ブラックダイガー
お髭がひくひく
スタントマンがマフィア相手に闘う作品の2作目といえば『リベンジャーズ』というベトナム映画が記憶に新しい所だが、これはそのマレーシア版って感じ。ちなみに前作は日本では『カンフーマフィア』というタイトルで商品化されているようです。とはいえ、こっちの方がナンセンス度は高くてコミカルでありながらギミックとしても面白い。それこそ同じ映像関係者でも今作は報道クルーを利用してマフィアを騙すメディア戦の見事さに思わず引き込まれました。この作品の悪役たるマフィアは父と息子でドンの座を巡って権力闘争をしていて伝説の殺し屋に間違えられた主人公がそこに巻き込まれながら本物の殺し屋を探すってな内容。同じ東南アジアではあってもベトナムと違ってマレーシアはムスリム圏だけに笑いのセンス的には中央アジアやトルコの映画に近い。マフィア親子はどちらもピーターパンのフック船長みたいな立派な髭を蓄えていて、スピルバーグの『フック』みたいに、やたらとそこをクローズアップする演出が成されています。この親子にしても子分のキングコング兄弟(おかまキャラ)にしても真面目な潜入捜査官にしても主要登場人物のキャラが立っていてなかなか面白い。
アクションとしては垢抜けない感じがあるがスピード感とナンセンス感でカバーしてる感じ。いきなり何の脈絡もなく主人公がハルクに変身しそうになったり次回作ではトランスフォーマーと対決させようとしたりオチが強引過ぎたりで、やり過ぎ感は否めないが少なくとも途中まではギミックの面白さで引き込んでくれます。この主人公はあくまでも元ギャングのチンピラスタントマンであり本物の殺し屋ではないので殺したふりをしてハッタリだけでマフィアを騙してゆく過程が何とも楽しい。それがクライマックスではバカみたいに本物の殺し屋と警察の殺し合いが展開してしまうので割と序盤の面白さを台無しにされた感があります。あまりに御都合主義的な殺し屋の正体と動機にゲンナリ。それこそ面白い映画が最後でいきなりコントレベルになってしまう感じ。ちょっとぶっ壊し過ぎです。
