映画『非行少女』の感想 | アキラの映画感想日記

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映画を通した社会批判

非行少女

 

 

卑劣な強姦魔が虐げる

 

父の不倫と母の死が少女を自宅に居辛くし、その純真な思いを屈折させる。意地の悪い義理の母とはうまくやれないので帰り辛く外で働こうとすれば売春斡旋業を営む叔母やヒモになろうとする男達に商品として目をつけられ襲った上に強姦に失敗すれば腹いせに悪い噂を流す。偽善者共が投石する。戦争責任や反米を巡る闘争を保証金の奪い合いに変えて私腹を肥やした連中。奴らは女子児童をレイプする。巧みなその言葉で尊厳を貶め食い物にする。彼女と恋をする優しい青年。彼もまた卑劣な奴らにレイプされたと云える。彼の兄は非情な言葉でレイプする。無責任な集団の憶測による誹謗中傷。その恋は迫害される。その口から糞を垂れ流す豚どもによって迫害される。互いに対する純な想いを削らずにいる事がたったひとつの抵抗なのだろう。私自身も相手の家の事で誹謗中傷された事があったので痛い程共感した。

 

ふと手塚治虫の未完成マンガ"どついたる"が頭を過った。あのスケ番少女。主人公と結ばれるか否かは判らず終いだったけど、彼女が処女だったから他の変な男に奪われるんじゃないかとハラハラしながら読んだ憶えがある。この作品の2人も目が離せなかった。互いに対し優し過ぎてすれ違うなんて哀し過ぎるじゃねえか。危なっかしくて何度、守ってやれよと思った事か。私のように諦めて後で後悔して欲しくないと、自分より上の世代の演技を見ながら思ってしまうから不思議だ。出演者は今はもう皆老人だってのに。卑劣な世間の風にさらされながら尊厳を失わないふたりに胸を打たれました。和泉雅子さんが云うには、キャラメルのシーンは浦山桐朗監督が彼女にした最高の演出らしい。東北の寒さに森永のキャラメルは凍って角が出る事を利用して、それを食べさせる事によってあの微妙な表情を作らせたとの話。まあ演技自体には惹かれなかったけど、個人的にはこの作品は大好きです。