懲役とは…
ロックアウト
先日見た『エリジウム』では、上は天国、下は地獄だったが、これは逆。刑務所としてスペースコロニーを使っている。この甘々な設定はやはりベッソン脚本。突っ込み所だらけのB級。囚人をコールドスリープ状態にするならわざわざスペースコロニーに収監する意味ないし。そもそも眠っている間に刑期が終わるって懲役の意味を成してない。そこで暴動が発生して偶然いた大統領の娘が人質になり、それを助けに行くのがスパイと思しき犯罪者。人選ムチャクチャ。もっと有能で信用に足る工作員はいくらでもいるだろうに。コントロールを失ったスペースコロニーは数時間後には落下するってのにわざわざ撃ち落しにかかる。何もせずに待ってれば自動的に自滅するのに、それを撃ち落すって作戦の兵士は無能な判断による完全なる犬死。それらの矛盾はスルーして広い心で受け止めてあげましょう。これは平たく云えば『エスケープフロムLA』の宇宙版。
監督はマザー兄弟って新人らしいが、これがなかなかセンスが良い。最近のベッソン作品なんかよりもずっと。いわゆる『タクシー』シリーズとか『トランスポーター』シリーズとかスピード感を重視した作品を取らせる事が多かったベッソンだが、この作品はスピード感って面において成功しています。特に冒頭のバイクチェイス。そのまま駅に突っ込む描写のさり気なく派手なCG。うるさくなり過ぎない使い方。ふとベッソン初期の『サブウェイ』や『ニキータ』のスピード感を思い起こしました。尋問シーンと回想のカットバックのリズム感が、ベッソン的なスピード感をベッソン以上に体現できてるって感じ。後半はありきたりのSFアクションだが、冒頭から20分ほどは昔ベッソン作品でエキサイトした世代にはグッと来る作りになっています。