『上海ブルース』の感想from映画生活 | アキラの映画感想日記

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映画を通した社会批判

2006-10-05の投稿

上海ブルース

 

 

 

言葉はいらない

 

この設定は『哀愁』かな。それを何ともスプラスティックに展開させている。いかにも商業狂いなベタベタな撮り方を更なるバイタリティで崩す相変わらずなツイハークスタイル。路線としては『恋する天使』なのだろう。モテ男君の三角関係ラブコメ。舞台は戦時中の上海。丁度ツァイチューションやスンユイって第二世代の社会派が活躍してた頃のお話。日本軍の進撃は更に激しさを増していた。十年前に名前も聞けないまま再開の約束だけを残して別れた男女。彼らの恋路に割って入る居候の踏み台女。ヒロインとは違う魅力がある。ヒロインは夜の女って感じだが彼女は健全な主婦タイプ。それが買われてカレンダー女王に。はてさて男はどっちの女を選ぶだろうかって所。

 

これは実に気持ちの良い作品だった。橋の下に住み交代で地を売って暮らす戦友やスリをする悪友。切実な友人たちのエピソードをバイタリティたっぷりに描き笑わせてくれる。それでいてクライマックスに無駄を感じない。典型的なカットバックに台詞が乗らない。男が云う通りもう言葉はいらない。香港でも何処でも行こうじゃないか。聴衆が言葉を期待してるショットが入るのが何とも効果的だ。これもツイハークならでは。何処かしら反対の力を見せる事で力を増すって手法を本能でやってのける感じ。そんなさりげないエネルギーに満ちた彼の作品は大好き。結果的に生み出してるのは笑って泣ける普通の娯楽だけど。取り留めなくスプラスティックに展開させながらクライマックスにはガッチリ決めてくれた。