合い言葉は「ギャッツビー!」 | New 天の邪鬼日記

New 天の邪鬼日記

小説家、画家、ミュージシャンとして活躍するAKIRAの言葉が、君の人生を変える。

 ライブのための合宿でベースのリュウとPA担当の信也(19歳)がきた。
 うちにはいってくるなり、信也が親指を突き立てウインクした。
「ギャッツビー!」
 おおっ、合い言葉は「ギャッツビー!」。これでオレはすべてを理解した。読んでるな、おまえ。
 3日前信也は大学の授業中に携帯でオレのブログを読んでいた。
 「男にも生理があるって知ってた?」という内容である。
 信也はこの言葉を読んで授業そっちのけで引き込まれた。
「……ま、まさか」

 男の体も70%は水分なので、月の引力の影響を受ける。体内時計が満ち引きをくりかえすのは当然だ。生理時には下腹部の鈍痛とともに尿道から本人の意思と関係なく透明な精液があふれ出し、下着を汚す。

「……そうか、いままで夢精だと思っていたのは男の生理だったのか!」

 リュウは花王が出している男性用生理用品「スノーマンズ・キャップ」を愛用している。ニット帽を小型にしたようなキャップを性器にかぶせ、キャップが落ちないように睾丸の根本にゆるいゴムを装着するタイプだ。

「ええっ、そんなの出てたの知らなかったよ。なんでみんな教えてくれないんだよ」
 信也はクラスを見まわし、男子たちの股間に「スノーマンズ・キャップ」が装着されている姿を想像する。信也はポケットの小銭をまさぐり、友だちに悟られないよう前橋駅前のマツモトキヨシで花王の製品を購入することを決意した。

 おしゃれなタケちゃんはCKデザインの「ギャッツビー」というアメリカ製である。ダークグレーのキャップの先端が排尿時に開閉できるようになっている。ヒモはなく、キャップの根本が幅3センチほどの黒いゴムバンドでできているのがカッコイイ。

「ギャッツビーか、さすがカルバンクラインだけあっておしゃれなネーミングだな。きっと6000円くらいするんだろうな」
 瀑布のごとき孤立感が信也を襲う。
「そんな世界中の男がつけているのに、もってないのはオレだけか。なんてオレは無知なんだ」
 たったひとりのけ者にされたような、自分がどうしようもないほど無能な気がした。

 既製品の嫌いなオレはゴルフクラブにかぶせるコットンセーター素材のキャップを愛用している。根本をヒモで縛るタイプなので、その日の太さによって微調整できるし、かわいいボンボンが決め手だ。

「そうか、代用品でもいいのか。幼児用ソックスなら100均でも買える。それに携帯ストラップをつけて睾丸の根本でしめればおしゃれかもしれない。そうだ、クロムハーツのドクロをさげて、みんなに自慢しよう。ふふ、みんなうらやましがるぞ」

 んなわけないじゃーん!
 ねえよ、ねえよ、ねえよ。
 花王さんも男性用生理用品なんかだしてねえよ。カルバン・クラインも「ギャッツビー」なんかしらねえよ。かわいいボンボンなんかさげてねえよ。

「なに!!」
 思わず叫び声をあげた信也に教室中から視線が突き刺さった。教授が冷たい口調で言い放つ。
「携帯でブログか、私の授業よりためになる話かね」
「い、いえ、すいません」
 ……ちくしょう、まただまされちまったよ。19歳の純情をもてあそびやがって。クロムハーツのドクロをさげて自慢しないでよかった。一生みんなに馬鹿にされるところだったな。(信也の話ここまで)

 この話を聞いて、オレとリュウは畳を転げ回って笑った。女性読者がだまされたというメールはたくさんきたが、まさか男がだまされるとは!
 ヒーヒッヒッヒッヒ、オレの描写がうまかったのか、信也が大馬鹿者だったのか?
 ほかに男でだまされた人はメールして。

※最新NEWS ONSENS東京ライブに山根麻以ちゃんや元ゼルダのサヨコさんや元じゃがたらのOTOさんやナラさんがお客さんできてくれるという。緊張するなあ。
★6月3日(金)青山COZMO'Sカフェ 開場17:00~ 開演20:00~
(JR渋谷駅東口より徒歩10分。地図。電話03-3407-5166 渋谷区渋谷1-6-3)
チケット2000円(1ドリンク付)限定120名のメール予約制です。早めに予約してください。
メールには、お名前、電話番号、人数、を明記ください。(受付 MACCOSA)
★6月4日(土)江古田倶楽部 開場20:00~ 開演20:30~
(西武池袋線 江古田駅南口より徒歩3分。地図。 電話03-3994-2005 練馬区栄町4-8福一ビル2F)
 こちらの予約は満員になりました。予約なしで当日きてもはいれませんのでご了承ください。