side A
すべての花を作り終えて、
今日は、木に付けて、舞台上で見てみる日。
舞台上に翔ちゃんもいる。
大道具さんはじめ、たくさんのスタッフに囲まれながらも、
翔ちゃんは、みんなにスムーズに、的確に、指示を出していく。
"こんな感じで仕事してるんだ。"
無駄のない動きだったり、
分け隔てない態度だったり、
頭の回転の早さに驚かされたり、
何より翔ちゃんの出す言葉が、きれいだと感じた。
普段、「違うし!」とか、「うるせーよ」とか、そんなことも言うけど、
仕事の最中、
綺麗な日本語だなーなんて、思って、やっぱり尊敬するなーって。
そんな中、あるスタッフが、
あきらかに翔ちゃんにだけ、
異常に媚うってる人がいた。
ごますりが半端ない。
こーいう事、、、かな?
翔ちゃんが褒められること、拒否っちゃうのは。
翔ちゃん、、、たぶん普通に仕事したいだけなんだ。
嫌だろうな、、、。
なのに、
ちゃんと、その人にもみんなと同じような態度で、受け答えしてる。
偉いな。
もっと嫌そうにしてもいいのに。
なんか、切ない。
翔ちゃんって、強いな。
そんな風に思いながら、
翔ちゃんの働いてる姿をただ、みてた。
ひと通り、花の位置も付け終わったとき、潤くんが翔ちゃんに話しかけた。
「翔くん、花、すごく良くなったね!」
「ああ、そうだな。前より随分いい。」
「あいばちゃんに、このままゴールドで小道具の手伝いしてもらおうと思うんだけど、いいかな?」
「それは無理だな。」
「どうして?」
「あいばくんは、演劇に戻るべきだから。」
そこまで聞いてから、会話に慌てて加わった。
「待って!
俺は小道具の勉強もしたいんだ!もちろん、演劇のレッスンもちゃんと自己流でやるつもりだから!
それに、ゴールドにいるだけで刺激になるし!
ずっとって訳じゃなくても、『サクラ咲け』の間だけでも!
お!お願いします!櫻井先生!」
翔ちゃん、かなりポカンとした顔してる。
「なんか、すごい勢いだけど、、、。
申し訳ない。それは賛成出来ない。」
「どうして?」
「そーだよ、なんで?」
潤くんも言ってくれた。
「確かに、葉っぱも花もすごいレベルだった。でもまだプロと同じレベルじゃない。仕上がりは、プロ並みだった。でも、かかる時間が、プロには及ばないんだよ。まだゴールドのレベルじゃない。本人がやりたくても無理だな。」
「うっ、、、」
なにも、、言えなかった。
返す言葉がない。
やっぱり、仕事に手を抜かない人。
当然といわれれば、当然のこと。
潤くんも、俺も、黙ったままだった。
その時ーーーー
「翔さん、こっちは猫の手も借りたいんだよ!手伝いたいっつってんだから、OKだろ。なに反対してくれてんだよ。」
「!」
「!」
「!」
振り向くとそこには、
凄く童顔で、少年みたいな可愛い顔した人がいた。
「ニノ。」(翔)
「小道具も大道具も、なんでもいいから、人を入れてくれ」
「、、、ニノがそう言うなら、、、。
じゃあー、、、
指導、、、してやって?」
「ふふふ。了解ー」
「!!! うえっ??? いいの?」
「ああ。ニノがついてくれるのであれば、問題はないからな。」
「ぃやったーーーーっ!!!
ありがとー!翔ちゃん!!」
「へんなやつ。
役がもらえたわけじゃないのに。笑」
翔ちゃんも、そういいながら笑ってくれた。
潤くんも、凄くホッとした顔してくれてる。
ニノって人、
救世主じゃん。良かったー。
これで、一年以上、一緒にいられる。
こんな、奇跡みたいなこと、あるんだ!!
この時はまだ知らなかったけど、
後から聞いた話では、
この時、ニノに頼んでくれたのは大野智くんだったそう。
二人は昔からの知り合いだったんだって。
俺は、色んな人に助けられながら、
こうして、無事に翔ちゃんのそばにいられるように
なったんだ。