ウルトラマンジードについて | 北条明の世界

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GEEDの証

「ウルトラマンジード」は、2017年に放映された、円谷プロ制作のウルトラシリーズの一作品である。

話数は、「オーブ」と同じく全25話。

シリーズ構成を、ウルトラシリーズ初登板の乙一氏が担当している。

 

この作品の最大の特徴は、今回のウルトラマン、ジードが、ウルトラマンベリアルの息子ということである。

この設定は、円谷プロからの提案であったが、乙一氏も同じことを考えていたとのことである。

そして、メイン監督は、ゼロとベリアルが最初に登場した映画「大怪獣バトル ウルトラ銀河伝説 THE MOVIE」の坂本浩一氏である。

ゼロとベリアルの戦いは、「ウルトラマン列伝」の「ウルトラゼロファイト第二部 輝きのゼロ」で、時間が逆行して、ベリアルが蘇ったところで終わっていた。

その後、「列伝」、「新列伝」で、その続きは描かれず、「ギンガ」、「ギンガS」、「X」、「オーブ」と新ウルトラマンが登場していたので、「ウルトラゼロファイト」の続きはもう見ることができないのかもしれないと思っていた。

なので、今回、ベリアルのその後を見られるのがとてもうれしかったし、円谷プロがちゃんと覚えていてくれたのが、キャラクターを大切にしている円谷プロらしくてよかった。

ベリアルは、その後、クライシスインパクトを引き起こし、その6年後が「ジード」の世界である。

キングは、崩壊を防ぐために、宇宙と一体化しているが、これは、何故キングがこの危機を救わないのかという疑問を持たずに済む、すごくよく考えられた設定だと思う。

なお、ジードの世界は、純粋なM78ワールドではなく、サイドスペースという宇宙での出来事であるが、世代的に、M78星雲のウルトラマンには、どうしても特別な思いを感じてしまう。

 

主人公の朝倉リクは、特撮ヒーロー、ドンシャインが好きな爽やかな19歳の青年である。

ベリアルの息子にもかかわらず、悩みつつも常に前向きなのはよかった。

演じる濱田龍臣氏は、「ウルトラマンゼロ THE MOVIE 超決戦!ベリアル銀河帝国」のナオである。

ウルトラマンが好きで、今回の役を喜んでいるのが、なんかうれしい。

笑顔が爽やかで、まだ成長しきっていない感じが、リクにぴったりだった。

ゼロに初めて会った時に、ゼロが「惑星アヌーのナオじゃないか」とか言わなかったのはしょうがないけど、いつか、ナオとリクが会うシーンを見てみたい。

同作でエメラナ姫を演じた土屋太鳳さんが、ブログに、濱田氏が変身前を演じることを書いているが、土屋さんは、今でもウルトラのことをすごく大切に思っていてくれるので、その時は、1シーンでもいいから、エメラナ姫のその後も見てみたい。

リクがジードとして戦っている時の内面イメージが描写されていたが、その時の顔にベリアルメイクがされているのは、顔はベリアル似でもその本質に目を向けなければいけないとか、顔は不気味だけどそれでも仲良くできるのかというようなことを問いかけられている感じがしてよかった。

 

ジードは、オーブのように、2個のウルトラカプセルを使い、フュージョンライズして、様々な形態をとる。

作中には、5つの形態が登場した。

その中で、コスモスだけが、M78ワールドの住人でない。

コスモスは、現在、コスモスペースの住人という設定になっているが、ティガの超古代の戦士とか、ガイアの地球が生んだウルトラマンという制約がなく、純粋な宇宙人である。

「ジード」を見て、実は、コスモスは、M78ワールドのウルトラマン(レオのように別惑星出身かもしれないが)だったのではないかと勝手に思っている。

放送当時も、そうであってほしいという思いを持っていた(バルタン星人が出てきたことも、そう思う要因になっていた)。

もともとM78星雲人だったコスモスは、何らかの理由で、時空を越えてコスモスペースに行ってしまった。

その時に、時空超越能力を身につけたが、コスモスペースの危機を知り、その世界にとどまることになった。

「サーガ」で、何故、コスモスが時空を越えて、フューチャーアースに来られたのか、それで説明できる。

 

5つの形態のうち、最初の3つは、ティガのタイプチェンジのように、特性別になっていた。

マグニフィセントは、超能力と攻撃力の強化バージョンということだったが、劇中で見ている限りでは、4つの形態の中の最強バージョンという印象を受けた。

そして、すぐに、ロイヤルメガマスターが登場した。

ロイヤルメガマスターは、文句なしに、最強形態である。

自分は、前にも書いたが、最強形態が出てきた場合、どうして、それだけを使わないのかという疑問が出ないように、エネルギーの消耗が激しいとか体に負荷がかかるとか制約を作って欲しいと思っている。

今回も、特にそういう設定がなかったのは残念だったし、マグニフィセントの活躍の場が減ってしまったと思う。

 

武器を2つも持っているのは持ち過ぎのような気がするが、そこはもう触れないことにするし、あんまり奇抜な形じゃないのが、せめてもの救いかなと思う。

ウルトラカプセルというのは、「オーブ」がカードだったので、アイテムとしては神秘性もあるし、いい選択だと感じる。

5つの形態の中では、やっぱりプリミティブが一番ジードらしいし、あのベリアルを思わせる目が、斬新で絶妙なデザインになっていると思う。

とにかく、デザイン、設定とも、個性あるウルトラマンになっている。

 

ウルトラマンゼロについては、最後に書くが、ゼロのこの世界での人間体、伊賀栗レイトは、最高のキャラクターだった。

サラリーマンで父親というのも、かつてのウルトラファンだった現在の自分たちにとって、感情移入しやすかった。

普段はなんかダメなのも共感できたし、ダメでも正義の心を持っていれば、ウルトラマンになれるというのが、最高によかった。

眼鏡をはずすと、ゼロの人格が現れるというのも、うまくゼロとレイトの変化を表現していて、マシンマンを思い出した。

 

レイトの妻役は、「マックス」のミズキ隊員=長谷部瞳さんである。

個人的に、「マックス」の後に見た「怨み屋本舗 REBOOT」の印象が強く残っていて、今回幸せな役でよかったって思ってしまった。

長谷部さんは、実生活でも、結婚され、母親になっていて、ウルトラシリーズの出身俳優が幸せなのは、なんかうれしく思う。

第24話で、レイトの正体に気づいていたのを明かした時に言った台詞、「晩ごはん作って待っているから」がすごくいい。

 

ベガは、親しみやすいキャラでよかった。

「セブン」放送開始50年ということで、選ばれたんだけど、新規キャラでもよかった気がする。

 

ゼナは、なんか印象的なキャラクターになっていた。

あの凶悪なシャドー星人が、何故AIBにいるのかというのが描かれていたのはよかった。

ただ、ゼガンはとてもかっこいいんだけど、ガブラについて、何も言及がないのは残念だった。

ゼガンを出すにしても、ガブラが出てきて負けて、最終兵器ゼガンを使うとかいうのがよかった。

AIBという組織は、宇宙人が結成した組織という従来なかった組織で、魅力ある設定だったけど、やっぱり防衛隊でもいいから、出現した怪獣に立ち向かう地球側の組織は出てきて欲しかった。

「オーブ」のビートル隊くらいの描写でもいいので、そうしないと、「地球は我々人類、自らの手で守り抜かなければならないんだ」というのがなくなってしまう。

 

伏井出ケイは、前作のジャグラーと違って、愛すべきキャラにはならなかった。

でも、そこがよかったし、強烈な印象を残した。

ただ、死にそうで死ななかったのが多すぎた気はする。

最終回まで引っ張らなくてもよかったと思う。

位相を反転させるストルム器官やカレラン分子という設定は、SF的でよかった。

 

女性キャラでは、個人的に、圧倒的にレムが好き。

第19話で、声優役の三森すずこさんが演じた人間体の登場が、すごく魅力的で印象に残っている。

 

あと、ゲストでは、ウルトラシリーズ常連の寺田農氏が演じた朝倉錘が、リクが出生の秘密を知り、自分の存在意義について悩んでいる時期の登場だったこともあり、印象的だった。

ウルトラの父のウルトラカプセルの宿主というのにもふさわしかった。

 

新怪獣は、ベリアル融合獣が中心だった。

ジードと同じように、2体の怪獣が合体したというのは面白いが、伏井出ケイやベリアルがフュージョンライズして誕生した怪獣なので、怪獣そのものの個性がない感がある。

怪獣というより、ケイやベリアルの変身体という感じがしてしまう。

そのため、怪獣に対して感情移入や思いを持ちにくかった。

ウルトラ怪獣って、侵略者の用心棒でもロボットでも超獣でも、基本的に、自分のアイデンティティを持っているように感じられた。

今回、それがなかったことが、親しみを感じられない理由だと思う。

 

音楽は、「超決戦!ベリアル銀河帝国」を担当した川井憲次氏。

そのため、ゼロのテーマやカイザーベリアルのテーマが使用できたのはよかった。

やっぱり、ゼロには、あのテーマがないとって感じがする。

「ウルトラ銀河伝説」では、マイケル=バータ氏が音楽担当だったので、ゼロのテーマはなかったはずだけど、今となっては不思議な感覚がする。

主題歌「GEEDの証」も作曲しているが、すごくいい曲だと思う。

CDを、東京駅のウルトラマンワールドM78で購入した。

「決められた自分のSTORY~」ってところが好き。

ただ、最後の歌詞が「ウルトラマン」っていうのが、若干違和感を感じる。

やっぱり、「ウルトラマンジード」で終わって欲しかった感がある。

 

シリーズ構成の乙一氏は、最初のうちは知らなかったが、脚本も、安達寛高名義で書いている。

シリーズ構成協力が、「ウルトラマンX」から脚本に参加している三浦有為子氏である。

乙一氏のインタビュー記事で読んだけど、三浦氏は細かい部分までチェックしていたという。

具体的に、どこかどちらのアイディアなのかわからないけれど、ロイヤルメガマスターの登場がちょっと早いかなという感じはする(バンダイの意向かもしれないが)けれど、全体の流れはすごくよくできていたと思う。

特撮作品には初参加だが、仮面ライダーも、「エグゼイド」の高橋悠也氏やビルドの武藤将吾氏など、特撮作品が初というメインライターが、興味を惹きつけられるストーリーを創り出している。

一話完結の話もあるけれど、リクに関わる縦軸のストーリーの方が印象に残っている。

一話完結の話では、レムの人間体が登場する「奪われた星雲荘」が一番好き。

 

そして最終回。

さすがに、最初からロイヤルメガマスターになって戦っている。

そして、ピンチに、ウルトラの父が登場。

次回予告に、ウルトラの父が登場していたものの、イメージっぽいものだろうと、あまり深く考えてなかった(というか一週間したら忘れていた)ので、うわっウルトラの父が出たって感じだった。

しかし、よくよく考えれば、クリスマスの時期なので、父が出てくるのは当然だったかもしれない。

登場時に「別宇宙から何か来ます」と言っていて、テレビのテロップが「謎のウルトラマンの正体は?!」となっているので、今まで劇中ではっきり言っていなかったけれど、この地球は、M78ワールドの地球でなかったんだというのを改めて認識した。

そして、ジードに変身。

歩きながら変身するというのが、いつもと違っていて、最終回の特別感を感じさせる。

ジードは、プリミティブで戦うが、ロイヤルメガマスターで前回敗北しているので、これは理由がつく。

口から光線(レッキングロアー)を出しているのが、ウルトラマンの設定で終わった技って感じだが、やっぱりちょっと不自然な感じ。

でも、ついに出たか幻の技って感じで、映像化されたのは喜ばしい。

そして、5つの形態が同時に登場、「ウルトラマン戦隊」状態に。

5人で一人を攻撃すると、いじめっぽい感じになってしまうのだが(以前3対1だが、グア・スペクター対エックス+ギンガ+ビクトリーの戦いを見た時にそう感じた)、今回は、元がリク一人の力だから、分身しているというか同時に5つの力を使っている感じで、いじめっぽい印象は受けなかった。

アトロシアスは、ベリアルの姿に戻り、ジードに、異空間に引きずり込まれる。

そして、リクは、ベリアルの記憶を見る。

「ウルトラ銀河伝説」のシーンが蘇り、ダークネスファイブが、なんと伏井出ケイと一緒にいる、つまり、「ジード」は、やはり「ウルトラゼロファイト」の続編だったのである。

ずっと、なかなか「ゼロファイト」で復活したベリアルがどうなっていたか気になっていた自分にとって、この1シーンはすごくうれしいものであった。

一方で、「超決戦!ベリアル銀河帝国」のシーンはなく、アークベリアルとかも出てこないのは残念だった。

リクに抱きしめられたベリアルの体から、レイブラッド星人が抜け、アーリーベリアルに戻る。

その後のリクの「疲れたよね。もう終わりにしよう」という台詞が、とてもやさしく、そしてリクらしくていい。

最後に、レッキングバーストでとどめを刺し、「さよなら、父さん」と言うのには、心にぐっと来るものがあった。

坂本監督は、アクション面での評価が高い監督であるが、この最後の対決の情感は、ベリアルの最後にふさわしい本当に素晴らしいものであった。

 

今作の主人公ジードが、ベリアルの息子ということで、ベリアルと戦い続けてきたゼロが、当然登場した。

今まで、映画では主人公であり、「列伝」でもメインキャラクターであったが、テレビシリーズ(「ウルトラゼロファイト」は除く)の主人公になったことはなく、初のテレビシリーズレギュラー出演である。

正直、ベリアルには、今までずっと戦ってきたのだから、ゼロが決着をつけて欲しかった気もする。

ただ、ベリアルの息子という、より強い因縁を持つジードが出てきたことで、そこは譲ってもしかたないかなという気はする。

あと、ウルティメイトブレスレットが壊れてしまったから、ミラーナイトたちを呼んで来れないのはわかるが、最後でいいから、「ミラーナイト、ベリアルは俺とジードが倒したぞ」みたいな一言を入れて欲しかった。

 

1996年に、「ティガ」の放送が始まり、そこから、ティガは、2000年と2008年の映画では主人公となり、2008年まで、復活ウルトラを引っ張ってきたと思う。

そして、2009年以降のウルトラを引っ張ってきたのが、ゼロだった。

「ウルトラ銀河伝説」から3本の映画が公開され、その後は、「列伝」でつなぎ、「ギンガ」という新テレビシリーズが誕生した。

少しずつ話数を増やしながら、毎年、テレビシリーズが作られるようになり、新ウルトラマンを支えてきた。

 

2009年、円谷プロのTYOによる買収という衝撃の中で公開された「ウルトラ銀河伝説」から、8年が経った。

坂本浩一監督は、その後もライダーや戦隊シリーズと並行して、ウルトラシリーズに関わり続け、田口清隆監督とシリーズを支える両輪となった。

ウルトラマン放送開始50年の時に、NHKラジオ第1で放送された「祝ウルトラマン50 光の国からのメッセージ」にも出演していたが、これからもウルトラシリーズを監督し続けて欲しいと思う。

 

この8年、自分の子どもとテレビを見たり、映画を見に行ったりしてきた。

大怪獣バトルのゲームをやっていた頃が懐かしいし、この時期に、ウルトラマンが地球にいてくれたおかげで、本当にいい思い出を作ることができ、それには心から感謝している。

子どもたちも、前のように一緒に見ることはなくなってきた。

今回の「ジード」で、8年間にわたるゼロとベリアルの物語は終わった。

最終回を見て、一つの時代が終わった感を受けた。

ここまできちんとした最期を描いたのだから、もうベリアルは復活しないで欲しい。

それにしても本当に楽しい8年間だった。

 

「ジード」は終わった。

しかし、ウルトラシリーズは続く。

「ウルトラマンオーブ THE CRONICLE」が始まり、3月には、例年通り、劇場版が公開される。

7月から半年新作、半年は再放送、3月に劇場版公開という流れができている。

本当は、半年でなく、1年間にして欲しいが、毎年、新作が見れるなんて、本当にすごいことだし、テレビ東京には感謝しかない。

 

新作はもちろん楽しみだし、7月からまた新しいウルトラシリーズを放送して欲しいと思うが、8年間の物語に決着をつけた「ウルトラマンジード」には、特別な思いを持っているし、今はまだ終わった後の余韻を感じている状態である。