小説「俺ではない炎上」
昨年読んだ「六人の嘘つきな大学生」が非常に面白かったので、同じ著者のこちらのミステリー小説をGW中に買って読んでみました。
浅倉秋成著「俺ではない炎上」双葉社
なりすましたヤツは、誰だ!?
ある日突然、 SNSで「女子大生殺害犯」に仕立てられた男。日本中が敵になり、必死の逃亡を続ける男が辿り着いた驚くべき真相は!?
(帯の紹介文より)
※ネタバレは書いていませんが、これからまっさらな気持ちで読んでみたいという方はスルーしてください。
殺人犯に仕立てられたハウスメーカー営業部長の山縣泰介、その娘の山縣夏実、SNSで事件を拡散させた大学生の住吉初羽馬、捜査本部の刑事で山縣家の人々に事情聴取する堀健比古の4人の視点で物語が綴られます。
山縣泰介の逃避行をベースに物語は進み、次第に事件の真相が明らかになるという構成です。
逃避行はサスペンス調で読み応えがありましたが事件の真相が一向に見えてこなくて、このまま行ったら山縣泰介は多重人格でやっぱり真犯人でしたとなるか、取って付けたように登場した新キャラが実は真犯人でしたとなる以外にはないのではないかといささか心配になりながら読み進めていったのですが、流石にそんな安直な展開になるはずもなく、最終的に全てのピースが見事にハマって迎えた結末には、ああ〜そうだったのかと全て合点がいったのでした。
全編を通して作者によるあるトリックが施されているのですが、いや〜これは気が付かないですね〜
途中違和感というかツッコミどころのような箇所があったのですが、読み終わってから思えばそれがそのトリックを見破るチャンスだったんですわ…。まあでも、この騙された感がミステリーの醍醐味なんで大満足ですよ!
「六人の嘘つきな大学生」もそうでしたが伏線が巧みで、まさかあれが伏線であったかと思うものばかりで感嘆しました!
欲を言えば真犯人の動機の記述がやや少なくて、凶行に至るまでの心境の変化をもっと描いて欲しかったところです。
自分はSNSに疎い山縣泰介と同世代なので基本的には彼の思考に共感する部分が多かったのですが、SNSでの無責任な情報の拡散が批判的に描かれている点などデジタルネイティブの若い方々はどう感じるのか気になるところではあります。
SNSが物語の重要な要素になっているなど今時のタイムリーな内容なので本当にこんなことが起こりえるかもとエンターテイメントながら妙なリアリティを感じましたね。
ただTwitterやGoogleやYouTubeなどの実在のサービスが出てくるので、余計なお世話かもしれませんが 10年後20年後に作品が古びてしまわないか少々心配になってしまいます。
「六人の嘘つきな大学生」を読んだ時にも感じたことですが、浅倉秋成氏の文章は非常に読みやすくて自分の感性に合っているようです。
読後感も非常に良いので、今後も浅倉秋成氏のミステリー作品は読んでいきたいと思います。
なかなか面白いのでミステリー好きな方はぜひ読んでみてください!
「六人の嘘つきな大学生」の感想記事はこちら。