映画『美しい絵の崩壊』の感想 | アキラの映画感想日記

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映画を通した社会批判

美しい絵の崩壊

 

 

胸騒ぎ

 

幼馴染のシングルマザー2人が海辺のリゾート地で共同生活するうちに互いの息子と関係を持ってしまうという何ともドロドロとした性愛のドラマ。とりあえず2人には血の繋がりはないので近親相姦ではない。ただ若い息子たちにとっては2周り分の年の差があるので母たちは自重しようと努める。もし青年たちに同世代の恋人ができたら潔く身を引こうと。これはオバチャンだけでなく我々オッサンも見習うべき態度です。1周りの年の差でも自分の方が先に逝ってしまう可能性が高いのだから相手になるべく負担がかからないよう後を任せられる人が現れたら委ねようとする態度。本当に相手に対する愛情があるのなら、そうやって相手の幸せを守ろうとする。その姿勢がない身勝手で無責任なバブル世代のような卑しい自由主義者は拒絶しましょう。ルクセンブルグの女流監督フォンティーヌがフェミニズム色を露骨に出していた頃に撮ったドロドロ性愛劇。両方の息子が互いの母親に手を出してしまう訳だが片方は本気で、もう片方は遊び感覚。本気で恋愛していた方は子供の幸せの為にと涙を呑んで関係を絶つ訳だが、そうでない方がむしろなあなあなままで関係を続けてしまう。そんな訳で真面目な方がバカを見てしまうという皮肉な展開。

 

久しぶりに『ドライクリーニング』の頃には強かったフォンティーヌ作品ならではの斜に構えた姿勢を感じさせます。それと同時に子供が親友を抱いていると予感した時の胸騒ぎの表現が女流監督ならではのセンシティヴな表現ができていて秀逸でした。サスペンスやホラーの仕事が多いゴードンのスコアのおかげかもしれないけど車を走らせるヒロインの焦燥感が絶妙に表現されていました。ジャンル的に分類すると退廃的な家庭崩壊プロセスを描いたデカタンス系って所だろう。ヒロインたちは息子たちに体を許した事で息子たちの人生を大きく狂わせてしまう訳だが、その割に破滅的な凋落が起こるでもなく何気なく関係が続いてしまうものだから見方によっては濡れ場だらけのポルノにも思えるだろう。エメラルド色に澄んだ地中海のリゾート地をバックにすると、それほど悲惨な話にも思えなくなってしまう。そもそもシングルマザーってだけで日本だと生活すらも相当に悲惨だから。