PARIS
排他的な都市
2008年のフランス映画際で見逃したクラビッシュ作品がロードショーされていたので早速チェックすべく正月の文化村へ。なるほど一見散漫に見える群像劇だが、この街の名前がそのままタイトルになる理由はぼんやりと分った。何よりも文化を大切に守る都市。それ故に簡単には異質な者を受け入れない都市。雇用環境に保証がない出稼ぎ労働者。だが群がる者は多く、いつの間にやら移民との混血も生粋のパリジェンヌも見分けがつかないほど交じり合う。そんな街のあり方が、ここに登場する労働者たちのあり方と見事に重なっています。
僅かな余命を宣告された元ダンサーの青年を中心に彼らの周囲を忙しく動き回る様々な労働者たちのドラマを追った群像劇。カメルーンからやって来た兄は密入国できたのだろうか。これまでも『スパニッシュアパートメント』やその続編『ロシアンドールズ』で他国との国境意識が曖昧になった近年のヨーロッパを描き続けたクラビッシュだが、ここへ来て急に冷たい顔を見せた印象。別にサルコジ政権のせいじゃない。世界中が大恐慌なのだから仕方ない。雇用を分け合うなら同じ肌の人間と。同じ言語の人間と。同じ文化の人間と。いつもの分り易いノリで軽快に語られてはいるが今回ばかりは笑えない。人情もクソもない。弱者はさっさと餓死しろと沈黙が語る。笑えるポイントが仕掛けられているだけで心がない。目の前に迫った貧困よりも、そこで他人が脱落しても構わない人の心の貧しさに心が重くなります。