オペレーション・フォーチュン
金融核戦争
正直云うと『スナッチ』や『ロックストック』が話題になった頃にはガイリッチーも当時流行りのノワール系の中じゃ奇を衒っただけで一発屋に終わるのではないかと思っていました。ところが結構有名タイトルを依頼されたりして、その一方で彼の強味を活かした作品もコンスタントに発表し続けて今となっては古き良きハリウッドスタイルを継承する数少ない現役監督になっています。ってのは『明日に向かって撃て』がガイリッチーが映画人になった動機であるってのは有名な話で今作でも思いっきり劇中に登場し主人公たちがバートバカラックの名曲を口にする訳だが、このガイリッチーの手法って一見目新しいように見える部分も実はジョージロイヒルが多用してたが流行らなくて我々の世代の頃には使う作家が少なかっただけで、20世紀のハリウッド映画には結構普通にやってる手法です。ガイリッチーの場合は特に画面分割をやたらと多様する訳だが、これってブレイクエドワーズとか我々の世代感覚からするとダサいと感じる世代のオシャレ系ハリウッド映画では普通に使われています。それがガイリッチー特有のノリの良さを表現する上で効果的に機能しているのです。この作品も彼お得意のコミカルなマシンガントークをベースに語られる構造になっていて、もはや今となってはガイリッチーファンからすれば、それこそがお約束になっています。ここ最近、特に彼の作品はキレが良くなっていたので割と期待して拝見。
今回はスパイアクションで『ワイルドスピード』シリーズで有名なステイサムを主演に迎えて徹底的に暴れ回らせます。ミステリー要素の部分に関しては香港映画で擦りまくったような今更ありふれたネオリベ系時事ネタで面白味を感じなかったが、やはり映画スターを使った駆け引きの大胆さとか、ブラック過ぎるブラックジョークとかガイリッチー節がそれなりに炸裂していました。ただ同じスパイ系でもコーエン兄弟の『バーンアフターリーディング』同様にあえて今更にズレた感覚のロシア諜報系に手を出した『コードネーム U.N.C.L.E.』に比べるとキレは鈍っていました。この手の時代とズレた美学の滑稽さってのはガイリッチー映画のズレた面白さを際立たせる。それに比べると今作は流行りのアクションスターを使ってクレイグ版『007』とか『ボーン』シリーズのようなマッチョで今風のスパイに寄せた事で時代錯誤の面白さが薄れてしまっています。もっと我が道を行きましょう。