デフレマインドの正体 | 猫の遠ぼえ『次の世代に残したい日本』

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デフレの要因については様々な説がある。たとえば藻谷浩介氏の「デフレの正体」は日本の人口が減少していることや安い海外製品が入ってきたことをデフレの原因としている。これを主要因だとしているのは問題ではあるが、日本経済低迷要因の一部であるはいえそうだ。

 

リチャード・クー氏の「バランスシート不況」も金融政策の間違いを軽視し過ぎている点が大きな問題だが、企業の投資マインドの低下という不況の大きな要因を言い当てている。厳密な定義にこだわらず20年続いた日本経済の低迷をデフレと呼ぶなら、様々な要因があると考えるべきだ。

 

政府が「一億総活躍社会」を掲げているのはまさに人口問題が経済の足かせになるとの判断だし、企業に投資を促すための政策や働きかけに熱心なのはデフレマインドを払拭しようとするものだ。

 

安倍政権は日本のデフレの要因が一つではなく様々だということを認識しているのである。

そういう観点でみると、国債暴落説を唱え、「消費税増税で財政再建」を主張するトンデモ学者だと思っていた大前研一氏も現状分析ではいいことを言っている。リチャード・クー氏は企業経営者の心理に着目したが、大前氏の『心理経済学』は消費者マインドに焦点を当てている。


大前研一「高齢者のやけっぱち消費を狙え!」 理論ではなく「心理」が経済を動かす


ここに書かれている政策提言にも首をかしげるところがたくさんあるが、以下のような現状分析は傾聴に値する。コメント欄で夢見る親父さんとよく話しているようなことが書かれている。


(引用ここから)

 現代の日本人には、老後の生活について若い頃から心配するという特徴があります。「老後の生活についての考え方」というグラフを見るとそれがよくわかります。老後の生活を心配している人が、1992年の60%台から、2014年は90%近くまで増えています。心配していないという人が10%強。この20年間で、心配している人が明らかに増えています。

 

 何がそんなに心配なのか。「老後の生活を心配する理由」を見ると、「十分な金融資産がない」「年金や保険が十分ではない」という理由を挙げている人が多いようです。「ゆとりがなく、老後の備えが十分ではない」というのですが、日本人1人当たりの貯蓄額は世界最大です。いくらあったら安心できるのでしょうか。

 

(略)

 

 ところが日本の住宅ローンは、まったく貸出残高が増えていません。金利1.56%、35年固定。この数字を見てぴくりともしない欲望のなさというのは、海外ではまず考えられません。

 

 なぜそうなるかと言えば、日本人の「心理」が凍てついているからです。10代の頃から20年間低成長を見続けてきた30代の人たちは、「もういいよ。持たない、買わないのがいちばんだ」という心理状態になっています。こういう人種は、世界中を見わたしても、資本主義社会にこれまで生息したことがありません。

 

 ですから、欧米の経済学を勉強した人たちが、いくら理論を振りかざしても、理屈通りにいかないのです。経済理論よりも、心理のほうが経済に大きな影響を与えるという状況を、日本は今、世界で初めて経験していると言えます。

 

 冒頭で述べたように、日本人は使う気になったらいくらでもお金を持っています。家計の金融資産・現金・預金額はどんどん増え続け、今や(2015年時点で)1700兆円を超えています。このお金が1%市場に出てくるだけで17兆円です。

 

 しかし、皆このお金を使う気もなければ使う場所、チャンスもない。安倍首相は、もっとお金を使えと言っていますが、使う必要、チャンスがあれば皆使っています。この点について私がいくら言っても、政治家や経済学者たちは分かってくれません。要するにこの人たちは、個人がどうやったらお金を使うかということが分かっていない。そこが、日本経済の最大の問題なのです。

(引用ここまで)


ここで、個人がお金を使わない理由として挙げている「老後の生活についての考え方」というグラフは「家計の金融行動に関する世論調査」のことのようだが、上記記事にはそのグラフが示されていない。そこで、同じデータと思われるものをグラフにしてみた。


出典:「家計の金融行動に関する世論調査(平成27年)」の時系列データ
https://www.shiruporuto.jp/finance/chosa/yoron2015fut/hist.html


世帯主が60歳未満の世帯の8割近くが老後を心配だと答えているが、それが急増したのが消費増税のあった1997年から98年にかけてである。調査では「心配である」を「非常に心配」と「多少心配」に分けているので、それもグラフで確かめてみよう。


出典:同上


自殺者が急増した1998年に「非常に心配」が急増しており、その後も「非常に心配」の比率は上昇ぎみだ。大前氏の言う通りデフレになる前と比較して老後の生活を心配する人は増え、しかもその心配の程度は強くなっているのである。

 

ただ、大前氏は心配のタネとして金銭的な不安を挙げている人が多いことを、「日本人1人当たりの貯蓄額は世界最大です。いくらあったら安心できるのでしょうか。」と切り捨ててしまっている。このように理由を軽視するから提示する政策がおかしくなってしまうのだ。

 

もっとも、この世論調査が「老後を心配する理由」として用意した選択肢は次のようなもので、なんだかメリハリがない。金銭的な不安と心理的な不安を明確に分けるとか、政府の施策なのか社会や家庭環境の変化なのかといった境目がはっきりしない選択肢だ。

一応、上位3つの理由について推移をグラフで確認しておこう。

常に1位である「金融資産が十分でない」は横ばい気味で最近はむしろやや減少している。それに対し「年金や保険が十分ではないから」は1995年から98年にかけて目立って上昇している。これは保険料率の上昇や年金支給年齢の引き上げが議論されたり実施されたことが影響していそうだ。

 

この調査結果からでも、多くの人が老後の生活資金に漠然とした不安を持っていて、それが最近の賃金が上がっても消費が減少する心理につながっていることが分かる。この理由をもっと突っ込んで分析することが消費者マインドを改善する適切な施策につながりそうだ。

 

氏の言う「高齢者のやけっぱち消費を狙え!」 はあふれる個人資産を強制的に市場に導くためには資産課税を重くすればいいというもので、理屈の上ではかなり効果がありそうだ。ただ、実際にそれを実現するには多くの政治的な困難がある。よほどうまい方法がないと政権が持たないだろう。

 

氏は、次のように述べている。


(引用ここから)

1989年12月にバブル崩壊が始まりましたが、個人資産はこの25年間で735兆円も積み上がっています。このお金を消費に向かわせればいいわけですが、この資金を強制的に市場に導くには、資産課税を重くすればいいのです。

 

 すると、じっとしているだけでどんどん目減りしてしまうのですから、それなら人生をエンジョイするために使ったほうがいいな、と皆思うはずです。「死ぬ瞬間に、ああ、いい人生だった、と思いたくありませんか? 皆さん人生をもっとエンジョイしましょう」と、首相が国民に呼びかけて、その気にさせないと、このお金はマーケットに出てきません。そして「その代わりに皆さんが病気になったら国がとことん全部、面倒をみます」と言えばいいのです。

(引用ここまで)


こんなに簡単に、ことが運ぶのならだれも苦労しない。大前氏は『理論ではなく「心理」が経済を動かす』と言いながら、自分の理論が資産を持つ有権者の「心理」をずいぶん簡単に変えられると考えているようだ。とはいえ、「高齢者のやけっぱち消費を狙え!」 は1つのねらい目ではある。

 

氏の主張には賛同できない部分が多いが、『心理経済学』という視点はもっと広く認知されてもいいのではないか。

 

(以上)

 

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