side A
翔ちゃんと、ジンギスカンのお店に来た。
翔ちゃんは、美味しい美味しいって言って、
たくさん食べてる。
ここのお店は本当に美味しくて、
翔ちゃんと一緒に来れただけで本当は
胸一杯、お腹一杯、なんだけど、
美味しいから、俺もたくさん食べていた。
潤くんに教えてもらったこのお店。
大正解だなって、翔ちゃんも嬉しそう!
個室だし、味もいいし、お酒もたくさん種類があって、翔ちゃんも結構飲んでる。
翔ちゃんと、ご飯に行くのはもう何回目だろう、、、
楽しいばかりじゃなくて、この前から苦しさもついてくるおれにとって、
翔ちゃんと行くご飯も、
どんどん強欲になっちゃって、
1分でも長く一緒にいたいっていう気持ちと、居れば居るほど苦しくなるっていう気持ちと、
そんな、心の葛藤との戦いみたいに変化してた。
「あいばくーん、、楽しいね♪美味しいね♪」
めずらしく
ちょっとだけ酔ってる翔ちゃん。
かわいい、、、
ちょっと酔うのも平気なほど、心許してくれてるってことかな?
翔ちゃんにとっての、大事な友達になってるんだったら、
大事な友達として、やりとげなきゃ。
「あれ?あいばくん、俺のお土産のキーホルダーつけてくれてんの?」
「え?今頃言ってんの?いつもつけてるじゃん?」
「そぉー?気が付かなかった。」
「ふふふ、ちょっとしたときに、このキーホルダー、触るだけで落ち着くんだ。なんか、お爺ちゃんが、傍にいてくれてる気がして。
お爺ちゃん、もう亡くなったんだけど、俺、お爺ちゃん子だったから、、、
でも、お爺ちゃんの形見みたいなものがなくて、、、
翔ちゃんがくれた、この思い出の帽子のキーホルダーが、なんか、お爺ちゃんみたいで、凄く安心するし、凄く大事なものになってる。」
「へぇー」
翔ちゃんは、また、柔らかく、ふわふわした極上の笑顔を向けてくれた。
きゅんとなって
苦しくなる。
もう、この大好きな笑顔をみることさえも、
苦しくなるなんて。
"好き"をまた制御するのが、困難になるよ。
キーホルダーを触って、何とか落ち着こうとした。
ちょっと落ち着いてから、また話しはじめる。
「翔ちゃんが買ってくれたお陰だよ?
本当にありがとう!
このキーホルダー、こんなに素敵なもの売ってる店、今度ネットで検索しようと思ってるんだ。もらった時の袋もとってあるから、店名分かるし、俺も鹿児島旅行行ったとき、ここに行こうと思って!」
俺がそう言った瞬間、翔ちゃんの様子が変わった。
何故か翔ちゃんが近づいてくる。
「えっ?」
まぁまぁな勢いで、
迫ってくる翔ちゃん。
えっ?何?、、、な、何?
ものすごいところまで顔を近付けられて、
俺は
完全に硬直する。
近い距離の翔ちゃんが、あまりにもイケメンで、
息出来ない。
ドキドキが
聞こえてしまいそうで
口をぎゅっと閉じる。
何が起きてるの?
ここ、個室なんだけど、、、
ほぼ壁ドン状態で
でもうしろがすぐ壁じゃなかったから、ソファーの背もたれに手を置き
低めの声で、
「検索すんな。」
そう言われた。