side J
演出、はたまたプロデュースまで手掛ける櫻井翔。
彼とはもう5年の付き合いになる。
天才と言われ、
年下にも年上にも一目置かれる存在。
この業界では、知らない者はいない。
一流芸能人も、売れっ子の若手も、みんなこぞって櫻井翔の演出のもと、仕事をしてみたいと願ってる
人当たりもよく、理不尽なことも全くなく、機嫌のいい悪いに関係なく、いつも同じ態度の彼は
悪く言われることはあまりない。
ただ、まわりは口を揃えてこう言う。
「彼にはバリアがある。」
と。
そう、彼は、いつも誰に対しても一線を引いている節がある。
俺に対してもそれは同じだった。
信頼はまぁ、少しは他の連中よりしてくれている、
ただ、やはり、線を引かれてはいる。
彼がトップを常に走っているからなのか、
彼が芯から心を開く人は現れるのか、
なんとなく、いつもそれが気になっていた。
いつか、現れればいいと思う。
俺は、彼が好きだ。
変な意味じゃなく、人間として好きだ。
自分では、開けない彼の扉を、
誰かが、
いつか、
あけてくれたら。
そう願わずにはいられなかった。