『武曲』の感想from映画生活 | アキラの映画感想日記

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映画を通した社会批判

2018-11-01の投稿

武曲 MUKOKU

 

 

ヒップホップ風ナンパ

 

「剣道と剣術は違う」と元殺陣師の知人はよく語っていた。なまじ剣道有段者のタレントの方が切先が揺れない構え方とかはできても腰の入れ方や擦り足の進め方などで素人より指導し辛いという。あくまでも剣道は竹刀を相手に当てる為の駆け引きであり、その為に合理化された作法であるのに対し剣術は相手を斬り殺す為の戦闘術なので刀に体重を乗せる体技が必要なのだ。いわゆる戦国モノCGとかで戦闘シーンのモーション修正とかをやっていても、その体技のリアリズムは重視される。この物語は剣術を鍛えられた少年が師である親を再起不能にしてしまったトラウマに苦しむってな話な訳だが、それが同じ剣の道でありながら剣道部の連中とは相容れない存在として剣道と云うより乱闘って状態に発展したりもする。このギスギスとした空気感が実に上手く表現されていて、さすが熊切って感じ。『フリージア』みたいなマンガ原作のSFですらも、ちゃんと映画のリアリズムに昇華できる実力派。娯楽度という面では最近あまり面白い作品はない訳だが。そうなると隙のない演出の上手さに嫉妬心ばかりが生まれ「いちいち上手いな、この野郎」ってな気持ちにもなる。いわゆる東大、京大、芸大みたいな一流校出身のエリートに、この手の圧倒的実力を見せつけられる度に我々のような学のないB級クリエイターは文化的価値が低いハリウッドレベルの派手で安易な映像作ってるのがお似合いだと卑下したくもなる。ヒップホップ風にナンパする件とか普通はギャグになりそうな所も、そのシリアスな空気に呑まれていた。