映画『狼牙』の感想 | アキラの映画感想日記

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映画を通した社会批判

狼牙-ライジングフィスト-

 

 

首狩りヒーロー

『戦狼』シリーズで知られるウージンの監督デビュー作を拝見。俳優業の方が本職のようだが、どちらにせよアクション路線の仕事ばかりしているようです。この作品もマフィアのボスを殺して首を持ち去った男がフェリーの欠航により地方の集落で足止めを食って、そこで仲良くなった婦警さんと共に追手のマフィアと戦うってな典型的ノワールアクション路線。主人公が人殺しだと気付かない婦警さんをはじめとする駐在所の面々は家族のように暖かく迎えてくれる訳だが悪役と闘うと割と強い。いや逆に悪役が弱過ぎるだけか。ジョニートー映画でお馴染みのラムシューが禍々しい人数の手下を連れて追って来る訳だが、こいつらが人数を頼るばかりで、やたらとザコい。むしろ冒頭で主人公とヒロインに捕まる大男3人組の軽犯罪者がやたらと強かったので他が弱く見えるのかも。ソシャゲ運営なら速攻でゲームバランスがおかしいと苦情が来るレベル。

 

ラスボスは日本人の姉御で冒頭に殺されたマフィアの妻なのだが、こいつも縛られたヒロインや多勢に無勢で虫の息になった主人公に対し日本刀を振り回すだけで全く貫禄なし。ザコがわらわらと集まって正に人数差だけで体力削りまくって来るので、いくらやられてもピンチ感がありません。ただこの主人公が結構ミステリアスなキャラなので見ていて飽きません。パッと見は笑顔を絶やさない優男って感じの旅人だが武道の達人であると同時にとんでもない大食漢で一食で5人前を平らげてしまう。こいつが何故マフィアのボスの首をわざわざ持ち歩いていたのかは最後まで曖昧。遊牧民の出身で家族はいないと家族みたいな警察署での団欒で口にしていたが、それが本当かどうかも怪しい。ただジョニートー作品の男たちのように不敵な笑みを浮かべるだけ。もしかすると金で雇われただけの殺し屋かもしれないし逆に義憤にかられただけの庶民かもしれない。そんな素性自体には価値がないというノワール特有の価値観があります。ツイハークからダンテラムまで香港ノワール特有の獣感もあって古くからの撮り方をちゃんとリスペクトして踏まえた見せ方にしても香港B級アクションに期待する所がちゃんと詰まってる感じです。それにしても冒頭と最後のニアミスはロマンチックではあるが主人公の素性に関して尚更混乱させられました。