皇帝の食卓 | New 天の邪鬼日記

New 天の邪鬼日記

小説家、画家、ミュージシャンとして活躍するAKIRAの言葉が、君の人生を変える。

「帰国直後の2月6日にライブをやりませんか?」
ハジメくんからのメールが転送されてきた。
おのれえ、今やベトナムの皇帝となったオレに、ライブなどという庶民の戯言(されごと)などできるか!
と一喝しそうになったが、なにしろ鬼のバンマスであるから、あとで「皇帝、音程の高低ズレてる」とか怒られるから、「へい、喜んで!」と受けてしまった。
ううむ、皇帝も情けないことよのう。
あっ、皇帝になって庶民どもに笑われたいちばんの原因を今、思い出した。
つーか、前回のブログはハノイ行きのバスが迫ってたんで、あわてて書いたのよ。
皇帝の衣装の衣装はすそがやたらと長いので、皇帝ペンギンのようなよちよち歩きになる。王座に上るとき、すそを踏んづけて、かかとが前の段に落下し、踏み出したスネを上の段の角にしたたか打ちつけ、「ギャッ」と声を上げてしまったからである。なるべく目立たぬように写真だけとって逃げようとしていたのに、受付のティーンエイジャーやら、伊太利亜やら、仏蘭西観光客がいっせいに振り向き、スネ(いまだに青い)を押さえてうずくまる皇帝の姿を目撃してしまったからである。
つーか、皇帝口調書きづらいんで、素にもどんだけどさ。
2月5日に帰国して、6日にライブをやって、7日に新潟へ旅立たなくちゃなんねーじゃん。
荷物を整理したり、新潟用のCD焼いたり、準備してるヒマねーじゃん。
きっと鬼のバンマスはオレのへらへらフリーダムをうらやんで、オレがグルメ大国ベトナムでのへらへらグルメをジェラしってんじゃねえの?
オレの専門は路上屋台ばっかなんだけど、ベトナムはの食やばい!
70円のカニ、35円のフォー、60円のマンゴやパパイアヤやドラゴンフルーツやメロンなどの生ジュース、その他もろもろ、見たこともない超ド級グルメのオンパレードなのだ!
つーか、食べたものは全部写真に撮ってあるが、年末の日本で一生懸命働くみなさまが全員ベトナムに移住してしまうので、のせられない。でもちょっとだけ、見たい?
0712フエの麺
フォーといっても地方によってさまざまなで、無限といってもいいくらいバリエーションがある。これはフエ名物「バンボ・フエ」という激辛牛肉麺。140円。

0712カニばばあ
道端のカニばばあ。茹でたカニをしがみ、道に吐き出す。一匹70円。

0712貝
アサリや巻貝など、貝の盛り合わせ。350円。

0712ホワイトローズ
ホイアン名物「ホワイトローズ」(えびの練り物を米皮でくるんだもの)210円。

0712揚げワンタン
これもホイアン名物「揚げワンタン」(タコスみたいにトマトや香草をのせて食べる)。210円。

0712クレープ
練ったもち米に豚肉などを入れ、バナナの皮で蒸す。70円。

0712ミニ餃子
米皮のミニ餃子。なかに揚げたエビなどがはいっている。35円。

0712お好み焼き
ベトナムのお好み焼き「バインセオ」。パリパリの皮に豚肉やもやしなど具だくさん。70円。

0712パン
フランスの植民地であったベトナムはパンがうまい。ハムや豚肉や野菜をはさみ、ヌクマム(魚醤油)で食べる。むむむ、サンドイッチの新境地だわ。140円。


古都フエでチェンム寺に行った。
「アジアに落ちる」の帯を書いてくれた宮内勝典さんの小説「焼身」を読んだからだ。1963年に焼身自殺したベトナム僧クアン・ドゥク師の謎を追っていくスリリングなストーリーもさることながら、「世界を見る。その刃の切っ先まで見切る」という宮内さんの思想を集大成したドキュメント小説でもある。
「この世界が生きるに値するか?」
ぜひみんな読んでほしい一冊だ。
当時の大統領が仏教徒を締め付け、宗教の自由を奪おうとした。ベトナム仏教の中心地フエでは僧たちのデモがおこり、警察の発砲によって子供をふくむ9人が殺された。クアン・ドゥク師はそれに抗議するため、サイゴンの路上でガソリンをかぶり、自ら火をつけた。炎は数メートル頭上まで燃え上がったが、クアン・ドゥク師は微動だにせず息絶えた。
0712焼身写真

この写真が世界中に配信され、まさに世界を震撼させた事件だった。
ここチェンム寺にはクアン・ドゥク師が現場に乗りつけた車が展示されている。戦争を知らないベトナム人少女がなぜか食い入るように車を見つめていたのが印象的だった。
0712焼身車

「この世界が生きるに値するか?」
オレは旅をしながら、ひたすら世界を見つめつづけるひとつの目になっていく。
今晩ハノイから24時間の夜行バスにのり、ラオスへと国境を越える。