映画『冬の華』の感想 | アキラの映画感想日記

アキラの映画感想日記

映画を通した社会批判

冬の華

 

 

さらば任侠映画

 

昔気質のヤクザが懲役を終え15年ぶりに娑婆に帰ってみると浦島太郎。任侠道は失われヤクザはビジネスマンと化していた。クロードチアリ×降旗康男の組み合わせでハードボイルドな雰囲気を醸し出す健さん映画が堅気化していく過程の始まりを思わせる内容。任侠映画の終焉は西部劇の終焉に似ている。サムペキンパー映画のように古き良き男たちのロマンと絆が失われてゆく悲哀をタップリの哀愁を持って描いているからだ。かつて戦後ヤクザの任侠道が崩壊した世界を描き続けた深作映画に例えるならば『解散式』のような理不尽さがある。やり方が汚くなった高度経済成長期のヤクザに昔気質のヤクザが立ち向かうという構図だ。ただこの主人公は任侠だけに生きようとはしない。むしろ組を守る為に親友を殺すという自分の犯した罪を後悔するあまり幼かった親友の娘を支援し続け、その中で彼女と恋仲の構成員を堅気に戻そうとしたり、自分自身も堅気に戻ろうとしたり。「これが潮時」それはまるで健さん自身が任侠映画から足を洗う潮時を口にしたようにすら聞こえた。