映画『チュパカブラ』の感想 | アキラの映画感想日記

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映画を通した社会批判

吸血怪獣 チュパカブラ

 

 

影が薄い怪物

ブラジル産のキグルミ系パニックホラー…というよりヴァイオレンス要素の方が強い。ってのは一応、虎も食い殺す怪物チュパカブラが田舎の小さな集落を襲う訳だが、それ以前にこの村では因縁の2つの家族が争っていて、その凄惨な殺し合いが激化し半分以上が殺されてから怪物が参戦して来る。ちょっとチュパカブラ影薄過ぎ。ジョージAロメロに例えるならば『サバイバルオブザデッド』の設定。殺し合いに呼ばれて来るって意味では『プレデター』にも近いかもしれない。それこそ舞台は中南米のジャングルだし。いや、この怪物が反応したのは主人公の帰郷と考えた方が自然だろう。この作品のクライマックスでは人間がウィルスみたいなものに感染してチュパカブラと化す事が分かる。だとすると彼を襲ったチュパカブラは、かつて彼が捨てた恋人である可能性が高い。この主人公は都会で医学の勉強をしていたが素行の悪さで大学を退学になり都会で出会った妊娠中の妻と共に帰郷する。すると待っていたかのように停戦協定を破り腐った豚を売り付けた騒動で因縁の一家と殺し合いが勃発。撃ったり刺したり切ったりと血みどろのヴァイオレンスが典型的なグランハウスのノリで展開します。

 

どうもアラガォンって監督は他にも似たようなタイプのC級スプラッターホラーを撮ってるらしいが、どうも商業的な厭らしさが鼻に付きます。それこそ初期のピータージャクソンが撮っていた『バッドテイスト』や『ブレインデッド』のように予定調和を飽きさせないテンポの付け方で(お国柄なのか)やたらとサンバのリズムを入れて来て、グロ要素やエロ要素を恥ずかしくなるほどに直球で入れて来ます。それこそ田舎の森の中でキグルミと特殊メイクだけで退屈させない映画を撮ろうとすると必然的にこうなるのだろう。ただテイストとしてはデルトロやロドリゲスみたいなスペイン語圏の監督と違ってインドネシアの『よみがえったスザンナ』等のウンバラ作品を連想させられるような湿気を帯びています。スタイルとしては割とオールドファッションで80年代ホラーブームを思わせる垢抜けなさがあるが、なかなかグロくてスプラッターとしての見せ場が結構あります。それこそテンポの良さには初期のイーライロスを連想させられます。タランティーノに評価されハリウッドデビューみたいなアメリカンドリームを狙ってるのかも。ってえか今や米国に行っても有色人種を待っているのは夢ではなくレイシズムとヘイトクライムの現実だろう。