2014-10-24の投稿
太平洋ひとりぼっち
インサイダー視点
崑ちゃんが撮ったユージロー映画。冒頭から闇の中に車のヘッドライトが大写しになり市川作品ならではの強い印象を残す。やはり闇の使い方が上手い。カット割りにしても映像的な工夫に満ちていて、やはり今見てもこの巨匠の作風は挑発的。他のユージロー映画とは一線を画す。タイトルの通りエンジンの付いていないヨットを使って、たった一人で太平洋を横断した人物のルポタージュ。それだけに内容としては大して面白い題材ではない。前半の見せ方は回想とカットバックする事で主人公の家族ドラマを見せていたので退屈はしなかったが後半は正にタイトルの通り一人芝居が続く。ユージローファン以外にはキツイ。事の顛末は報道で伝えられている通りだから、この作品ではあえて公の部分は控えめに描いている訳だが私の世代にしてみれば大昔の出来事であって調べなければ分らない程度の時事。それだけにもっと公のリアクションも描いて欲しかった。まあ常に鋭いけれど普遍的ではない作風はいかにも市川作品らしい訳だが。