被害者は泥棒
裸の町
ダッシン2連発。続いてはセミドキュメントタッチで描かれた刑事モノ。深夜に麻酔を嗅がされ浴槽で水死させられた女性。彼女は派手な生活をしてたモデル。部屋からは彼女の宝石箱が消えている。真っ先に疑われたのは役者志望の彼女のヒモ。彼には虚言癖がある。他の女性と婚約までしてる。おまけに所持していた宝石は盗品。問い詰めると宝石は殺された女性から貰った物だった。被害者は泥棒。犯罪者同士の殺し合い。顔見知りでないとすると容疑者は星の数ほど。雲を掴むような話。だが当初別の事件として処理された同じ日の明け方に港で酔っぱらいが殺された事件が意外な繋がりを見せ、犯人へと繋がる突破口はいきなり開かれる。刑事たちが足並みを揃える暇もなく大都会の追跡は突然、その幕を開く。
この街中の追跡シーンはさり気なく様々なノワールで模倣される。一番記憶に新しい所では一昨年公開された『ルネッサンス』あたりだろうか。米国時代もダッシン作品は個々のシーンに真似たくなる魅力がある。前後の繋がりと関係なく突然ヒートアップして魅力を発する。最近見た『宿命』にしても、前後の繋がりからすればテーマの一つであったはずのブルジョワ側の平和と秩序を保つ為の熟慮が置き去りにされるが、芝居と映像の力技で説得されてしまいます。でも残念ながらこの頃はまだ後のヨーロッパ時代に比べると荒削り過ぎて違和感を残してしまう。前半のナラタージュにしても物語に関係ない所が結構あって、それを後の展開で消化し切れていません。ダッシン自身は亡くなる直前まで自分は米国の作家だと主張し続けたらしいが、皮肉にも彼の成熟した腕前が光っているのはやはり脂がのっていたヨーロッパ時代。