All photo by HIDE横田基地は、福生市をはじめ立川市、羽村市、瑞穂町など多摩地区６市町にまたがる。沖縄を除く本土最大の米空軍基地だ。
福生にとって横田基地は行政面積の３分の１を占める。「フェンスの向こうは、アメリカ」なのだ。英語の看板や米軍関係者の姿が街を歩き、アメリカ兵相手のレストラン、バーなどもまだ健在だ。
1950年代には基地周辺にたくさんあった米軍ハウスが今でも少し残っている。70年代にはアメリカ文化や音楽にあこがれるミュージシャンや画家、写真家、小説家などのアーティストたちがハウスに移り住み、ポップカルチャーの発信拠点となった。桑田圭介や忌野清志郎もハウスの住人で、、大滝詠一の「ナイアガラレコード」も福生が発祥の地だ。村上龍は小説『限りなく透明に近いブルー』で福生を全国的に知らしめた。
「チキンシャンク」とならぶ伝説のライブハウス「UZU」（東京都福生市武蔵野台１-３-１２ TEL 042-551-4477）は今年で35周年を迎える。
今年の7月11日には、UZUで、福生のドン、中原宙さんとツーマンライブをやった。
UZUのオーナーであるエリコさんは自らミュージシャンでもあり、「あたしもアキラさんとコラボしたい！」と言ってくれた。
今回も福生に移住したヒデとサチコが主催である。
ヒデはいつもなにかしかけてくる。
「アキラさん、オンセンズ以来のバンドでやりましょう！」
おおー前回共演した天才ギタリスト宮田さん、北海道からドラムのジョニーさん、そこにベースの上野さんが加わる。
しかもヒデはオレよりもオレの曲を熟知していて、当日歌うセットリストまで自分で組みあげてしまった。
いいね、いいね、「I am Material Boy（私はマテリアルです）」。ふつうの人は「おれを利用しやがって」などと怒るが、オレにとっては最高の栄誉だ。
オレは自分を「素材（＝マテリアル）」だと思っている。AKIRAという粘土や絵の具をつかって好きな作品をつくってほしい。主催者にとってAKIRAライブをすること自体が「表現」であり、創作の喜びを分かち合うことができる。
オープニングアクトはUZUのオーナーエリコさんだ。
エリコさんはかつて「福生のジョーン・バエズ」といわれ、ちょっとハスキーなボイスがいかしてる。ギターの小峰さんとベースの上野さんをしたがえ、軽妙なサウンドと意味深い歌詞を紡ぐ。
35年間で店で出会った人々を描いた「今がすべて」では自殺する女の子や悩みをかかえる若者に「今を生きる」ことの大切さを説くすばらしい歌だった。
一昨日まで東北ツアーをいっしょにまわり、一度北海道へもどってからまたかけつけてくれたジョニーさんが歌った昭和の歌謡曲「バスストップ」はバカうけしていた。
さて前半はオレひとりの弾き語りだ。
ヒデの組んだセットリストに昨日歌詞が完成したばかりの新曲「きみよ始祖鳥となれ」をいれる。帯広で発表したものの、「まだ歌詞が甘い」と神様のゴーサインがでていなかったのだが、昨日突然ふってきて一気に完成したのだ。
１、 今日は死ぬのにもってこいの日だ
２、 マーマレードスカイ
３、 祈りの歌
４、 きみよ始祖鳥となれ
５、 ソウルメイト
６、 ウレシパモシリ
いよいよ後半はひさびさのバンドで歌える。
マジ、燃えるぜー！
７、 おまえの舌苔を陽にさらせ
８、 無条件の愛
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９、 雲のうえはいつも晴れだから
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１０、 Born to love
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１１、 家族
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１２、 ありがとう
１３、 サンガイジュウネコラギ
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１４、 MOVE! MOVE! MOVE!
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１５、 空の約束
昨日ヒデと電話で会話した。
「おれが勝手に命名しました。バンド名はデンジャラス（危ない）です」
「おおー、いいじゃん、いいじゃん。デンジャラスというからにはアレもやっていいのかな？」
「ええー、アレはだめですよ、危険すぎます！」
「いや、絶対に舌苔（ぜったい）をやってやる」
オレが30年前にニューヨークでコカインの売人をやっていたころ書いた詩「おまえの舌苔（したごけ）を陽にさらせ」（アルバム「100億光年の孤独」にはいっている）をいきなり一曲目に披露した。
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「おまえの舌苔を陽にさらせ」（フルバージョン）
ジャンクこそ神だ
静脈に突き刺さる針の痛み
それが祈りだ
真夜中の迷路 雪解けの路地を
血走った眼球を落としそうになりながら走りつづける
どこだ どこだ どこだ
神はいったいどこに隠れているんだ
おまえの舌苔を陽にさらせ
さもなくば永遠にくたばれ！
101 South 6th St Brooklyn
それがボクらの大聖堂だ
六〇畳にもおよぶ地下ロフト
日も射さず 風呂もなく 家賃も払えず
コンクリートの天井から下がるサンドバッグを殴りつづける
錆びついた鉄パイプのベッド
床に散らばる注射器と血痕
祈れ 祈れ 祈れ
ボクたちに許されているのは
ひたすら祈ることだけなんだ
おまえの舌苔を陽にさらせ
さもなくば永遠にくたばれ！
深夜のＪトレインには
森から逃げ出した小人たちが乱舞する！
フルボリュームのカセットデッキ
極彩色のスプレーペイント
彼らは白雪姫を強姦した罪で
一生追われつづけるんだ
なんという幸福な一生だろう
おまえの舌苔を陽にさらせ
さもなくば永遠にくたばれ！
「火をかしてくれないか？」
客待ち顔の娼婦にきいた
「フェラだけなら十ドルでいいわ ジャンクと同じ値段よ」
十四丁目で売ってる安物の香水がからむ
「火がほしいんだ」
礼儀上タバコを差し出したとたん
「うす汚い寄生虫！」
娼婦が投げつけた紙マッチがボクのほほを打つ
ひざまづいて拾おうとする後頭部に唾が吐き捨てられる
「あたしたちは体をはって生きてんのよ！」
娼婦より卑しい階級に堕ちた喜びを誰が知ろう
おまえの舌苔を陽にさらせ
さもなくば永遠にくたばれ！
「撃っちまえ！ 撃っちまえ！」
こめかみに当てられた銃口の冷たさ
暴漢はボクのポケットをまさぐり
十ドルの全財産を強奪する
大切なのは生きのびることだ
明日打つジャンクのためだけに
おまえの舌苔を陽にさらせ
さもなくば永遠にくたばれ！
突然バンから飛び出してきた警官たちは
いっせいにボクにつかみかかる！
のどもとに食いこむ警棒
手をつかされたボンネットの渇望
足をけり広げる鉄板ブーツの欲望
やつらは自分のコカインが切れたときジャンキーを襲う
思う存分愛撫するがいい
残念ながら三パックは靴下のなかさ
おまえの舌苔を陽にさらせ
さもなくば永遠にくたばれ！
おぞましい重低音の唸りをあげて
野犬の群が襲いかかる
街灯に閃くよだれと狂暴な牙
ボクのけがれた肉塊で飢えた胃袋を満たすがいい
奈落の井戸を落下していく
ひとつの
腐ったトマト
おまえの舌苔を陽にさらせ
さもなくば永遠にくたばれ！
肛門に突き刺さった頭
肩車で愛人をかかげ
チューブから酸素をほおばる双生児たちよ
肛門にねじりこまれた拳
上腕筋の根本まで腸内に受け入れる苦行僧よ
「いったいなんのために？」
子孫を残すためだけに愛を語る愚かな質問はやめろ
悟りを開くためだけに禅を組む安全な修行をやめろ
極北の苦悩を受け入れるものだけに
門は開く
おまえの舌苔を陽にさらせ
さもなくば永遠にくたばれ！
イーストリヴァーに浮かんだ友よ
炭酸ガスで膨らんだ水死体を引きあげるな
親もとからくすねたジャンクの名は
「青い月ブルームーン」
夜の海を漂う風船は
惑星の泡となって月へ帰る
おまえの舌苔を陽にさらせ
さもなくば永遠にくたばれ！
セント・ヴィンセント・ホスピタルによこたわる友よ
同じジャンクを分け合った針兄弟よ
「エイズは悪魔なんかじゃないよ
ただでモルフィネの点滴を受けられるなんて
ジャンキーたちが夢見た天国じゃないか」
おまえの留置針を今すぐ引き抜き
ボクの腕に突き立てろ
今夜もまた世界中の闇に
呪われた血液をいっぱいにつめた
針の雨が降る
おまえの舌苔を陽にさらせ
さもなくば永遠にくたばれ！
白昼の路上で手淫する乞食よ
世界中の子宮に拒まれた精子よ
悲鳴をあげる主婦たち
のけぞり笑う女子高生の群
飽食に肥えたブロイラーたちを
酸性雨（アシッドレイン）となって焼き溶かせ
おまえの舌苔を陽にさらせ
さもなくば永遠にくたばれ！
みんなみんな狂ってて
それに気づいちまった不幸な連中だけが
至福の正気に到達できる
まるで狂人たちのションベンを毎日飲まされても
あんなおだやかに笑ってる便器のようだ
おまえの舌苔を陽にさらせ
さもなくば永遠にくたばれ！
亀の島に屹立する巨大な注射器
皇帝楼エンパイア・ステート・ビルディング
世界中の薬物信者たちがひれ伏す仏塔（ストゥーパ)よ
赤いランプの灯った針先で
われわれの欲望を天にとどけたまえ
宇宙の毛細血管のすみずみにまで
この祈りがとどくよう
永遠にわれわれが不幸でありますように
幸福の罠から守りたまえ
いやはやすさまじい盛り上がりだったね。宮田さんのギターは凶暴でセクシーで最高だ。
ジョニーさんのドラムも爆発し、
上野さんのベースも最高の「ロック」だった。
「デンジャラス」に狂喜する観客のみんなもコアだったなあ。
AKIRAワールドはこの「悪」がベースになっているから「愛」が歌えるのだ。
福生音楽界の重鎮というか暴れん坊ミュージシャン、ショットガン・ビリーさんが観客としてきてくれたのがむっちゃうれしかった。
ヴィデオのタカ、トシ、仙台からきてくれたシイタケ、カウンターのチハルとアスカもありがとう。
福生に新しい波がくる。
