「え……なに…これ…」




カフェは閉まってた。
そしてドアには貼り紙がしてあった。




【一身上の都合により、しばらく休みます。】



「な……んで……」




すぐに翔の携帯に電話するけど当然出ない。

だからって諦められず
裏手に回ってみた。

そうしたら潤さんが出てくるところで
俺に気付いた潤さんはその瞬間逃げようとした。




「潤さんっ!!!!!」




大きな声を出して追いかけると
潤さんは諦めたような顔をしてストップした。




「あ…相葉くん。」




思わず逃げられないように潤さんの腕を強めに掴んだ。



「お店……どういうこと?翔は?」

「えっと…」

「翔に何かあったの?」

「いや……そういうわけじゃ……」

「翔と連絡が取れない!翔は今どこ?!」

「相葉くん…落ち着いて…」

「潤さん知ってるんでしょ?教えて!!
!お願いします!!!」




潤さんは俺の掴んでいる手を離した。
そして
溜息を一つ吐いた。




「潤さんっ!!!」

「青はね?もう帰ったから。」

「……え?」

「お見送り、してくれる予定だったんでしょ?みんなにもそう伝えてくれる?ありがとうって。」

「え…なんで……」

「単にうちの両親がそろそろ帰ってこいって迎えに来てさ。なんかバタバタと帰っていったよ。まぁ、学校もあるしね…」

「そんな急に……?」

「それから……」





潤さんは一度下を向いてから
言いにくそうにした。





「翔くんは……カフェを辞めて、写真家として復帰するって言って……海外に、行ったから。」





あまりにも
想像してなかった言葉を聞いて

瞬間……頭が真っ白になった。






「うそだ………」






そんなわけない。

俺に父親と話し合う事を提案したのは翔で……

あの時……

一人じゃできなくても二人ならできるって………

そう言ったのは翔……だよ

そんなわけない。





「うそじゃないよ。
翔くんさ……、
相葉くんと会ってしまうと、決意が揺らぎそうだから会わないで行くって。……」


「嘘だよ!そんなはずない!!!
翔がそんなことするはずない!!!」


「相葉くん…。
相葉くんの気持ちもわかるけどさ?
翔くんは……そんなヤツなんだよ。青も言ってたろ?問題から逃げるのがうまいって。
そんなヤツなんだから、とっとと忘れてしまうほうがいいよ。」


「翔はそんなヤツじゃねぇーよ!!!
なぁ、
青ちゃんは?
翔は青ちゃんと話し合うって言ってたんだ!
どんな話になったの?!
その話し合いで、この街から出る決意をせざるを得なくなったんじゃねぇのかよ?
青ちゃんに会わせて?
青ちゃんに確認させて?!
会うのが無理なら電話で話をさせて?!」



「青は翔くんのこととは無関係で
単に実家に帰っただけだから……」



「んなはずないよ!!!
いいから連絡先教えて!!!
何かを隠してるんじゃないのなら俺と堂々と話ができるよな?!」


「相葉くん……
んなこと青に言われても困る。
兄として青の連絡先は教えないから。」


「潤さんっ!!!!!」


「俺は落ち着いたらカフェを再開しようと思うんだ。まぁ一ヶ月くらいは閉めておくとは思うけどさ。人も雇わなきゃいけないしさ。
カフェ開けたらまた来てよ。みんなにもそう伝えてくれる?じゃあ…」


「潤さん待って!!!!!」


「これ以上色々言われても俺も困るから」


「翔の事が好きなんだ!!!」






シーン……






恥ずかしい想いなんてもう認識はなかった。翔じゃない人にすがってもみっともないだけなのかもしれないけどそんな事ももう関係なかった。

それほどに翔は俺にとって大事な人で……
失くせない人だから。





「翔に会いたい。
会わせて?海外に行ったのなら俺もそこへ行くよ。だから教えてほしい。
お願い……お願いします。翔に……会いたいんだ。翔の事が好きだから」


「相葉くん?
そういう気持ち、も……
早く忘れたほうがいいよ。何も言わずに海外に行くようなやつだよ。酷いよな?」


「俺は翔に救われた!!!」

「相葉くん…
それは弟の春の代わりに優しくしただけで……」

「それでも救われた!!!」

「相葉くん…」

「関係ないよ。初めは翔がどう思ってたのかなんて!現に俺は翔と出会って救われたんだから!!!救われた事実には変わりないんだから!!!」

「もううるせー!!!
自分だけ翔くんを好きだなんて思うなよっ!」


「え………っ」





潤さんは苦しそうな表情に変わってた。






「相葉くん、ねぇ知ってる?
………親戚同士って、法律上、結婚できるんだよ?」


「っ……!」



「でもそれでも……
しょせん男同士だし……翔くんはそんな目で親戚の俺の事を見ることは一度もなかったから……だから、……諦めた。」


「潤さん……」


「もう諦めて何年も経った。
だから今はもうそんな感情も持ってないよ。持ってないけど………
自分だけがツライ恋をしてるなんて思うなよ。………それだけ言いたかった。」


「……………」






「恋を諦めるのはツライ事だと思う。
だけどいずれそれも思い出に変わるから。………あんな恋もしたなって笑って話せる時が来るから。
相葉くん……
今がその『諦める』っていうタイミングなんだよ。『新しい恋』でもして、あんな酷いヤツもいたなって、……いつかそう思えるように今は翔くんのことを考えないようにする時期なんだと思う。」




「潤さん……でも…」





「翔くんが相葉くんの前から姿を消した。……それは紛れもない事実で、それが翔くんが出した答えなんだよ。」


「翔と話してないからそんなのわかんねぇよ!」


「相葉くん…
ここまで言ってもわかんねぇの?!
じゃあ俺がハッキリ言ってやるよ。」



「……っ」



「君は翔くんにフラれたんだよ。」







………

その言葉の威力が強すぎて………






俺は………






膝から崩れ落ちそうになった。









「じゃあ…話はそれだけだから。」








潤さんが去っていく後ろ姿を眺めながら………







我慢してた力はぜんぶ抜け落ちてしまい、








俺は




やっぱり
その場に膝から崩れ落ちてしまった。