藤子不二雄A氏を偲んで
毎度のことながらタイムリーさに欠ける当ブログなので、少々古い話題をさせていただきます。
今年の4月に藤子不二雄A氏がお亡くなりになりました。
自分の趣味嗜好を形成する上で藤子不二雄A氏(以下A氏)も藤子不二雄F氏(以下F氏)も非常に大きな影響を受けているし、そもそもドラえもんなど多くの藤子不二雄作品で育った世代なので、お気に入りのA氏作品の思い出などについて記したいと思います。
なぜこのタイミングかというと、お盆休みに実家に帰省した際に本棚の藤子不二雄作品を写真に収めてから記事を書こうと思っていたからです。
今では物置にしている部屋に本棚ごと移されていて、こんな感じです。
もちろん「怪物くん」などの少年向けのメジャーな作品も読んではいますが、自分が影響を受けた作品は、オカルト系やブラック系の作品群です。記憶が定かではありませんが、小学校高学年から中学生の頃に読んでいたものです。
魔太郎がくる!!
うらみはらさでおくべきか!!
いじめられっ子の浦見魔太郎が特殊な能力を使っていじめっ子に復讐する話。後半は復讐話よりもオカルト的な話が多くなります。この復讐の度合いが凄惨さを極めていて今の時代ではコンプラ的に完全にNG、後年発刊されたコミックスでは一部過激な作品が書き直されたり欠番になっていたりするようですが、昭和50年代に購入した秋田書店刊チャンピオンコミックス版なのでもちろんすべてオリジナルのまま掲載されています。
これがA氏作品の中で一番好きな作品。自分にとってオカルトを一番身近に感じた作品かもしれません。
ブラック商会変奇郎
骨董店の孫・変奇郎が不思議な魔力と不思議な骨董品の力で悪人を懲らしめる話。
奇妙なタイトルが非常に印象に残っていますが、内容はあまり覚えてないです。
黒ベエ
謎の男・黒ベエの不思議な力で翻弄される人々を描いたブラックユーモア作品。確か小学生の頃に読んだと思うのですが、ブラックユーモアというものに初めて触れた作品かも…。(朝日ソノラマサンコミックス刊)
黒ィせぇるすまん
タイトルを見て、あれ?って思う方も多いかもしれませんが、「笑ゥせぇるすまん」は元々「黒ィせぇるすまん」というタイトルだったのですよ!(自分が所有しているのは立風書房の文庫版)
アニメ化もされているのでご存知の方も多いと思いますが、ブラックユーモアに溢れた作品です。
こちらは自宅に置いてある短編集の愛蔵版(中央公論社刊)。
ブラックユーモア短編集
特に印象に残っているのは連作短編の「ぶきみな5週間」と「夢魔子」。
「ぶきみな5週間」は怪しい楽器や武器や人形を巡る恐ろしい話、「夢魔子」は謎の少女・夢魔子によって願望を叶えられつつも狂わされる男たちの話。
この愛蔵版以前に多分小学生の頃に単行本で読んでいるのですが、ブラックでダークな内容は小学生にとってはややどぎつくて非常に印象に残っています。
こちらの愛蔵版には前述の「黒ィせぇるすまん」などの他にも、青年になった魔太郎を描いた「魔太郎が翔ぶ」など様々な異色作が掲載されています。
本棚の写真にも写っていますが、実はF氏のSF短編集の方が自分のストライクゾーンど真ん中で、好きの度合いでいけばF氏の作品の方が好きで数も多く読んでいます。
ただ自分が子供の頃は「A氏」「F氏」の区別がなく「藤子不二雄」だったおかげで藤子作品というだけで当たり前に分け隔てなく読んでいたので、上で紹介したようなオカルトやブラックな作品に触れることができたのは幸運だったかもしれません。
中学生以降、筒井康隆に傾倒してブラック度高めのスプラッタ系の作品を読み漁りますが、ブラックなものに惹かれる原点は藤子不二雄A氏の作品ではないかと思っています。
藤子不二雄A氏のご冥福をお祈りします。