変性意識ってなに? | New 天の邪鬼日記

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小説家、画家、ミュージシャンとして活躍するAKIRAの言葉が、君の人生を変える。

「すいません、アキラさんいますか」
 またもや突然の来客である。ブログにのせたヒトシ&フジコの写真を見て、いろんな人から「わたしも彼らを知ってます」メールが殺到した。
「アイヌモシリ一万年祭へいったカッチャンといいます」
 世界中を旅しているカッチャン(47歳)は、「風の子レラ」 を読み、物干し竿売りのオサナイくんはじめ、いろいろな人から「アキラに会いに行け」と言われて来たという。
 「アヤワスカ!」を読み、しかも本を携えて、アマゾンのど真ん中にあるサントダイミー教会の本部セウ・ド・マピアにいってきたというから驚きだ。
「パートナーのケイちゃん(25歳)です」
0609カッチャン&ケイコカッチャン&ケイ

 ケイちゃんはと子猫のレブンを抱えてやってきた。ケイちゃんは北京マラソンはじめ、ハワイやロスアンジェルスや世界中で走っているランナーである。
「走ることで、アヤワスカやシャーマンが到達した境地にいくのが目標です」
 おおっ、なかなかスルドイことを言うねえ。

 「ランナーズ・ハイ」と呼ばれる状態は、肉体と精神の酷使が極限に達したときに訪れる。走りはじめからじょじょに高まってきた苦しさが、ふっと楽になるときがくる。これが「セカンド・ウインド」(次息)と呼ばれる。さらにそれをつづけると「サード・ウインド」(第3の息)と呼ばれる至福感がやってくる。この状態が「ランナーズ・ハイ」である。
 大量のエンドルフィンやドーパミンが分泌され、頭が空っぽになり、「わたしが走っている」という自我が滅却し、世界や宇宙との一体感が味わえる。
 この感覚はプロアマ問わず、すべてのスポーツをやる人たちが少なからず体験していることだろう。もちろん世界レベルのすぐれたプレーヤーたちはしょっちゅうこれを体験しているはずだ。
 深さの程度こそあれ、スポーツも、アヤワスカも、瞑想も、断食も、苦行も、ヨーガも、エステも、アイソレーションタンクも、宇宙遊泳も、超能力も、ギャンブルも、宗教も、恋愛も、セックスも、出産も、体の病気も、心の病も、臨死体験も、お笑いも、ダンスも、音楽も、絵画も、べつべつの川から「変性意識」(アルタード・ステイツ)という大海に流れこむんだ。
 じゃあ「変性意識」ってなに?
 進化上いちばん新しい大脳新皮質は、類人猿から人類へいたる過程で爆発的な増大を遂げる。それは他の動物にない「想像力」をもたらした。
 「想像力」は諸刃の剣である。他人の心を思いやったりもできるし、見たこともないようなものを発明したりできる反面、自分で直接体験してないことや、遠くで起こっていること、過去と未来など、際限なく広がっていくと発狂してしまう。
 それを安定させるため、人類は脳に大脳基底核という検閲装置をもうけた。(現段階ではそう呼ばれている)
 なんらかの影響によって検閲装置のダムが決壊すると、快感物質ドーパミンがつぎからつぎへと放出され、前頭葉の活動が加速度的に高まってゆき、「変性意識」にはいるといわれている。
 これはあくまで脳に関する物理的な状態だ。
 じゃあ心の状態はどう説明するのだろう?
 「変性意識」の特徴は、個がかかえる孤独感が消え、自然や神との一体感、すべてが「わかった」という全能感が感じられるという。
 イギリスの詩人テニスン(1809-1892)の言葉を引用してみよう。

 突然、個という意識が希薄になり、個我意識、個体意識そのものが広大無辺な存在のなかに融解し、消失していくようだった。それによって当惑することもなく、もしろ意識は澄みきり、この上なく強い確信に満ちていた。死などというものはありえないーー死という観念は笑うべき誤謬だーーという、言語を絶するほどの強い確信だった。パーソナリティー(そんなものがあるとして)の喪失は存在の消滅ではなく、それこそが唯一の真の生命なのだと思われた。
(「死を超えて生きるもの」ゲイリー・ドーア編より)

 さまざまな方法で「変性意識」状態をくぐった人々が最終的に到達するビジョンがいっしょだというのも不思議なことである。
 カッチャンがアマゾンに携えていった「アヤワスカ!」のラストでオレはこんなビジョンに到達した。

 消える、消える、消える、すべての境界が。
 消える、消える、消える、「もうひとつの現実」と「今ここにある世界」とをへだてる壁が。
 死んでいった者も、生きている者も、みんな僕を守ってくれているという確信が降ってくる。すると、自分を取り巻く世界すべてに対して、強烈な感謝の念につつまれる。

「知覚を全開にしたまま、覚醒せよ!」
 サン・ミゲルですべての答えを教わった気になっていたのに、さらにその上を行けというのか。無数の芸術家、文学者、音楽家、哲学者、科学者、そして僕が、この旅で追い求めてきた「意識の変容(アルタード・ステイツ)」。
 それさえも越えていこうとする。
 幻覚に酔うだけでは進化は起きない、覚醒したままでは進化の方向ベクトルを誤る。現代文明は地球を道連れに集団自殺の一歩手前まできている。幻覚と覚醒、狂気と理性、破壊と創造、右脳と左脳、蛇と天使、シャーマニズムとテクノロジー。この敵同士がファックすることによって、まったく新しいエクスタシーに達する。「全体性の復権(アルカイック・リバイバル)」「統合された意識(トータル・コンシャスネス)」「宇宙的覚醒(コズミック・バース)」、そんなもったいぶった言葉なんかいらない。
 愛せ、愛せ、愛せ、すべてを愛しつくしてしまえ。
 許せ、許せ、許せ、すべてを許しつくしてしまえ。
(「アヤワスカ!」より)

 そうなのよねえ。言葉にすると陳腐かも知れないけど、オレたちがこの世に生まれ、無数に生まれ死んで無数に生まれ死んでいくことの理由は、

 無条件の愛を学び、心を成長させていくこと。

 になぜか行きついてしまうのよねえ。執着を捨てるのって、むっちゃむずかしいんだけど。
 最近ジョギングもやってないし、ニューヨークマラソンを練習時点で挫折したオレにはランナーズ・ハイはむいていないので「ペインティング・ハイ」で変性意識を目指すか。
0609エツコ&トシ2エツコ&トシ(中間トーンがついたぞ)