『マジックアワー』の感想from映画生活 | アキラの映画感想日記

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映画を通した社会批判

2008-07-10の投稿

ザ・マジックアワー

 

 

和田誠っぽい

 

欧米的な設定を強引にそのまま日本国内に持ち込んでいるって意味では『12人の優しい日本人』を連想させられるけど、最近の三谷脚本って同じコメディでもナンセンスからスチュエーションへ移行した感じで昔に比べると大してバカバカしくない。ビリーワイルダーの名作に例えるなら昔の作品が『お熱いのがお好き』なら最近の作品は『アパートの鍵貸します』って感じ。ハチャメチャな笑いよりも映画として周到に作り込まれた笑いに向かっているけれど、それが結果的には過去の作品ほど笑いをとれていない。かと云って落ち着けば誰でも風格が出て来るって訳じゃない。むしろ落ち着くにゃまだ早い。もっと無茶やって欲しい。苦肉の策で殺し屋を落ち目の映画俳優に演じさせるって状況の面白さに留まらないで『ラヂオの時間』みたいに更なるハプニングと苦肉の策でとんでもない方向に進んで欲しかった。「飛行機とは云ってない宇宙があるじゃないか」みたいに。

 

セットバレバレの舞台と唯一自然光を使った撮影所のタイトルバック。設定上では現実とされる世界の方が虚構生産現場たる撮影所よりもフィクショナブル。ナンセンスなコント向きな舞台。でもセンス(意味)が通ってしまっている。ボスとマリのラブストーリーにしてもビンゴが痴話ゲンカ上の単なる当てつけである事をしっかりと臭わせるように作り込まれているし高瀬まこと老人が語る件なんてちゃんと普遍的なテーマにたどり着いてるし、これなら別になんちゃってな設定や舞台でやらなくても成立しそう。でも、わざと作り物っぽい背景で作り続けているのは最初からリアリズム映画なんて眼中にないからなのだろう。ちょっと前に三谷さんと広告の仕事をしていた和田誠監督と同様に彼らが憧れる映画界とは大規模で豪華なセットで作り込まれたレナードバースタインやバーナードショウ等のミュージカル音楽が似合う古き良きハリウッドなのだろう。