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「なにぃ、はっちゃんがマムシに噛まれて危篤ー!」
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沖縄では魂をマブイと呼ぶので、「マブイ友だち=魂友」が語源やもしれぬ。
はっちゃんの著書「石垣島ハーブ暮らし」はさまざまなメディアで紹介され、東京の代官山でも講演&サイン会は大盛況だった。
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はっちゃんは海の見下ろせるハーブ園をもっており、今年の4月12日も美しいハーブ園の手入れをしていた。
「まったくぅ、誰がゴムチューブなんか捨てたんかいな」
ゴムチューブを握った瞬間、右手に激痛が走った!
それは台湾と石垣の混血種である最強の毒ハブだったのである。
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全身が火山にでもなったような熱い激痛が噴き上げてくる。
八重山病院に運ばれるが、血清も効かないし、ふつうのハブ患者とは明らかに症状がちがう。
集中治療室には病院じゅうから経験ある医師が集められ、叫ぶような論議をかわしながら緊急治療がおこなわれる。
意識を失っているはずのはっちゃんはその会話の一部始終を記憶していた。
まあるい光の玉のような世界がはっちゃんを呼んでいる。
そこは痛みや苦しみのない世界だ。
そこから何者かが3つの質問をしてくる。
「あなたはじゅうぶん愛しましたか?」
早くその世界へ行きたいはっちゃんは、めんどくさそうに答える。
「愛した、愛した、もうじゅうぶんに愛しましたよ!」
だから早くそっちへ連れていってーという感じだ。
「あなたはじゅうぶん愛されましたか?」
「愛された、愛された、もうじゅうぶんに愛されましたよ!」
もったいぶらないで、連れていってーという感じだ。
「あなたはじゅうぶん自分を大切にしましたか?」
最後の質問にはっちゃんはたじろいだ。
いつも他人を喜ばせようとして、わたしは自分を犠牲にしていたかもしれない!
これはオレが被災地に血を吐くまで通い続けてガンになった「自己犠牲の罠」だ。
はっちゃんは家族や子供や仲間のために身を削って奉仕しつづけ、自分自身を酷使してきたことに気づいた。
すると何者かが手を伸ばしてきて、はっちゃんを有無を言わせぬ力で引っ張った。
つぎの瞬間、意識がもどり、ICUのなかでドクターたちにかこまれている自分に気づいた。
意識がもどったと同時に火あぶりの刑になったような激痛ももどってくる。
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脇腹から背中にかけて紫色に内出血した斑が首筋で止まり、脳の破壊はかろうじてまぬがれた。
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今までできたことがなにもできない。
子供たちのお弁当もつくれないし、夫の世話もできないどころか、はいつくばってトイレにいくのがやっとだ。
「わたしは誰の役にも立たない。ただ生きて存在してるだけだ」
その無力感が新しいレベルにはっちゃんを導く。
「わたしはふとんにごろごろしてなにもできないが、存在しているというだけで、わたしが死んだ悲しみから家族やみんなを救っている。
社会的貢献なんかしないでいいんだ。
人は存在しているだけで、生きてるだけでいいんだ。
なにか大きな荷物を降ろした気がした。
責任感や役割なんかどーでもいい。
生きてようと死んでいようと、ふすま一枚のちがいしかないさあ。
だったら人のために生きるのはやめよう。
これからは、自分を喜ばせるために生きていこう!」
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はっちゃんとヨウスケと「うがんざき」(うがん=拝み=祈りの岬)へいった。
岩の上に宇宙か火山から降ってきた岩がのっかっている。
のっかっている岩はただ在るだけで動かない。
なのに人はこの風景を見るために集まり、何かを感じて去っていく。
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あなたはなにかになる必要はない。
あなたがあなたで存在しているだけで、
あなたを亡くした人の悲しみを救っているんだから。
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