死者の家 | New 天の邪鬼日記

New 天の邪鬼日記

小説家、画家、ミュージシャンとして活躍するAKIRAの言葉が、君の人生を変える。

ああ、こうしてライブレポート以外のブログを書けるのもいいなあ。
ライブがなかったら、清少納言になっていたのに。
日光は連日の雨だ。
築100年のAKIRA屋敷は、そこかしこで雨漏りしている。
これは中1までおねしょしていたオレへの呪いなのか!
キッチンはもうずぶ濡れ。
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おおっ、いつもは雨漏りしないベッドルームにまでモーレアモーレ。
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はじめてきた人はAKIRA屋敷を見て笑い出す。
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「これって、ゲゲゲの鬼太郎の家みたい!」
「玄関のなかまで蔦が侵食してる!」
「震災前からブルーシートですかあ?」
地震のたびに家が平行四辺形になっていないか、びくびくしながら帰る。
長いツアーから帰るたびに、トイレの水道が凍っていたり、キッチンが噴水になってたり、畳にキノコが生えていたり、近所の猫がアトリエに子供を産んでいたり、なにかハプニングがある。
おおー、まだ屋根がある。
壁がある。
床もあるではないか!
もうそれだけでじゅうぶんだ。
この家はおじいちゃんの松吉が、名うての大工、竹ちゃんにたのんで、廃材を利用して建てた家だ。
今回の地震にも耐え、よくぞまあ100年も持ちこたえていると思う。
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稲荷町3丁目の住民から聞くところによれば、ちょうどこの下をじょうぶな溶岩流のかたまりがとおっていて、地震にも強いそうな。
この妖怪ハウスに暮らしていると、ラップ現象なんてあたりまえだぜ。
屋根が叫びのようにきしんだり、アトリエのドアが急に開いたり、さっき閉めたはずの仏壇が開いていたりする。
家族6人+猫2匹で暮らしていた家に今はオレ一人だが、死者もまだこの家に暮らしていると肌で感じる。
怖いどころか、守られているのだ。
「怖い」を選ぶか、「守られている」という世界観を選ぶかは個人の自由だが、実際チョー居心地がいい。
子供のころから墓場にいくとくつろぐし、オレは死者といっしょにいると心地いいのよね。
「エクソシスト」や「シャイニング」やら、ホラー世界に洗脳されるなかれ。
死者が住む家に暮らすことは、最高の安心をもたらすのよ。
オレの「アジアに落ちる」や「アヤワスカ!」を読んだ人がライブにきて、オレと握手した。
「ああアキラさん、まだ生きてるんですね」
「あたりまえじゃん!」
「だってアキラさんの歌も本も生きてる人じゃ書けない言葉っすよ。ぜんぶ死者の視点から書かれてるでしょ?」
「だってこうやって握手してるとあったかいでしょ?」
「はい、たしかに生きてますね。アキラさんて本やブログ読んだだけでも10回以上死にかけてるし、ほんとは死んでいるのを気づいてないだけなんじゃないんすか?」
「そうか、オレは亡霊だったのか!」
そう考えると、怖いものはない。
「一度死んだと思えば何でもできる」と人は自殺者をなぐさめるけど、10回死んでいれば10倍のことができるじゃん。
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玄関先に張られたクモの巣にかかったカマキリの子供を、
「おカマの恩返し」を期待して、
逃がしてあげた。