映画『アーヤと魔女』の感想 | アキラの映画感想日記

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映画を通した社会批判

人心操作

劇場版 アーヤと魔女

 

折衝術が必要とされるプロデューサーや営業職の人間なら誰もが自覚してる事だとは思うが他人を操るには人心掌握術で相手を自分に依存させる必要があります。それを悪用すると辻仁成の"海峡の光"みたいな人間になってしまう訳だが。もし共同体と分断され御上だけに依存する関係になれば誰もが理不尽な命令でも御上に従わざるを得ない。それが分断統治です。また家庭にしか居場所がない子供がDVを隠し毒親に従わざるを得なくなるのも単独の依存関係によるものです。つまり健全な関係とは誰もが複数の相互承認し合える相互依存先である相手や居場所を持っている状態です。その状態においてでしか人間は自由思考や是々非々の判断はできない。だから相手が自分しか見えなくすれば他人を洗脳し自分の思い通りに操る事ができるのです。この作品のヒロインは魔女たちの娘で他人を操る魔法スキルを持っている。それが孤児院から悪魔の家に貰われて理不尽な扱いを受けながらも褒め殺しで周りを洗脳し思い通りに操ってしまうという過程が描かれます。

 

かつて『ゲド戦記』で人生経験の貧困さを露呈したパヤオJrが今回はフル3DCGアニメに挑戦って事で気になったのでチェック。もっと壮大な話だと思っていたが児童養護施設と養子縁組先という極めて閉ざされた世界を舞台に人間関係の駆け引きを展開。云わばリンゴラムの『プリズンオンファイア』等のような閉ざされた環境のドラマです。ヒロインは極めて明るくポジティヴに振舞ってはいるが、それは彼女の対人スキルであり計算である事が明らかなので閉塞感にゲンナリさせられます。きっと我々より下の世代は更にこの感覚が強いのだろう。コミュニティに守られずハラスメント構造の高ヒエラルキーに上がらねば自由思考すら許されないという腐った環境で育まれた世界観。次世代に語り継ぎたくない劣等性を肯定するかのようで嫌な気分になりました。