ピンチはチャンス@名古屋 | New 天の邪鬼日記

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小説家、画家、ミュージシャンとして活躍するAKIRAの言葉が、君の人生を変える。

12月17日(土)愛知県清瀬市カルチバ新川ホール
古市佳央セルフストーリーオペラ「這い上がり」
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「15年間も毎日ブログを書きつづけて、よくネタがつきませんね」
と、よく言われる。
それがつきないのだ。
なぜならライブのたびにさまざまな人に出会う。
そこにドラマが生まれる。
魂レベルでは、むしろライブというのはおまけで、出会いのほうがメインなのではないか、と思う。
今日も佐藤号にのって名古屋にむかう。
海老名のサービスエリアってすごいね。もうこれはフードコートだわ。
原始人のように七面鳥を食らう。こういうの似合うなあ、オレ。
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今日は名古屋初上陸の古市さんオペラだ。
司会のやよいちゃんから電話がはいる。
「ちょっとやばいことになってるんですけど」
「へ?」
「主催のみねじいが二人、ピアニストを呼んでいるんです。はじめは地元の佐野信幸くんにピアノをたのんだんです。ノブくんは、キムタクのドラマ南極物語でもピアノを弾いてますし、コブクロの武道館コンサートでドラムをたたいているし、嵐の二宮君にも手品を教えていてるし、すごいやさしくていい子なんです。ノブくんはこのオペラのDVDを耳でコピーし、8月から5ヶ月間も練習してきたのに、みねじいがゲンさんにピアノをたのんだので、ノブくんは落ち込んでしまってみねじいにも会わないと言っているんです」
たしかにオペラのピアノ伴奏はプロのピアニストでもむずかしいし、ノブは生まれながら弱視で字が読めない。もちろん譜面も脚本も読むことができない。
ゲンさんにたのむのは安心だが、このオペラはノブが成長するチャンスだ。
オレの直感はそう言っていた。
「よっしゃ、今から岡崎にあるノブに会いにいきます!」
どうなるかわからないが、これも神様のはからいだ。
何か問題が起こるその先には必ず大きな恩恵が待っている。
夜の9時くらいにノブの家に到着する。なんとそこはキリスト教会だった。
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心配顔のみねじいが出迎えてくれた。
「いやあ困りました。ぼくがゲンさんがオペラのピアノ伴奏で、ノブくんはオープニングアクトをお願いしますと告げられたとき、ノブくんはショックで泣き崩れてしまったんです。ぼくが謝りの電話をしても出てくれず、ノブくんのお母さんからはも当日は参加しないと言われてしまったんです」
オレはさっそく2階にあるノブの部屋へあがっていった。
おおーキムタクのサイン!
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嵐の武道館!
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あしだまなちゃんや大橋のぞみちゃんまで!
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「まずはノブのピアノを聴かせて」
教会にあるピアノの譜面台には彼が5ヶ月間聴きつづけたDVDがおいてあった。
ノブのピアノに合わせてオレが歌をのせていく。
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吸い込まれるような演奏だった。
しかも古市さんの語りに入れられる効果音のタイミングまでばっちりだ。
ノブの頭のなかにオペラの譜面や脚本がすべてはいっていて、弱視なんぞ関係ないどころか、天才的な音感と記憶力をもっている。リハーサルをして、オレが脚本の変更点や、曲の微妙なニュアンスを伝えると、一回で聞き覚えて演奏してくれる。
「オレはノブのピアノで歌いたい! よっしゃゲンさんに電話してみる」
そう言ったものの、ゲンさんにどう説明しよう。明日こないでもいいですなんてとても言えない。
「もしもしアキラです。明日始発の新幹線、間に合いますか?」
「それがですね、昨日から全身に発疹ができて熱があるんです。もしノブくんが演奏できるなら代わってもらえませんか」
な、なにいー!
オレの頭の中では「村祭り」が鳴りだし、小人たちが踊りはじめる。

むーらのちんじゅのーかみさまのおー
きょうはーたのしーむらまつりー
どんどんひゃららーどんひゃららー

「そう、そうですか。ゲンさん、ここはゆっくり休んでください。23日、岩手でまたオペラもあることですし、ゲンさんの体調が何より心配です!」
心配そうに待っているノブのお母さんに言った。
「ゲンさんは水ぼうそうです。明日はノブに演奏してもらいます!」
ホテルで古市さんと合流し、夜中すぎまで盛り上がっていると、となりの部屋からドンドンとたたかれ、フロントから電話で「騒音の苦情が出てます」と言われたので、すごすごと寝た。

翌朝、9時に会場にむかう。
金のしゃちほこで有名な名古屋城をとおりすぎる。
ちなみに金のしゃちほことは、古代中国に伝わる伝説の海獣「シビ」、古代インドの「マカラ」という想像上の動物が起源だという。
剣の鉾(ほこ)のような鋭いひれと、虎のような凶暴さで鯨まで襲い、大波を立てて雨を降らせると信じられる怪物なのだ。
天守閣を火災から守るためと、人々が干ばつに苦しまないようにという祈りから生まれたのがしゃちほこなのだ。
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カルチバホールに到着すると、知った顔がいっぱいいるじゃん。
岐阜ライブでお世話になった「SYB(世界やり手ババア)」ことヤヨイちゃん、
New 天の邪鬼日記-111217yayoiヤヨイちゃんは本日の司会だ

路上詩人たちもがんばっているじゃん。
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奈良ライブは高杉助産院の千代子ねーねと峰久さん、四日市ライブで出会ったモアハピのメンバー、大阪や神戸など、中部、関西のアキラマニアがかけつけてくれた。
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うれしいねうれしいね。友情貯金はどんどん全国に広がっていくな。
「アキラさん、今日は巨匠のオペラを勉強させてもらいます!」
つい先日オペラデビューをはたしたノリオは、バックパックをしょって東京から夜行バスでやってきた。
照明はうっきー&あっきー、音響はマサシ、設営をミツモトさんがやってくれる。
主催のみねじいも晴れ晴れしい顔だ。暴走するみねじいを支える奥さんのキヨちゃんもうれしそうだ。
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もうひとりの主催者あさくらじゅんちゃんが笑顔で迎えてくれる。
じゅんちゃんの息子は去年11月、癌で亡くなった。まだ7歳の少年は闘病中、全国の友人に見守られていて、入院中のベッドのまわりは遊園地みたいに賑やかだったそうだ。
「彼はみんなに愛されて亡くなった」と、みねじいは泣きながら話してくれた。
「マサシは自分が入院しているとき2人の弟たちが施設にあずけられることがとても辛かったんです。僕の病気がなおったら家族みんなでいっしょに住もうね、と弟たちに話してました。マサシが亡くなった今、あさくらさん一家はいっしょに暮らしています。マサシも見守ってくれていると思います」
さまざまな想いをのせてドラマがはじまる。
カルチバホールには100人の観客がつめかけてくれた。
オープニングアクトはローズママのバンドだ。
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伸びのあるボーカルで最後はノブくんのピアノで「ありがとう」(他の人のオリジナル曲)を披露してくれた。
いよいよ本番のオペラだ。
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さあノブ、おもいっきりブチかまそうぜ!
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ノブの演奏は水を得たしゃちほこのように生き生きとしていた。
オレや古市さんまでノブの想いにあおられて涙ぐんでしまう。
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出演者がこれだけ熱くなっているのだから、観客はもうしゃちほこが降らす涙の嵐である。
アンコールでは5000人の赤ちゃんを取り上げた奈良の助産師チヨコねーねーが宮古島のカチャーシーを踊って盛り上げてくれる。
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名古屋オペラは大きな試練を越えて、大成功を収めた。
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やはり神様がふっかけてくる試練は、われわれを成長させるためのチャンスなのだ。
ここで落ち込んで引き下がるか、
ピンチはチャンスと挑んでいくかで、
人の一生は大きく変わってくる。

2部の頭はノブのマジックショーだ。
ノブは嵐の二宮くんに手品を教えているだけあって、すごい腕前だった。
観客に選んでもらった一枚のカードにマジックペンで文字を書いてもらう。そのカードをトランプにまぜシャッフルする。すると次の瞬間、ノブがとりあげた封をきっていないペットボトルにそのカードがはいっていたのだ。
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さっきまで涙で目をしょぼしょぼさせていた観客が眼球も飛び出さんばかりに驚いている。
つぎのトークセッションでは古市さんの盟友、佐藤さんが登場する。
別の視点から入院生活を語り、観客は今までおこなわれていたオペラが現実のことだったとはじめ
て気づく。
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そうなのだ。セルフストーリーオペラのすごさはこのリアリティだ。
実際に苦難をくぐりぬけてきた本人が自らの肉体をもって人生を語る。
同じく自分の肉体を会場にまではこんできた観客が同じ空気に感染する。
こうしてオレたちの思いはマイコプラズマのように全国に広がっていくのだ。
打ち上げは、会場のそばにあるキリンビールの工場でおこなわれた。
こうしていつも美味しいビールが飲めますように祈願して、
金のしゃちほこ!
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