注意:櫻葉小説です。



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そんな感じで俺達はワイワイ騒いで
流星の恋もまだ始まったばかりで特に進展もなくその日を終えた。




〈次の日〉


学校へ行くため朝、外へ出て、少し歩くと小さな公園の入口がある。

そこで翔が待っていた。



「雅紀おはよ〜!」

ブンブンブン!
少し離れたところからでも大きく手を振る 翔。

朝だからか、またさらにイケメン度が増して、朝日に照らされてまるでどっかの王子様かよっ!ってくらい光り輝いて見える。


「雅紀!もしかして早めに来てくれた?」


昨日の夜、LINEのやり取りで、しつこく何度も、朝一緒に歩こうってうるさいから、待ち合わせの場所を伝えてた。


「んなわけねぇだろ?早く目が覚めただけだ。行くぞ!」


本当は、翔が待ってると思うと落ち着かなくて少し早めに来てしまった。

ここから歩いて学校まで約20分。

こんな清々しい気持ちになったのは久しぶりだった。



気持ちいいなー
やっぱり朝って空気がきれいだよなー
小鳥めっちゃ鳴いてるぞー
お!あのおじいさんこの前海で見かけた人だー


朝からずっと喋ってる翔。

でもそれが、翔の声だと鬱陶しくないから不思議。

むしろ済んだ朝にピッタリハマって
心地良いとさえ感じる。

これから
毎日のように翔とこうして学校まで歩くと思うと、言わないけど密かに胸が踊っていた。



「雅紀!」

「ん?」

「泣き声する!」

「あー…どこかの家で子供が泣いてるんだろ?朝は母親も忙しいからな。叱りつけてるとかさ」

「いいや!家ん中じゃねぇーよ!こっち!」

「ああ??……あちょっと待てって!!!」





翔は
子供の泣き声がする方に走り出した。

翔の走って行く先に
確かに子供の泣き声が大きくなってゆく。



「くそっ!どっちだ?!?!……こっちか!!!いや!こっちだ!!!」

「あっ!ちょっと!!!」



翔は俺の存在さえも忘れたかのように、分析、自己解決をしながら泣き声の場所を定めていく。


「翔!ちょっと!翔!!!」


俺の声は全く翔に届かない。


すると走った先に、展望台が見えてきた。

その展望台の上の方から子供の泣き声が聞こえてくる。



「うわーーん!うわーーん!」

「待ってろ!すぐ行く!!!」



翔は何周もの階段を走りながら駆け上って行き、俺もなんとか必死に翔の後ろからついていく形で登って行った。


「うわーーん!うわーーん!」

「大丈夫だから。大丈夫!大丈夫!怖くない。もう大丈夫だからな?な?」



翔が先に子供のそばに到着し、すぐにその子を抱き締め、泣いている子を優しく撫でる。


「どした?なんでここにひとり?……話せるか?」


翔が優しく言うとその子が


「ママと一緒にここ来たけど
ボクのクマ落として拾いに行ってくれて、……帰ってこない……」

「クマ?」

「クマ…」

「ここから落としたのか?」

「うん。」

「大丈夫!ママは帰って来るから。心配ない。」

「本当?」

「あぁ、大丈夫!一緒に待っていよう?」

「うん」





そこまで言い終わった直後

その子の母親らしき人が「ゆうだい〜」って言いながら展望台を登ってくる音がした。

「ママ!!!!!」

「大丈夫。待っていよう!な!」



少し待つと母親は上までやってきた。


「ママーーー!」
「ゆうだいごめーーん!」

「すみませんっ!こんなに探すのに時間かかるなんて思わなくて💦ホントすみませんっっっ泣いてたんですね?もーゆうだいったらー!普通に待ってるように言ったんですけど……」

「いや無理だろ。子供は泣くもんだって。」


俺がそう言うと母親は言い訳をしてきた。

「今日は幼稚園が行事の代休で休みだったのでこの子のために散歩一緒にしてあげてたんです。展望台登りたいって言うから登ったら、ミニタオルこの子が落としちゃって……風に吹かれて遠くにいくし、私も大変だったんです。」

クマってミニタオルのことだったのか。

翔はニッコリしながら母親に

「今度はこの手を離さないようにしましょうね」

とだけ言った。
だけどその目は笑って無くてむしろ怖い目つきで……
母親はその翔の目を見て慌てて言い訳をやめて何度か謝って
その子とその場を去っていった。





翔の……

新たな一面を見た気がした。





子供のことになると必死に探す翔。





その必死さは
周りなんか一切、目に入らないほどだった。