映画『海を駆ける』の感想 | アキラの映画感想日記

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映画を通した社会批判

海を駆ける

 

 

月が綺麗ですね

 

スマトラ沖地震を取材する日本人の一家とそこに居候する謎の精霊を描いたインドネシアのファンタジー映画。一見ドキュメントの社会派映画のように始まるのに、まさかのファンタジー展開って所が『アルジャーノンに花束を』を思わせる訳だが、それよりも私としては今平さんの未帰還兵シリーズや『ブブアンの海賊』といったドキュメント作品におけるインドシナ半島への取材から波及したネタで『女衒』等の史実コメディが生まれた経過を思わされました。つまりは3.11の予兆とも云える津波を取材するはずが対象者の話は大東亜戦争以前のオランダ統治から始まったりする。インドシナ半島と日本人の交わりは我々が想像するよりずっと古いのだ。

 

スマトラ沖地震が起きた時、韓国では真っ先に東アジアへの津波を予測して『TSUNAMI』という映画で警告を発していたが、お花畑で世界の事情に疎い日本人は状況を理解しないまま直撃を喰らってしまった。それだけ戦後日本人は世界に疎くなっている。だから平気で鬼畜米に媚びたゴミウヨのデマを信じてしまうのだ。そんな愚鈍な戦後日本人にとって戦前のアジアとの繋がりの深さは意外な発見なのだろう。それにしても、この作品でも『家に帰ると妻が必ず死んだふりをしています』と同じ夏目漱石ネタが使われています。この告白方法は遠回り過ぎて日本人でも理解できる人は僅かしかいません。それをインドネシア人からやられたら尚更です。そんな訳で物語はラブコメ路線へと流れて行く訳だが、そんな中でも記憶喪失の日本人の風貌をした精霊が起こす奇跡が結構質が高い合成で描かれているもんだから見ていて一瞬目を疑いました。ノンジャンルな感じでなかなか楽しい。