仮面ライダーエグゼイドについて | 北条明の世界

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特撮(ウルトラ系中心)・少年ドラマシリーズ・大岡越前&江戸を斬る・ブラック・ジャック・アイドルなどについて語ってます

宇宙船 2017年4月号

「仮面ライダーエグゼイド」は、2016年に放映開始された、平成仮面ライダーシリーズの第18作目である。

 

「エグゼイド」のモチーフは、ゲームである。

デザインが仮面ライダーらしくなく、特に目が違う。

また、レベル1が三等身というのもインパクトがあった。

自分は、そんなに、「仮面ライダーはこうあるべき」という思いがないので、デザイン的にかっこいいとは思わないが、受け容れられる。

ただ、ゲームは、あまりなじみがないので、なんか今一つ、最初は話に入っていけなかった。

ゲームに勝つ=実際に敵に勝つというのが、感覚的に理解できない。

「グリッドマン」のコンピューターワールドで怪獣が暴れると、現実世界に被害が及ぶというのも、ただ、人々があたふたしているだけで、そんなことで世界征服できるのかと思っていた。

 

そんな感じで、なかなか最初はなじめなかった。

ストーリーも把握できず、レベルとか形態がどんどん変わっていって、ついていけなかった。

後半になって、永夢の謎が解明されてきたあたりから、ストーリーについていけるようになった。

ただ、長男は、ちゃんと見ていないのに、「ストーリーがけっこう面白い

」と言っていたので、ゲーム世代には受け容れられやすい設定だったのかもしれない。

 

脚本は、全話、高橋悠也氏が担当しているが、前作「ゴースト」に比べて、緻密に構成されていたと思う。

後半、久しぶりに、レベル1が登場してきて、それが、人間からバグスターを分離できるのはレベル1だけという初期の設定をきちんと踏襲していたのは、すごくよかった。

レベル1でなければならない説得力があり、同時に、物語冒頭で活躍したレベル1が久々に出てくるのは、最終局面にふさわしかった。

ストーリーも、確かに、最初はついていけなかったが、破綻してなく、きちんと設定を活かしていた。

バラドやポッピーピポパポの復活も、きちんと理由付けされていて、不自然さがなかった。

 

宝生永夢は、過去に秘密はあるものの、それがあまり永夢自身に影響を与えていない感があった。

一時的に、悩んだり、Mの人格になってしまったりはしたが、割とすぐに解消し、全編を通じては、前向きなキャラという印象が強い。

主人公として、魅力あるキャラになりきれていなかった気がするが、明るくストーリーを引っ張る存在としてはよかったと思う。

 

医者としては、鏡飛彩の方がかっこいい。

ただ、小姫という存在に囚われ過ぎていたのが、かっこよさを半減させてしまったと思う。

もっとクールに徹して欲しかった。

 

花家大我は、無免許医で、髪が一部だけ白いという、どう否定しても、ブラック・ジャックである。

演じたのが、「ウルトラマンX」ハヤト役の松本享恭氏である。

実は、自分は、「X」の中で、「ワタルの恋」という話が一番嫌いである。

ストーリーもだが、ワタルの彼女(厳密にはまだ片想いだったが)を結果的にとはいえ奪ったハヤトの無神経さが許せず、ハヤトのイメージが急降下した。

この話はいらなかったと思っている。

それで、松本氏には何の責任もないし、むしろ、それだけハヤトをきちんと演じていたと言えるのだが、それを払拭できず、大我にいいイメージを持てなかった。

ただ、最終局面で、ニコをかばって、クロノスに変身したのは、結局負けてしまうのだが、かっこよかった。

 

九条貴利矢は、最初は嘘ばかりついていたため、ゲンムの正体が黎斗だと本当のことを言っても信じてもらえなかったのが印象的である。

また、変身後がバイクだったり、前半で死亡したり(その後バクスターとして復活するが)、他のライダーとの違いがあり、印象に残るキャラとなっていた。

自分の思いを素直に出せず、悪ぶっているんだけど、実はいい人というのがよかった。

 

バラドは、本当にゲームが好きな子どもみたいな感じがよかった。

「心が躍るな」という台詞がバラドらしく、グラファイトともいい対比になっていた。

永夢が生み出したもう一つの人格で、バラドを倒すと、永夢は変身できなくなってしまうという設定もよかった。

ただ、永夢と決着をつけよう、つけようとずっと言っていたのに、なかなか決着をつけなかったのがまどろっこしかった。

最後に復活したのはよかったし、復活した理由に説得力があった。

 

そして、「エグゼイド」の中で、一番強烈な印象を残したキャラが、檀黎斗である。

最初は、ゲンムの正体を隠した黒幕であったが、バグスターウィルスとして蘇った後は、永夢たちの仲間として、ハイパームテキガシャットを開発したりする。

「新檀黎斗だ」と言ったり、倒されてもコンティニューしてまた出てきたりするシーンは、狂気を感じるほどであったが、最高のキャラクターであった。

ゲームのことを考えるあまり空気を読まない発言も多かったが、そういう視点もあるというのを示すキャラでもあった。

ただ、正宗との関係の描写が希薄だったと思う。

父子にする必要性はなかったように感じる。

 

他に印象に残るキャラクターとしては、百瀬小姫がいる。

復活した後、飛彩に、「世界で一番のドクターになってね」だけを繰り返す姿は、トラウマになりそうな怖さであった。

 

「仮面ライダーエグゼイド」は、「鎧武」同様、最初は乗れなかったが、後半になって、だんだん面白いと思うようになった。

ここ5年間の作品としては、「ドライブ」、「ゴースト」よりはよかったと思うけれど、個人的には、「ウィザード」を超えられずという感じである。

ただ、デザインを始め、ゲームや医療をテーマにしたという点で、新しいことに挑戦しようとした作品であったとは言える。