映画『魔界大戦』の感想 | アキラの映画感想日記

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映画を通した社会批判

ネクロマンサー 魔界大戦

 

 

呪殺マフィア

『元カノ』シリーズで知られるチューペッチが今回はサイキックバトルアクションに挑戦って所だが、やはり所々でネットリとした恐怖案出があって爽快とまでは行かない復讐劇が展開します。この主人公の父親は強大な魔力を持つお守りを巡ってマフィアに殺されたので息子が黒魔術を身に付けて犯人への報復の為に表向きはカルト宗教をやってる黒魔術マフィアに潜入。基本的には肉体戦で敵をボコす訳だが、ある程度の強敵となると召喚術とか使って来るから互いに怪獣を呼び出してのモンスターバトルを見せてくれたりもします。その意味で懐かしい80年代ハリウッドに腐る程あったB級SFファンタジー系を連想させられます。ただ呪術式がクメール文字とかいう台詞がある通りタイ人にとってすぐお隣のカンボジアの森の中には社会の外側を生きる本物の呪術がある訳で自然に対する畏怖の念が西洋とは根本的に違います。それこそパン兄弟映画でもウィラセタクン映画でもエキゾチックな魅力を発している森林信仰って奴は森に対する神秘主義であり、そこには人知を超えた法則性があります。

 

そもそも社会って奴は広い世界の中で人間ごときの浅知恵でも法則性が分る僅かな部分で構成されているので、その外側を意識しない傲慢さって奴を持つ日本のような反知性国は世界中から軽蔑されます。この映画の悪役はかなりのサイコパスで悪徳の限りを尽くしてる訳だが、その悪徳の分だけ力を増して社会的にも成り上がります。ただ、そこにある法則性は弱肉強食とも違う。もっと複雑で読み切れない。いくらでも不条理な逆転劇が起こり得る。ここに描かれる呪術は生の世界と同じで法則性の中で制御されるような類ではない。ペットのようでいて野生の獣なのだ。この主人公に対し悪役は父親を殺し恋人を寝取り友人を片っ端から惨殺しながら成功を勝ち取る。たまらなく理不尽です。それこそ復讐者と化した主人公が悪役とベタベタする元カノを物陰から険しい表情で見ているシーンなんて主人公の方がストーカーに見えてしまいます。やはりチューペッチはホラー演出の方が上手い。それこそ地下鉄でのバトルとかカッコ良く登場するはずの所で相手の顔をポールで隠す演出をする事で不気味さばかりが強調されたりしてイマイチ弾けません。もっとデニスガンゼルとかダンテラムの吸血鬼映画みたいなカッコ良さが欲しい所です。