映画『遥か西夏へ』の感想 | アキラの映画感想日記

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映画を通した社会批判

遥か、西夏へ

 

 

6for10

 

千年近く昔のお話。まだ中国大陸が三つに割れて争っていたから、その中間にある農村は三重の搾取に苦しんでいた。絞れるだけ絞り尽したその村に西夏が新たに課した重税は男児十名の徴用だった。度重なる徴兵で男手を失い女と老人だけが残された村から西夏の兵は子供まで取り上げようって訳だ。何とも酷い話だ。ところが契丹の兵と出くわし慌てて村を出ると子供が九人しかいない。仕方がないので妊婦をさらい出産させ頭数を揃えるが、この妊婦がしつっこい。母の愛は強し。すごい執念で何処までも追って来る。やがて子連れで砂漠越えをするには母乳が必要だと気付いた兵は彼女を同行させる。共に苦難に立ち向かいいつしか信頼関係みたいなものが芽生えるが国の命令は冷酷だった。

 

子供が欲しけりゃ女さらって産ませればいいとも思うが王の命令はあくまでも兵士に育てる為の血が交わっていない男児のみで母親は必要なし。でもその子供を得るために多くの兵士が犠牲になる。まるで『プライベートライアン』を思わせる矛盾。数で考えれば骨折り損にも思える。この作品の場合は特に観念的な大儀すらなく結果だけが残酷に横たわるって感じだ。泣き叫ぶ母たちから子供たちを引き離してはるばる砂漠を越えて何を得られたのか。失った代償の方が大きかったのではないか。その問いの答えは恐らく王でさえ分らないだろう。熟練した世代を失い若い世代を得るなら問題ないと考えたのだろうか、想像以上にリスクが高過ぎたと悔いたのか。問いさえ受け付けない厳格な存在感がある。