大鉄人17について | 北条明の世界

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超人ヒーローアルバム2

「大鉄人17」は、昭和52年に放映された東映制作の特撮作品である。

東映特撮YouTubeOfficialで、2017年7月12日から11月15日まで配信されていたのを全話見た。

配信されるのは3回目である。

原作は石森章太郎氏、脚本は第1話と第2話は上原正三氏だが、伊上勝氏の方が本数を多く書いている。

なお、本放送時に、次回予告の前に放送されていた「ワンセブンものしりコーナー」は、今回配信されなかったが、YouTubeで、全部ではないが見ることができた。

 

「大鉄人17」は、本放送時は、見ていない。

昭和52年は、自分が小学校6年の時であり、「レオ」が終わって2年後、ちょうど特撮ヒーローものを見ていない時である(ウルトラシリーズの再放送とかは見ていたかもしれないが)。

当時見ていたのは、「太陽にほえろ!」(ロッキー刑事が登場した頃)や少年ドラマシリーズ(「未来からの挑戦」や「きみはサヨナラ族か」、「赤い月」など、主題歌(曲)をカセットに録音するくらい好きだった頃)、「すぐやる一家青春記」などであった。

その1年後に第3次怪獣ブームが来なければ、そのまま特撮ヒーローものを卒業していたはずである。

自分の人生の中で、一番特撮と離れていた時期である。

「大鉄人17」は、その後、円谷プロ作品だけでなく東映作品にも興味を持つようになった頃に、書籍で知ったんだと思う。

ただ、東映作品を一段階下に見ていたこともあり、子ども向けロボット作品だと思っていた。

 

東映特撮YouTubeOfficialのその他ヒーロー枠で、「超人バロム・1」を見ていたのだが、そのコメント欄で、「大鉄人17」はすごくハードで面白いというのを見て、見てみることにした。

第1話を見て、完全にはまった。

悲劇の主人公、ハードな展開、リアルな戦闘、そして当時の東映のものとは思えない特撮、こんなすごい作品が、当時作られていることに驚愕した。

特撮は、矢島信男氏のクレジットはないが、実際は矢島氏が担当していたようである。

 

ストーリーは、人工頭脳ブレインとレッドマフラー隊及びブレインが作った謎のロボット17の戦いに、ブレインロボに父と母と姉を殺された南三郎が関わっていくというものである。

 

大鉄人17は、自らの意思とどんなものでも作り出せる超生産能力を持つロボットである。

当初は、第1話のナレーションにもあるように、「敵か味方か」わからない謎のロボットとして描かれており、それに興味を惹きつけられる。

 

第1話で、三郎が17を起動させると、「オー、17(ワンセブン)、起こしてしまったぞ」と、ハスラーが、17の名前を始めて口にする。

佐原博士が、「もしかすると重力子によるグラビトン」と言っている。

三郎は、ヘルメットをもらうが捨てている。

第2話で、三郎に「17」という名前がわかり、何故か三郎の乗るヘリを落とそうとする。

第3話では、ブレインのところに案内しない。

これは、後に第34話で、ブレインエリアの存在のためということがわかる。

チャフを撒いて、レッドマフラー隊のレーダーの追撃を逃れ、第4話では、撮っていたフィルムを回収し、自分のことを探られないようにしている。

まだレッドマフラー隊を信用していなかったのだと思われる。

第7話で、グラビトン攻撃をかけた後15時間、重力子の作用で完全に機能が停止することがわかるが、第8話で自己再生能力のため13時間で目覚める。

第8話では、富士山麓東南の洞窟に隠れていることが、ブレイン党にわかってしまう。

第9話で、ブレインは、17を破壊しないとハスラーに言う。

その後は、破壊しようとしていたから、この時は破壊せずにどうしようと思っていたのだろうか。

一方、17も「大砲ロボを破壊しろ」と言われ、「NO」と答えている。

第11話で、グラビトン攻撃が阻止されるが、第12話でエネルギー増幅装置のある膝が弱点で、攻撃されると、グラビトン攻撃ができなくなることがわかる。

そして、この12話で、17の秘密が明かされる。

17は、17番目に作った、オートダイオード・ワンセブンを初めて使った完全自動防衛システムを持つロボットである。

そのために、「ワンセブン」と呼ばれている。

ブレインは、「動き、攻撃できる私が欲しかった」と言っている。

17は、彼独自の良心を発生させ、「東京破壊計画を実行せよ」という命令に、「NO」と答えたため、電子回路に電磁フィルターをして地下洞窟(第1話の鬼野峠)に入れられた。

その電磁フィルターを三郎がはずしたため、復活したということであった。

地球にとって、人類を必要とするか不要とするかという考えの対立は、「ウルトラマンガイア」の我夢と藤宮を先取りしている。

第13話では、破壊された膝を治すために、三郎と村中隊員が、17の体内に入り、BWLSIを交換する。

第17話から戦闘飛行ワンセブンになれるようになり、第19話から人語をしゃべるようになった。

第24話で、ワンエイトをグラビトンでなくミサイルパンチで倒す。

第26話では、ハーケンキラーに、グラビトンを盾で防御されている。

ワンエイトに、電磁フィルターを取り付けられ、動けなくなっている。

第31話では、グラビトンを使わずに、ミラーアタックで、人工衛星ロボを倒している。

第33話では、グラビトンを、ゴールドネッシーに地下に潜って避けられている。

第34話では、ブレインエリア(2km四方にわたってはりめぐされているコンピューターコントロール網)の存在が明かされる。

シグコンジェットとシグコンタンクも破壊されてしまう。

第35話(最終話)で、ブレインエリア内で活動できるように、人間が操縦できる席を作り、三郎が操縦、落下し始めたところで、三郎を排出し、ブレインに体当たりする。

 

その最期からもそうだが、三郎と心を通わせたり、出自が敵の作ったロボットなど、ジャイアントロボを思わせる。

ただ、ジャイアントロボが、基本的に、鉄人28号と同じく、通信機で操縦するロボットだったのに対し、17は、自律思考型ロボットである。

それは最大の違いである。

 

全話見て思ったのは、三郎の17への思いが変化し過ぎだということ。

17のことをあっさり見捨てたり、信用しなかったりというシーンが、無神経に描かれている。

そういうのもあってもいいと思うが、もう少し丁寧に描いて欲しい。

三郎は、ガンテツ達が17を疑っても、それに対し、絶対的に17を信じて欲しかったし、2人のつながりの深さをもっと描いて欲しかったと思う。

なぜ、17はそこまで三郎に対して強い思いを持っているのか、それをもっと感じられるような描写が欲しかった。

あと、せっかくのヘルメットが活かしきれていなかった。

マイクみたいなのもほとんど使われていないし、後半は存在理由がなくなっていた。

第3話では、ヘルメットに焦点が当てられていただけに、そこが残念だった。

17が、第19話からしゃべるようになることには、賛否両論ある。

しゃべるようになったことは、進化し続けるロボットである以上、設定上無理があるとは思わないが、神秘性をなくしているとは思う。

言葉は交わさなくても、三郎とは心が通じているという方がよかった気がする。

必殺技のグラビトンは、缶が潰されるようなイメージが入るのが、すごく重力子の威力を感じさせて好きだった。

 

YouTubeのコメント欄にも、散々書かれていたけれど、ゴメスの退場後、ガンテツが登場し、ストーリーもシリアスでハードなイメージが薄れ、作品イメージが変わっている。

やはり、最初のハード路線の方が断然面白かった。

毎週の配信が楽しみだったし、見ていて、時間が経つのがあっという間だった。

こんなにすごい東映作品があるなんて、本当に東映を見直した。

東映だって、やる気になれば円谷に負けないものを作れていたんだというのを知ることができた。

ここまですごい作品だったからこそ、路線変更が残念だったし、最後まで、そしてできれば1年間、最初のままで突っ走って欲しかった。

ただ、後半も、正直、もっとひどくなるのかと覚悟していたが、それほどでもなかったとは感じた。

 

主人公の三郎は、第1話で、父と母と姉を亡くしている。

後半もそこはきちっと描かれ、全編を通じて、それを貫き通しているのはよかった。

その重さが三郎の最大の魅力である。

17への思いについては、書いたとおりだし、村中隊員に対して偉そうだったり、そんな行動するなよっていうのもあったが、なんかそれでも好きだったし、主人公として魅力的で、自分を投影できるキャラクターであった。

演じる神谷正浩氏は、「キカイダー」のマサル役だが、なんかマサルのイメージが自分にはあまりないだけに、フラットな感じでみることができた。

 

何と言っても前半の主役は、剣持隊長である。

三郎に対して、厳しく、それでいて暖かく見守っている。

第4話で「南隊員と言え」と言ったり、ブレイン党の攻撃に一枚も二枚も上に行ったり、切れ者でかっこよかった。

ゴメスとの因縁もよかった。

それだけに、後半の別人のような姿が残念でたまらない。

あんなにかっこよかったのに、路線変更の中で一番許せないのが、剣持の描写である。

 

佐原千恵は、竹井みどりさんが演じていた。

ほぼ軍隊のレッドマフラー隊の中で、責任者の博士の娘が隊員というのは、優秀ならそこは問わないというのでいいのだが、仕事中に、「お父さん」と呼ぶのは、前半のあの雰囲気の中で、違和感があった。

娘という設定がそんなに活かされていなかった感があるだけに、娘じゃなくてもよかったし、隊の中では、「博士」と呼んでもいいと思った。

あと、第2話でブレイン党に殺された婚約者の中井隊長への思いを、三郎の家族への思いと同様に、最後まで描いて欲しかった。

竹井みどりさんは、「80」の星沢子役の時は、もう知っていた記憶がある。

少年ドラマシリーズの「野菊の墓」は見ていたから、それでなのか、他のドラマで知ったのかはよく覚えていない。

昭和57年に、「キャバレー日記」という映画に出演していて、そのシナリオを、高校時代に読んだが、映画は見ていない。

「17」に出ていたのは、「スーパーギャルズ・コレクション」で写真を見て知っていたが、今回初めて見て、すごく魅力を感じる女優さんだなって思った。

 

佐原博士は、沈着冷静で、威厳があってよかった。

ただ、ブレインを作って失敗したのに、それにも懲りず、ビッグエンゼルをまた作ろうというのは、もう少し葛藤とかを描いて欲しかった。

ただ、最後に、ビッグエンゼルが自爆したのは、ブレインと同じようにならないようにという博士の考えが設計に反映されていたからかもしれないと感じた。

 

国際平和部隊、通称レッドマフラー隊の隊員は、急に、村中隊員が火を怖がったり、大学で未来科学(ゴーグルファイブみたい)を専攻していたという設定が出てきたり、村中と小野の関係が唐突に描かれたかと思うとそれっきりだったり、もう少し丁寧に描いて欲しかったと思う。

殉職する隊員が多数いたり、装備に未来的な兵器もなく、ほとんど自衛隊って感じで、ミリタリー色が強いのは、リアリティがあってよかった。

なお、第5話では、イシイ隊、キド隊という剣持隊以外の隊が、第12話には、ホワイトマフラー隊という存在が登場していた。

 

ブレインは、敵としては最高の強敵という感じでよかった。

超生産能力というのが最大の特徴であり、自己再生装置も持っている。

知的で、人類に対する思いも説得力があった。

ゴメスは、剣持との因縁とかもう少し深く描きこんでもいいと思うくらい、敵キャラとして存在感があった。

キッドは、ゴメスを裏切らないで欲しかったし、ゴメス退場後は、逆に影が薄くなった感がある。

ブラックタイガーは、科学的というより東洋の神秘という感じで、ちょっとブレイン党のイメージには合わなかった。

ピンクジャガーが、最後に三郎を助けるのが唐突感があって、もう少し、人を殺さなかった描写とか伏線を張って欲しかった。

三東ルシアさんは、もともと知っていたこともあり、懐かしかった。

結局、最後まで生き残ったのは、第1話から登場していて、ブレインの侵攻を招いた張本人=ハスラー教授で、そのはっちゃけぶりは、特筆ものだった。

ブレインロボは、二足歩行型ロボットだけでなく、いろいろな形態をとっていた。

ロボットって呼ぶ必要がないような形態のものもあったが、それは独自性があってよかったと思う。

 

「17」の主題歌は、以前に買ったCD「特撮テレビヒーロー主題歌集」で聴いていた。

すごくいい曲だと思う。

オープニングで、ブレザー姿の三郎が「大鉄人17」と言って両手を挙げると、タイトルが出るのが、音楽とドンピシャリで、すごく心地よく感じる。

主題歌、音楽とも渡辺宙明氏。

音楽は、劇伴として、画面にすごく合っていたし、同時期に配信され見ていた「ゴーグルファイブ」にも流用されていた。

 

途中の路線変更など残念な面もあったが、本当に配信が楽しみな作品であった。

これだけ強く思うのも、前半が最高だった故のことだとも言える。

こんなすごい作品を知らずに済まず、見ることができて本当によかったと思う。

「大鉄人17」は、数多くある東映特撮作品の中で、最高の作品の一つである。

 

(後日追記 第1話・第2話について追記箇所あり 2018年2月12日記)