『カナリア』の感想from映画生活 | アキラの映画感想日記

アキラの映画感想日記

映画を通した社会批判

2005-03-22の投稿

カナリア

 

 

鬱屈した時代の犠牲

 

アレフ(旧オウム)を扱った作品としては、森監督の『A2』と

同じで、解脱を志す彼らの信念を肯定的に捉え尊重する

スタンスを感じさせる作品になっているが、それ以前に

歪んだ性癖と鬱屈した時代の犠牲という塩田監督らしい

テーマを感じた。3年ほど前、佐藤忠男氏と呑んだ時に

「君は随分鬱屈しているね。作家としては純粋過ぎる」

と言われた憶えがある。塩田作品に私がシンパシーを

感じるのは、純粋過ぎたが故に私自身の感性も

現代的に鬱屈しているからなのかもしれない。

 

親に存在を否定され家庭の中に居場所を失う12歳の少女。

ロリコンの大人が、援交という形で彼女を蝕もうとする。

レズビアンであるが故に息子を他人に預け、旅をする母。

霧の中で少年は彼女に姿を眩ました母を重ねて見ている。

引き離された母を、ただひたすら信じて耐え続ける少年。

この歪んだ時代ならではの性癖や信念に隔てられた家族。

真っ先にその犠牲になるのは一番弱い立場にいる子供達。

「子供のやる事に理由があるって、不幸な感じがする」

と語る塩田氏。その残酷さが突き刺さる傑作でした。