東京ライブレポート1 | New 天の邪鬼日記

New 天の邪鬼日記

小説家、画家、ミュージシャンとして活躍するAKIRAの言葉が、君の人生を変える。

 うおー、気がつけば12時間も泥のように眠って、復活したよ。(復活早えー)
 いつものように長いライブレポートをお届けしよう。

2006年2月25日(土)
江古田倶楽部

1 War
2 Beautiful
3 Unconditional love
4 心がくしゃみをした朝
5 Dancing BUDDHA
6 旅立ちの歌
7 人の一生屁のごとし
8 Percussion(YAO & RIE)
9 Blinkers
10 今日は死ぬのにもってこいの日だ
11 Merry christmas
12 ぼくの居場所
13 Alone
14 おやすみ
15 Ballafon(YAO)

 去年の6月以来8ヵ月ぶりに東京ライブだ。江古田倶楽部はマスターの好意により毎回無料で練習させてもらっているONSENSのホームグラウンドである。
 今回も昼の12時からリハをはじめられるという理想の環境だ。オレたちは曲の細部まで入念にチェックし、自信をもってライブを迎えることができた。

0602江古田ライブ1

 いつかオープニングで「war」をやろうとしていたが、札幌も高知も名古屋もまだまだこの曲ではじめられるほど自信はなかった。ONSENSのレパートリーのなかでもっともネガティブな破壊力をもった曲だから。しかしONSENSが新しいステップをよじ登るにはこの破壊力が必要だったのだろう。入院したハルカ、ガンで余命3ヵ月を宣告された友人、それぞれの痛みに苦しむ仲間たちが巨大な壁をまえに行きづまっている。
 オレたちはオープニングにもっとも危険な爆弾を仕掛けた。

「war」

見たくもねえから目をえぐる
聞きたくねえから耳をそぐ
It's a war it's a war it's a war
誰かオレを
It's a war it's a war it's a war
止めてくれ

言いたくねえから舌をぬく
嗅ぎたくねえから鼻をもぐ
It's a war it's a war it's a war
誰かオレを It's a war it's a war it's a war
つぶしてくれ
war!

メサイアなんてこない
救いなんかてない
おまえだけがおまえを
救うメサイア

触れたくねえから指つめる
持ちたくねえから腕はずす
It's a war it's a war it's a war
誰かオレを
It's a war it's a war it's a war
しばってくれ

立ちたくねえから足を折る
泣きたくねえから胸えぐる
It's a war it's a war it's a war
誰かオレを
It's a war it's a war it's a war
さばいてくれ
war!

メサイアなんてこない
救いなんかてない
おまえだけがおまえを
救うメサイア

飛びたくねえから羽をもぐ
なりたくねえから夢こわす
It's a war it's a war it's a war
誰かオレを
It's a war it's a war it's a war
殺してくれ

わかってほしくて傷つける
愛してほしくて死を選ぶ
It's a war it's a war it's a war
誰かオレを
It's a war it's a war it's a war
抱いてくれ
抱いてくれ
抱いてくれ

 狂気に叫びが壁を破壊し、古い価値観が瓦礫となった世界。ふと見あげた黒雲が裂けひとすじの光とともにやさしいメロディーがもれだしてくる。

「Beautiful」

好きだ ずっと言えなかった
好きだ やっと伝えられた
君にために世界を失くしても
世界のために君を失したくない

You are so beautiful
You are so beautiful tonight
永遠は今 無限はここ
僕は 君を生きていくよ

You are so beautiful
You are so beautiful tonight
大地は君 大空は僕
君は 僕を抱いてまわるよ
You are so beautiful

今だ ずっと探してた
今だ やっと見つけたよ
人は死ぬために生まれ 
別れるために出逢う
ならば今この愛に
すべてを捧げよう

You are so beautiful
You are so beautiful tonight
永遠は今 無限はここ
僕は 君を生きていくよ

You are so beautiful
You are so beautiful tonight
満月は君 太陽は僕
君は 僕を映す鏡さ
You are so beautiful

君がただ在るだけでいい
君のまま在るだけでいい
受けとるより与えること
愛されるより愛すること

You are so beautiful
You are so beautiful tonight
永遠は今 無限はここ
僕は 君を生きていくよ

You are so beautiful
You are so beautiful tonight
そよ風は君 揺れる森は僕
君は僕を吹きぬけてゆくよ
You are so beautiful

You are so beautiful
You are so beautiful tonight
永遠は今 無限はここ
僕は 君を生きていくよ

You are so beautiful
You are so beautiful tonight
満ちる海は君 そそぐ川は僕
君は僕とひとつにとけあう
You are so beautiful

 「理想の自分にならなくてはいけない」、「みんなのようになくてはいけない」、「統一された価値観に会わせなくてはいけない」というものさしは戦の矢のごとく折れ、「君がただ在るだけでいい 君のまま在るだけでいい」ということに気づく。となりの芝生を見てないものねだりをつづけていると、存在するだけでありえない奇跡である自分を見失ってしまう。
 「beautiful」のスローバラードから軽快なリズムにのせ、さらに存在の根元を突きつけられる。
 誰もが無条件の愛を学ぶためにこの世に送りこまれてきたということを。

「Unconditional love」

求めれば求めるほど
愛は遠ざかってく
Unconditional love

求めるのをやめたとき
君は愛そのものになる
Unconditional love 無条件の愛

もし君がいなければ
今の僕はありえない
Unconditional love 無条件の愛

君のルールブックから
愛の定義を書き換えろ

愛すれば愛するほど
自由を失ってく
Unconditional love

自由になるのでなく
自由で在ることに気づく
Unconditional love 無条件の愛

君はこの世界にとって
かけがえのない贈り物
Unconditional love 無条件の愛

君の教科書から
愛の公式を捨てちまえ

海のように母のように
君をずっと見守るよ
遠く遠くはなれても
君をずっと愛してる

赤ちゃんはなにも言わず
笑顔を与えつくす
Unconditional love

思い通りになるとほめ
ならないと怒る
Unconditional love 無条件の愛

君は犠牲者じゃない
ましてや支配者でもない
Unconditional love 無条件の愛

君のルールブックから
愛の定義を書き換えろ

僕がこれだけあげたから
君もこれだけ返してと
Unconditional love

いちばん愛する人に
いちばんきびしくなる
Unconditional love 無条件の愛

愛は報酬じゃない
ましてや義務なんかない
Unconditional love 無条件の愛

君の教科書から
愛の公式を捨てちまえ

海のように母のように
君をずっと見守るよ
遠く遠くはなれても
君をずっと愛してる

やっとやっと気づいたんだ
君の愛に気づいたんだ
Unconditional love

君は愛を教えるため
僕のまえに舞い降りた
Unconditional love 無条件の愛

なくしてはじめてわかった
君の大いなる愛
Unconditional love 無条件の愛

君のルールブックから
愛の定義を書き換えろ

自分の無力さを
正直に受けとめる
Unconditional love

善も悪も呑みこんで
君のすべて抱きしめる
Unconditional love 無条件の愛

なにかになる必要はない
君は愛そのものだから
Unconditional love 無条件の愛

君の教科書から
愛の公式を捨てちまえ

海のように母のように
君をずっと見守るよ
遠く遠くはなれても
君をずっと愛してる

海のように母のように
君をずっと見守るよ
遠く遠くはなれても
君をずっと愛してる
君をずっと愛してる
君をずっと……
愛してる

 友人の作家雨宮処凛ちゃんがはじめてONSENSライブを聴きにきてくれた。ライブ後の感想では「今まで無数のライブにいったけど、はじめからおわりまで涙が止まらなかったライブははじめてです」と声をつまらせながら言ってくれた。処凛ちゃんがもっとも気に入ってくれた曲がこれである。

「心がくしゃみをした朝」

わたし幸せになる価値のない人
ずっとずっとそう思って生きてきた
君はちょんとわたしの鼻をつついて
バカ言ってらって微笑んだ

世界のすみっこで叫ぶ
君が大好きだよ

自販機から産み落とされた缶コーヒー
ほほにあてた淋しいぬくもり

必要ない 必要ない
おまえはいらない人間だ
そんなはずないそんなはずない
いらないものなどこの世にない
心がくしゃみをした朝

わたし友だちになる魅力のない人
ずっとずっとそう信じておびえてた
君は傘をななめにさしてくれるの
自分の肩がびしょ濡れになのに

世界のすみっこで叫ぶ
君が大好きだよ
雨の歩道 捨て猫の段ボールを
目をそらして走りすぎてた

必要ない 必要ない
おまえはいらない人間だ
そんなはずないそんなはずない
いらないものなどこの世にない
心がくしゃみをした朝


わたし愛してもらう権利のない人
ずっとずっとそう感じて逃げてきた
君はぎゅっとわたしを抱きしめながら
もっと素直になれって泣いた

世界のすみっこで叫ぶ
君が大好きだよ

明けゆく空 始発電車が裂いていく
チェックのマフラー風に飛ばした

いてもいいの いてもいいの
君のとなりにいてもいいの
寒くないよ 寒くないよ
君がとなりにいてくれたら

いてもいいの いてもいいの
わたしがわたしでいてもいいの
寒くないよ 寒くないよ
裸のままでいてあげるよ
心がくしゃみをした朝

 ライブにきてくれた友人からこんなことを言われた。「最近は癒し系の歌が街に氾濫しているけど、いい子いい子してくれる癒し系の歌とONSENSの歌はまったく別次元ですね。かたくなに隠していた場所をえぐり出される摘出手術みたい(笑)」

 2500年まえブッダはありとあらゆる苦行を自分に課し、「中道」という境地に達した。しかし最初から中道を目指し瞑想をつづけていたのでは、逆に現実から目をそらすことになる。一瞬一瞬の生活そのものが生を教えてくれる真剣な瞑想であり、あーでもないこーでもないと世俗の迷路を迷いながら走ることが本当の修行である。
 「瞑想」は「名僧」でなく、「迷走」と見つけたり。
 オレのなかのブッダは陽気でクレイジーでセクシーな男である。
 タケちゃんのノイズギターがうなりをあげ、スーパーパッカションズが怒濤のリズムを紡ぎだす。

「Dancing BUDDHA」

陽気な仏が目覚める
Dancing BUDDHA
エッチな仏がケツふる
Dancing BUDDHA
根性 忍耐 努力
Go to the hell !

瞑想なんかやめちまえ
Dancing BUDDHA
真実なんか捨てちまえ
Dancing BUDDHA
安定 平穏 無事
Go to the hell !

Wowwowおまえがブッダ
エゴこそ力だ孤独は宝だ
BUDDHA DADA DANCE
Wowwowおまえが愛だ
おまえが時代を産み落とす
BUDDHA DADA DANCE

常識なんてくつがえせ
Dancing BUDDHA
道徳なんて塗りつぶせ
Dancing BUDDHA
ワクワク ドキドキ あっは~ん!
Go to the heaven !

邪悪な仏がささやく
Dancing BUDDHA
野蛮な仏が吠える
Dancing BUDDHA
根性 忍耐 努力
Go to the hell !

悟りなんかクソ食らえ
Dancing BUDDHA
正義なんか唾を吐け
Dancing BUDDHA
安定 平穏 無事
Go to the hell !

Wowwowおまえがブッダ
エゴこそ力だ孤独は宝だ
BUDDHA DADA DANCE
Wowwowおまえが愛だ
おまえが時代を産み落とす
BUDDHA DADA DANCE

将来なんて踏みにじれ
Dancing BUDDHA
計画なんて遺書かくな
Dancing BUDDHA
ワクワク ドキドキ あっは~ん!
Go to the heaven !

狂った仏が笑うぜ
Dancing BUDDHA
変態仏が悶える
Dancing BUDDHA
根性 忍耐 努力
Go to the hell !

中道なんて踏みはずせ
Dancing BUDDHA
何事もやりすぎが肝心
Dancing BUDDHA
安定 平穏 無事
Go to the hell !

Wowwowおまえがブッダ
エゴこそ力だ孤独は宝だ
BUDDHA DADA DANCE
Wowwowおまえが愛だ
おまえが時代を産み落とす
BUDDHA DADA DANCE

ブッダに会ったらブッダを殺せ
Dancing BUDDHA
仏像燃やして生きのびろ
Dancing BUDDHA
ワクワク ドキドキ あっは~ん!
Go to the heaven !

 いつもはノリノリアゲアゲの「旅立ちの歌」をあえてアコースティックバージョンで挑戦してみた。スタッフがていねいに手作りしてくれた詩集を見ながらみんなも口づさんでくれる。ひとつひとつの言葉がゆっくりとしみこんでいく。

「旅立ちの歌」

もしも君が傷ついたり
つまずいたり へこんだら
青いネガは部屋に捨てて 
旅に出てみないか

空に抱かれ 海に抱かれ 
陸に抱かれ 夢見る
見知らぬ街 見知らぬ人 
見知らぬ自分

せまいせまい平均台
列にならんで
背中押されどこへむかう
落ちろ落ちろ!
そして目覚めろ
地面が君を受けとめる

風のように 鳥のように
川のように歌うよ
へたくそでも君にとどけ
旅立ちの歌


もしも君がひきこもってつらい思いするなら
冷めた涙雨に流し 
旅に出てみないか

森と遊び 虹と遊び 
影と遊び 見つける
変わる景色 変わる気持ち 変わる自分を

走る走る暴走列車
止まらないなら
窓を開けて外へ飛びだそう
逃げろ逃げろ!
そして旅立て
大地が君を歩ませる

花のように 草のように
月のように歌うよ
つたなくても君にとどけ
旅立ちの歌

まわるまわる星のうえで旅をつづける
人生はめぐる輪のように
生まれ死んで 生まれ死んで 生まれ
もう一度君と出会うんだ

君のままに 在るがままに 愛のままに歌おう
不器用でも天にとどけ
旅立ちの歌

へたくそでも君にとどけ
旅立ちの歌

つたなくても君にとどけ
旅立ちの歌

ラララ

 「旅立ちの歌」がしっとりと終わったところで、180度雰囲気のちがう宴会ソングがはじまる。ONSENSの裏切りというか振り幅の広さは無限である。リュウが手ぬぐいをかぶり、ビールびんを箸でたたきながら歌いだした。

「人の一生屁のごとし」

遊びをせむと生まれけむ
戯れせむと生まれけむ
けむけむ煙に消えてゆく
人の一生屁のごとし

かっぽれかっぽれ
遊ばにゃそんそん
かっぽれかっぽれ
笑わにゃそんそん
人の一生屁のごとし

まぐわいせむと生まれけむ
好兵衛せむと生まれけむ
けむけむ煙に消えてゆく
人の一生屁のごとし

かっぽれかっぽれ
惚れなきゃそんそん
かっぽれかっぽれ
感じにゃそんそん
人の一生屁のごとし

悪さをせむと生まれけむ
いたずらせむと生まれけむ
けむけむ煙に消えてゆく
人の一生屁のごとし

かっぽれかっぽれ
尻尾ふっちゃそんそん
かっぽれかっぽれ
噛みつかなきゃそんそん
人の一生屁のごとし

偉くならむと生まれけむ
親の都合で生まれけむ
けむけむ煙に消えてゆく
人の一生屁のごとし

かっぽれかっぽれ
さぼらにゃそんそん
かっぽれかっぽれ
なまけにゃそんそん

かっぽれかっぽれ
こらえちゃそんそん
かっぽれかっぽれ
ぶっぱなさなきゃそんそん
人の一生屁のごとし

 ここで前半が終了し、ヤオさんとリエちゃんのスーパーパーカッションズ演奏がはじまる。ふたりの大胆かつぴったりと息のあった演奏には「えー、いつ練習したんだよ!」と驚くのだが、今回はその秘密をのぞけた気がした。彼らは予定調和で細かいところまで打ち合わせしているのではなく、「音で会話」していたのである。リズムが変化する直前にはヤオさんの「呼び込み」というサインがはいる。それを聞き逃さず、リエちゃんが絶妙のグルーブをねじこむ。この真剣勝負が緊張感を生み、観客をはらわたの底から揺り動かすのだ。