『エンジェル』の感想from映画生活 | アキラの映画感想日記

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映画を通した社会批判

2007-12-19の投稿

エンジェル

 

 

デプレシャンを辿るオゾン

 

時代背景は19世紀だけど、むしろこのヒロインのような人って現代の方が多いような気がします。娯楽に選択肢が多い現代の方が居心地の良い虚構に生きるには都合が良い。好きな事以外からは目を背け続ける事でピュアさを保つタイプ。純粋培養な妄想で創作していれば表現衝動が枯れる事はないし、実力さえあれば、その妄想を望む人たちから熱狂的な支持も受けるでしょう。ただしその世界は脆い。徹底して現実に対し鈍感であり続けなければ崩れてしまいます。最初から全く興味がない現実の残酷さは突っぱねられても、夢見ていたはずの世界の現実に気持ちが入った瞬間に突っぱねていた現実が一気に虚構というアイデンティティを食い潰す。

 

19世紀の英国を舞台に仏人が撮った女性の虚構と成功って意味で『エスターカーン』を連想させられました。個人的にはデプレシャンの方が実力は上だと見込んでいますが、日本ではオゾンの方がメジャー。それでも私にはオゾンがデプレシャンを意識しているように思えます。どちらの作品も英国に行く前に比べ心地良く凝縮された印象を受けたからかもしれません。でも今作の人物造形はイマイチ。ヒロインは自らの欲望に対し一面的で頑過ぎる印象を受けました。例えば『海をみる』や『まぼろし』の主人公はちゃんと世間体を保ちつつも驚くほど利己的な一面がちょっとした行動に表れていましたが、今作のヒロインの欲望はそんな驚きを与えてはくれませんでした。逆に云えばB級映画っぽい予定調和のおかげで楽しめる作品。同じ大胆な変化でもオゾンに比べるとデプレシャンの方が華麗な脱皮。