『ぼくを葬る』の感想from映画生活 | アキラの映画感想日記

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映画を通した社会批判

2006-04-23の投稿

ぼくを葬る

 

 

死ぬなら独りだ

 

カミングアウトって聞くとバイセクシャルとかゲイを連想しちゃう。確かに主人公はゲイだ。でも彼がカミングアウトできないでいるのは性癖の事なんかではなくて自分の余命があと少ししかないという事。その相手が自分にとって重要であればあるほど本当の事は云えない。心配はかけたくないしそれ以上に自分を心配する相手を見るのは辛い。まだ関係が浅い相手になら正直になれても、親しい相手には云えない。云ったからどうなる訳でもない。どうせ人間が死ぬ時は独りだから。彼に残される選択はこの世に新しい生命を残すか否か。頑なだった過去の自分と折り合いをつけなければ。最期の時間が解きほぐす。

 

オゾン作品と決別しなくて良かった。この種の孤独感にはやられる。生命に満ち溢れた周囲との対比。全てに取り残されていく様な感覚。回想の入れ方のせいかアンゲロプロスの『永遠と一日』を思い出す。旅立ちを控えた孤独。突発的な出会い。他人との関りにしがみ付く。"とても遠く"に行かなければならない自分は何処にいても"よそ者"。光り輝く生命の世界を隠れて影から見守る公園のシーンにやられた。もっと遡ればヴィスコンティの『ベニスに死す』なのかもしれない。光への渇望を残しながら滅び行く肉体。形在るものには限りがある。