2006-01-24の投稿
吹けば飛ぶよな男だが
風呂に沈める
元気な街。ちゃんと定職に就けないロクデナシでも飯を食わなけりゃならない。九州から上京して来たばかりの右も左も分らない田舎娘をカモるエロ事師たち。カメラは昔懐かしきスーパー8。『輪廻』でもオープンリールマガジンタイプのカメラが出て来たけど、あのタイプのカメラでも外付けのマガジンがなくては3分程度の量しかフィルムは入らない。あんなに長いフィルムなど入らないはず。とにかく今じゃフジカがカセット式タイプの現像を一応続けているが廃止寸前。オープンリールの方はコダックしかないから海外に出さなければ現像できない。あの味わい深い発色をする8ミリって機材が廃れつつある現状にはため息が出る。
ポルノを撮るなんて聞かされないまま撮影現場へ。逃げ出した女を匿う主人公。ふたりは愛し合うが男は所詮ロクデナシ。彼女の善意を利用して風呂に沈める。〔”風呂に沈める”とはトルコ(性風俗店)に売り飛ばす事〕屈託のない笑顔を決して失わない彼女を守ってやる事さえできない弱虫。なるほど弱虫と書いてチンピラと読む訳だ。良かれと思ってした事さえ彼女を追い詰める要因になる。人の弱さは哀しい。それを弁士が盛り上げる。欲張りな事にサイレントじゃあないのに弁士が付いている。講談風に語られている物語。その語り口がやけに山田洋次ならではの温かい人情喜劇のトーンとマッチしていて気に入りました。